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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十一章 代理人、空を飛ぶ

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18. クラス会議

 結局1-Bの全員は秋人を除いて轟学園までタクシーで戻った。あの後おそらく逃走の足の確保で園周辺は大変なことになっていたところだったが、その手の混乱を避けて無事学校へ到着することができた。

 手配のよい薫が担任に知らせてくれたので、学校側が急遽対応し保護者へ連絡し、それぞれ無事帰路につくこともできた。


 ただ一人を除いて。


 クラスRINEではずっと会話が続いている。皆不安なのだ。

『結構なニュースになってるね』

『そりゃそうだろ。デステニーワールドにダンジョンだぞ。今世紀最大の惨事って海外でもトピック立ってら』

『でも、その割に死者が少なかったって』

『そんなの…当たりまえだろ。3S出てんだぞ』

『あ、馬鹿が動画上げやがった。ヤメロ、拡散すんな!』

 ニュースでは、こんな非常事態にも関わらずスマホで撮影していた人の貴重な映像が流れている。

『この人です!この人が助けてくれたんです!』

 スマホの持ち主が興奮して指さす映像には、本当に一瞬だけ人影が写っている。撮影可能なスピードを超えているのだろう。ほんの一瞬の陽炎のようだ。


秋人の映像が出れば出るほど彼が戻ってこれなくなるだろうことは、クラス全員がなんとなく察していた。


『こんな早く動けるんだな…如月。百メートルとか何秒で走るんだろ』

『如月くん、もう学校来ないのかな』

『智輝のとこには連絡きてないのか?』

『何回かRINE送ってんだけど…返事なくて』

『無事だよな?』

『当たりまえだろ』

『でも、討伐完了の記者会見に居なかったじゃん』

『居られるわけないじゃない、秘密なのよ』

『怪我してないといいんだけど』

『はあ?するわけないじゃん。アイツ、人外だぜ』

『てめ、織田。言っていいことと悪いことがあるだろ』

『だって明らか人間じゃねーじゃん。俺たちどうやってもこんなバカみたいな動きできねーよ』

『堪えてやってくれ。敵に塩を送られたと知って織田は気が治まらないのだよ』

『作原…てめえ』

『食事の時も意地悪言ってたもんなー、如月まったく気にしてなかったけど。お前の好きな子が如月のこと好きなのは、奴の所為じゃないぜ?』

『どーせ、俺はちいせえ人間ですよ、ミジンコですよ、ゴミですよ』

『阿保は置いといてだ。一つ提案がある』


 作原委員長はそれから長い長い一文を投稿した。

『賛成の人はイエス、反対の人はノーを押してほしい。1票でもノーが入るならこの案はなしだ。投票は匿名になってる。正直に答えてほしい』

 そう、委員長は書き込んだ。



 秋人はギルド付属の病院の個室のベッドに横たわっていた。大した怪我はなく、切り傷や擦り傷程度だったが、かなり大げさに包帯やら絆創膏やらで手当てされている。さらには、大きな怪我はしていなかったが、瘴気中毒の軽度の症状が診られるとかいう名目で個室入院中だ。身バレ防止のためのカモフラージュである。


「あんたが瘴気中毒とかウケる」

 と傍らの春日猛が病名を見て腹を抱えて笑っている。秋人は現在彼の監視下だ。

「クラスのみんなが無事かどうかだけ確かめさせてよ」

 と抜け出そうとしたところを確保されたのだ。そりゃあもちろん本気で抵抗すれば猛の腕などすり抜けるのは訳ないのだが

「俺、神崎センセに『秋人のこと、お願いします』って頼まれちゃったんだよなー」

 とニヤニヤ笑いながら言われては逃げられなかった。


「スマホ返して」

「だめ」

 秋人がうとうとしている間に猛に秋人のスマホを確保されてしまったので、クラスの皆に連絡も付けられない。

「薫はそんな酷いことしないよ」

「知ってるー」

「春日さん、すごく意地悪だ」

 秋人は薫の元にきて以来、初めて人に意地悪されていて困惑している。前はこの程度の意地悪なんてどうってことなかったのに、酷く居心地が悪く不愉快だった。なんだかちょっと泣きそうだ。


 そんな情緒不安定な秋人を見て、春日猛が秋人のスマホをくるくる回しながら歌うように語りだした。

探索者(シーカー)って結構一般人には嫌われる事多いんだぜ?怖いとか気持ち悪いとか酷いときには化け物とか人間じゃないとかさ酷い言われよう。守ってほしいって言うくせに、いざ生活圏にいると結構差別する人が多いのが現実だ」

 軽薄そうな顔に、一瞬影が浮かぶ。秋人は息を飲んだ。

「まあ、向こうだって腕の一振り、言葉の一声で自分を殺せる相手と丸腰で対面してるわけだから、そりゃあまあそういう気持ちにもなるだろうけどな」

「・・・・・」

 秋人はしゅんと項垂れた。もしかしたらクラスRINEにはそういう言葉が溢れていて、猛は自分にそれを見せないようにしようとしているのかもしれない。そう思うと急にスマホを見たいという気持ちがなくなった。


「秋人君は、友達にすっごく愛されてるねえ」

 ぽんと秋人の頭の上にスマホが載せられる。


 滑り落ちたスマホを秋人は慌ててキャッチした。

「はい、任務完了。後は好きにしてていいぜ」

 猛はそう言って病室を後にした。後にはスマホを握りしめ硬直している秋人だけが残った。



 数分の葛藤の後、恐る恐る秋人はスマホをタップした。クラスRINEがものすごい数の通知を送っている。智輝との個人の方にも沢山着信があった。

 怖いので智輝との個人の方を先に見ようと思ったのに、緊張のあまりついうっかりクラスRINEの方を押してしまった。

 タイムラインを確認して

「よかった。みんな無事だったんだ」

 ほっと息をつく。怪我無く学校まで帰れたらしい。


 秋人にとって学校での日常はもはや遠く、手の届かないものになってしまったが、それは自分で決めたことだ。あの楽しい場所が無傷で守られたのならばよかった。心の底から秋人はそう思える自分が誇らしかった。



「ん?」

 スマホをスクロールさせていた秋人の手が止まる。委員長の提案は言語道断なものだった。

「ちょ!ダメだよ!そんなこと!!」

 慌てて秋人がそれを書き込もうとしたが、この会話はもう3時間も前の事だった。

「嘘でしょ。みんな。そんなことしなくていいんだよ」


 賛成 36  反対 0


『それでは、賛成多数ということで神崎さんにお願いして俺たち全員に魔法契約をしてもらおう。俺たちは絶対に如月の事を誰にも親にも恋人にもしゃべらない!これで、あいつは学校に帰ってこれるはずだ』

『おし、智輝。神崎さんと連絡とれるか?』

『掃討戦出てたからお忙しいんじゃない?』

『あの弁護士さん記者会見で居眠りしてたぞ。もう終わってんだろ』

『連絡つきそう!契約のこと聞いてみる』

 この会話が2時間前。



 そして…病室のドアが開いた。

猛「あ、神崎センセ、お疲れさん」

薫「ああ、春日さん。すいません、ちょっと少し病院から抜けますので、秋人のこと抜け出さないように見張っててください」

猛「え?無理。俺じゃ無理」

薫「Sランクでしょ」

猛「無理なもんは無理ー」

薫「では、私に頼まれたって言ってください。そうすれば秋人は逃げません」

猛「ラジャー」

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