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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十一章 代理人、空を飛ぶ

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16. 飛翔

 薫が智輝からの電話を受け取った時、折よく(?)後藤と会談中だった。ちょうど秋人がいない時間を見計らって例の組織についての対応を検討していたのだ。あまり、いい話が聞けない状況だったので、少し休憩しようとなったその時だった。


「おや、珍しい子からの着信だ、失礼」

 嫌な予感がして薫が携帯をタップすると、あちらから切羽詰まった悲鳴のような声が飛び出した。


 話の内容を聞きながら、薫はその場にあったメモに

『デステニーワールドにダンジョン発生。AかS。秋人がいます』

 と紙に記入する。

 後藤の顔色が変わった。デステニーワールドのような人の多いところでダンジョンが出現するなど大惨事を免れない。

『ヘリを用意』

 と薫が付け足すと、後藤は大きく頷いて内線に飛びついた。


 薫があちらとやり取りしている間に屋上のヘリの準備が整う。

「他に駆け付けられそうな探索者(シーカー)はいますか?」

 移動しながら後藤に薫が尋ねる。

「今向かわせてますが、千葉県在住のAを3人、Bを15人投入します。」

「分かりました、当夜!」

 護衛でついてきていた当夜と二人ヘリに乗り込んだ。



「デステニーワールドでダンジョン!?」

 機上で事情を聴いた当夜が頭を抱える。

「なんつー間の悪い子だ」

 当夜の言葉に薫は暗い顔をした。

「自然発生ならね…」

 薫の言葉に当夜は嫌そうな顔をした。

「例の連中っすか?」

「分からん。流石に何もないところにダンジョンを作るのは…無理…だと思いたい」

 実績があるので、薫的には完全否定は難しいところだ。


「当夜はダンジョン外の掃討戦は参加したことあるか?」

「いや、ないっす。今回は人が多いところだから悲惨だろうなぁ」

 当夜がため息をつく。そもそもスタンピードで人的被害がゼロなどということはあり得ない。

「秋人が無茶をしていなければいいんだが」

 薫が顔を曇らせる。

「俺が秋人の魔力を読めれば早いんだけどなぁ」

 秋人からもらった片眼鏡(モノクル)は目で見える範囲でしか効かないので、瞬間移動には使えないのだ。


「あ、そういえばヘリはどの辺に降りるんっすか」

 と当夜が質問すると、薫はふいと顔をそむけた。

「俺はとりあえず上から撃つ」

「はい、そうっすね。それが効率的かも」

 フムフムと当夜は頷く。

「地面が見えたらお前は地面に降ろす」

「え?」

「俺、瞬間移動の魔法使えるようになったんだ」

「ええ?」

「生き物は初めてだが大丈夫だ」

「ええええええ」

 当夜の悲鳴がヘリに響き渡った。



 秋人は苦戦していた。

「人が多すぎる」

 いくら割り切っているとはいえ、目の前の人の悲鳴を見殺しにできるほど秋人は冷徹ではない。

「くっ」

 魔法剣の出力レベルを落として速さでモンスターを一撃一頭でしとめていく。いつもならまとめて討伐するところ、人を避けて斬っているので手間がかかるのだ。


 今日は天気が良いので、おそらく薫たちはヘリでやってくるだろう。30分も我慢すれば何とかなるはずだ。とはいえ、流石に目の前で人が死ぬのを止められないのは何かをひどく削られる。自分への怒りや焦り、そんなものがないまぜになって爆発しそうだった。



「くそう、こんなのやってられるか」

 背後でそんな声が聞こえたのはそんな時だった。

「待ってくれ!もう少しだけ」

「リーダー、いくら俺たちが探索者(シーカー)でも武器も持ってない状態でこれ以上は無理だ。俺は手を引かせてもらう」

 どうやらデステニーワールドに遊びにきていた探索者(シーカー)のパーティーだったらしいが、内部分裂だ。

「もう少ししたらギルドから援軍がくる。この地域は俺の故郷なんだ!家族だっている!頼む!もうちょっとだけ」

 彼の言葉もむなしくメンバーの何人かが逃げ散ってしまった。彼は唇を噛みしめて立ち上がる。体はボロボロで獲物はそこらの乗り物から拝借してきた鉄パイプだ。それでも

「俺は逃げねえ。ここは俺の故郷だ!死んでも絶対に守る」

 そう言い切った。傍らにいる女性は魔法使いなんだろう。

「リーダー、無茶だよ。あんたが死んだら何になるのさ」

 と言いながらもそばを離れようとしなかった。

 高速で移動しながら一部始終をみていた秋人は素早く彼らの傍らに着地した。


「ひゃっ」

 女性が驚いて飛びのく。

「君、さっきから凄い勢いで戦ってた人だね」

 秋人は一瞬で簡易結界を張った。

「すご」

 魔法使いの女性はその技量に思わず感嘆する。

「ジョブは?」

 秋人が短く尋ねると男は

「剣士、刀の方」

 と答える。秋人が収納から武器を取り出す。

「これ、使える?」

 男に渡されたのはアダマント製の刀だった。

「師匠にもらったばっかりなんだ。ほんとは貸したくないんだけど、すごく大事なものだから、後で絶対返してね」

 秋人が手渡すと男は仰天した。こんな業物は触ったこともない。

「あなたはこっち。僕の保護者の杖の試作品だけど、ものはいいはずだから。あと、これ魔力回復薬。そっちの人はエリクサー」

 はいはいと手渡す秋人に二人はポカンと口を開いた。

「えっと、君は?」

「ナイショ。刀と杖は神崎薫宛てに返して!」

 少年は綺麗な笑顔を浮かべて、結界の外へ飛び出していく。その華奢な姿を二人はぼんやりと見つめた。


 その名前は例のサバみその弁護士ではなかろうかとか、あれ?あの弁護士って誰のパーティーメンバーだったっけ?という疑問が浮かぶ前に、閃光のような彼の印象が切り裂いてしまった。

 あまりも鮮やか、あまりにも衝撃的。


 簡易結界が吹き飛ぶと同時に、二人は周囲の掃討に全神経を注いだ。

探索者女「ね、ねえ。今のってさ」

探索者女「いや、言うな。言わない方がいい」

探索者女「で、でもさ、なんか若すぎない?」

探索者男「いや、だから言うなって。これはヤバい話だ。ギルドが噛んでるならなお悪い」

探索者女「私たち消されたりするかしら…」

探索者男「見なかったことにしよう」

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