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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十一章 代理人、空を飛ぶ

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2. カウントダウンパーティー 控室

 会場には当夜の運転で薫、秋人、桜子の4人で向かった。アークエンジェルのメンバーもそれぞれのパートナーを連れてくるので、会場での合流となる。

「そういえば、康子から嬉しいお知らせがあるんだ」

 桜子がほくほく顔でそう告げる。

「嬉しいお知らせ?」

 薫が尋ねるとフフフと桜子は笑って指を唇の前で立てた。

「ナイショ。本人から聞いてね」

 ウィンクもついてきた。どうやらだいぶ嬉しいお知らせらしい。桜子がこんなに浮かれているのを見るのは三人は初めてだった。よほど楽しい知らせなんだなと三人は理解した。薫は「結婚かなー」などとよくある一般的な内容を思い浮かべていたが、残りの二人は違うことを想定していた。


「それじゃ、俺と秋人はバイトの方へ行くっす。バイト終わるまで会場出られませんから、すぐ抜け出さなくていいですからね」

 と当夜が言う。秋人は桜子に借りた眼鏡を着用して、例の足環を改造した装置を腕に嵌めていた。これで、秋人の魔力を感知されることはない。


「あ、そうなるか…」

 当初はパーティーに顔出しして一曲踊ったらあとは秋人たちが待っている部屋に向かうために抜け出す予定だったが、ここで大きく予定が狂った。しかし、薫も桜子もそれが何を意味するか失念していたのだった。



 会場には、薫が桜子をエスコートして入る予定なので、まずは控室に向かう。向かった先はアークエンジェルの全員とそのパートナー、それとSランクの春日猛、金藤恵子が揃っていた。

「婚約おめでとう!桜子!」

 恵子が桜子を抱きしめた。

「ありがとう、恵子さん。この前はお世話になりました」

「ううん。何もしてないわ。秋人くんと神崎先生に助けてもらっただけよ」

 恵子は涙ぐんだ。金藤家は元々は霧崎家が所属していた蔵持の家系だ。恵子は傍流だったが、桜子の母と血縁があった。桜子の不遇もよく知っていた。何度か金藤家においでと誘ったこともあった。そんな彼女が幸せそうに笑う姿に思わず涙を誘われたのだ。


「桜子―…指輪もらったんでしょ。見せてよ」

 ヨナがニヒヒと笑って言う。桜子は当然今日左の薬指にそれをつけてきていた。

「じゃじゃーん」

 会見でお決まりの「指輪を見せてください」ポーズを桜子が披露する。

「ええ、なんかしょぼくない?」

「ほんと。シンプルー」

 とヨナと久美は言ったが、魔法師系の康子とリサと恵子は一目見るなり、一斉に壁際まで思い切りよく後退した。

「ちょ、桜子。それこっちに向けないで!!!」

「そうよ!なんてもん付けてるのよ!」

「ちょ、神崎先生!何考えてるんですか!?」

 にやあと桜子が笑った。

「いいでしょ。火竜の指輪だよ。銘もあるんだ。『焔の桜』って、やだなあ、もう」

 ばんばんと薫の肩を桜子が叩く。アークのメンバーのパートナーと名刺交換していた薫は、桜子の猫パンチの威力にふらついていたがお構いなしである。


 銘は薫が付けた。ケースに彫ってあるのを発見して、桜子は大いに感動したのだった。何しろ、薫は「厨二病っぽくて嫌だ」と自分のパーティー名を『神崎家』にしてしまう人である。(これは桜子の誤解で、パーティー名の名付けは秋人なのだが)それがここまでかっこいい銘をつけてくれたことが、桜子は何より嬉しかった。


「うわー、まじかー。火竜の魔石くりぬく仕事を超突貫でやらされたって大塚の爺が嘆いてたけどこれかー」

 猛が感心してしげしげと桜子の指輪を眺める。ちなみに彼のいうところの『大塚の爺』はギルドが抱えている超有能ベテラン魔道具師で、魔石の扱いに関してはおそらく日本一のマイスターである。


「恐ろしいことするわね。この魔石元の大きさはどれくらいだったの?」

 康子がしみじみと呟く。その頃には桜子の指輪が地味でシンプルなものではなく、かなりやばいものだとヨナも久美も理解し始めていた。また全員が桜子の指輪の近くに寄って来た。

「元の大きさはチョーカーの時くらいでした」

 しれっと薫が答える。

「チョーカー?」

「あ、これ大きさ変わるんだー」

 桜子が金具のところを一回押すとブレスレットに、二回押すとチョーカーの大きさに変化した。ぎょっとして魔法師組はこわごわ近づいていたのを、また後退った。今回は威力の恐ろしさではなく、その機能に支払われた対価に震えたのだ。

 魔石から伝わる魔力の大きさを魔法師組はひしひしと感じている。そんなものを見た目だけ大きさを変えるとか、どれほどやばい魔法を使ってるのか、想像して震えあがる三人だ。


「魔石の変化は空間変異の魔法でさせてるので、魔石自身の威力はさほど弱めてないですよ。桜子さんは剣士なんで、指輪をずっと嵌めておくわけにはいきませんからね」

 薫は何でもないような風に言うが、おそらくオリジナルの魔法だろう。そこに三人はあの少年の影を感じた。そういえば、薫の杖もかなりやばめの作りだったなぁと三人は思い浮かべた。

 あの一見無害そうに見える華奢な少年は、一人で3つのSランクダンジョンを平定した猛者なのだ。当然、世間に公表していないオリジナルの魔法を数多く編み出しているに違いないのである。


 指輪が邪魔なら戦闘時は収納魔道具に放り込めばいいだけの話なのだが、どうやらこの男は「常にこれをつけていてほしい」というつもりらしい。なかなかの独占欲ではないかと「ほほう」という顔にアークのメンバーの顔つきが変わる。


 彼女たちは不遇な桜子の身の上に本当に腹を立てていたし、彼女が家族の愛情に飢えていることもよく知っていた。

 メンバーのうち、リサとヨナは今でもちゃんと両親と交流もあり家族仲はいい。康子と久美はダンジョンブレイクの影響で家族を失っているが、それぞれそれなりに大きくなってからの事であり、家族の愛情を受けて育った記憶はある。

 桜子だけが、家族からの愛情というものを殆ど知らずに育ってきており、彼女たちはその事をどう扱っていいのかずっと分からないでいた。


 このまま彼女が霧崎家のために愛のない結婚をし、さらに疲弊していくのを見続けなくてはならないのかと危惧していたところへの今回の「プロポーズ前婚約発表」で大逆転だ。

 だからこそ、彼女たちの中で薫に対しての唯一の懸念は「彼は桜子をどれほど想っているのだろうか?」という部分にかかっていたのだ。


「なんにしろ、あんたの婚約者最高!(イカレテル)

 とアークのメンバーは大笑いし、それから薫の心意気にホッと胸を撫でおろした。

凛子「ねえねえ、当夜君。あの子、あの眼鏡のバイトの男の子スタイルすごくいい、紹介して。モデルやってもらいたい」

当夜「いや、無理っす」

凛子「なんでよ」

当夜「あれ、秋人っすよ」

凛子「え?あれ、ほんとだ。あ、認識疎外アイテムか!」

当夜「訴えられたくなかったら諦めてください」

凛子「くそー、保護者が巨大すぎる」


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