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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十章 代理人、師走を走る

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16. クリスマスの誘い

 年末のパーティーに向けて、当夜と秋人は給仕のバイトの面接に赴いた。当夜は難なくクリアできたが、秋人は年齢が少し低い。面接官は当初難しい顔をしていたが、急遽入ってきたスタッフが渡したメモを見て態度がコロリと変わった。

「いやいや、将来のための勉強は大事なことですよね」

 面接官にどういう説明が施されたのか分からなかったが、秋人も無事バイトに採用されることになった。


 面接官はギルドマスターからの強い推薦があった少年に対して少し不思議な気持ちだった。

「しかし、あの子なんか微妙に顔の印象薄いんだよな」

 面接官が後から少年の容姿を思い出そうとしても、なぜかあまりうまくいかなかったのには訳がある。

「師匠、眼鏡ありがとうございます」

「うん。どういたしまして」

 秋人はバイトの間は桜子の認識疎外のアイテムを借りることにしたのだ。


 認識疎外のアイテムの事を智輝から聞いた秋人は、そのアイテムを欲しがったのだが、圧倒的に数が不足しているらしい。何しろこれを作れるのは世界に一人で、作るのに何週間もかかるのだ。世界中のセレブが欲しがっている超レアアイテムである。

 桜子はこの作り手が彼女の大ファンだということで、特別に順番抜かしで作ってもらえたのだ。

 もちろん、「如月秋人が欲しがってる」と言えば、どんな職人でも即日作ってくれるだろうが、流石にそれは気が引けた。ので、今回は桜子に借りることになったのだ。桜子も快諾してくれ、作り手に断りを入れてくれた。

 眼鏡は度は入ってないので秋人に貸すことが可能だったのも幸いだった。


 さて、年末の前にクリスマスである。

 人気者のアークエンジェルは当然あちこちのパーティーに呼ばれていて忙しい。彼女たちの恋人たちもその辺りは心得ており、クリスマスを一緒に過ごせないなんて…などと大人気ないことは言わない面子である。しかし、桜子は人生初めての彼氏なのだ。不憫に思った康子がなんとか25日の夜7時からは予定を開けてくれた。


「じゃあ25日は薫と師匠はデートだね」

 と秋人が言い出すまで、桜子はそんな可能性は欠片も思っていなかったので、びっくりした。

「いや、みんなでクリスマス会やろうよ。自宅で家族とクリスマスって私は初めてなんだ。手作りのケーキとかチキンとか楽しみ」

 と彼女が本気でそう望んでいるのが分かって、秋人は当夜をチラリと見た。当夜は少し難しい顔をして薫を見る。薫は少し考えた後、

「分かりました。それじゃうちのパーティーは25日の夜7時から始めます。プレゼントは一人3千円まで。誰のが当たるか分からないようにするので、誰に当たってもいいようなものを用意してください。ケーキは秋人が作ります。俺は料理を作ります。当夜はどこからか頑張ってツリーをもってきてください。桜子さんはたぶんめっちゃ忙しいと思いますので、できる範囲でお願いします」

 と宣言したので、神崎家のクリスマスの仕様は決定した。


「薫、僕ならいいんだよ。去年もクリスマスやったし」

 後から秋人が薫を捕まえてそう抗議した。

 去年、まだ同居に慣れないながらも薫がケーキを用意してくれて、お手製のビーフシチューを食べさせてくれたのは、秋人にとっては大切な思い出だ。しかし、今年は事情が異なる。世間知らずの秋人だって、クリスマスは恋人とイチャイチャするのが当たり前だって知っている。


 薫はじっと秋人を見て微笑んだ。

「25日なら友達も家族と過ごした後だろうから、工藤さんとか智輝くんとか呼べるだろ?にぎやかな方が楽しいし。あ、当夜、聖夜は来るか聞いてみて。金子はたぶん弟さんのとこだろうなぁ…」

 薫の言葉に当夜は親指を立てて見せた。


 というわけで、秋人は何故か自室で携帯とにらめっこしていた。

 智輝にはすぐ電話して、当然くるという返事をもらった。薫の手料理が食べられるのなら這ってでも行くということである。

 問題はもう一人だ。

 美香は確かにこの家の事情を知っているし、家にも来たことがある。彼女に声を掛けるのはさほど不自然ではないのかもしれない。薫はにぎやかな方が楽しいと言ったので、人数は多い方がいいに違いない。

「よし」

 秋人は気合を入れて連絡先をタップした。


『え?私が行ってもいいの?』

 美香にクリスマスの話をすると、彼女は驚きの声を上げた。秋人はグルグル回る思考の海からなんとか這い出て返事をせねばならない。

「はい、あの、うちの事情を知ってる人はあんまりいないし…その…にぎやかな方が楽しいって薫が…言ってて、その僕は他に呼べる人いなくて…あ、その先輩がもしよければなんですが、ぜひ」

 必死である。美香は秋人の言葉を聞いてうんうんと頷いた。

『分かったわ。それじゃお伺いさせていただくね。何か持っていくものとかある?』

 とOKの返事がもらえて秋人は天にも昇る気持ちだった。プレゼントの件を伝え、ケーキは自分が作ること、料理は薫が用意することを話すと

『わあ、それは楽しみね。それじゃ何か私はおかしを作って持っていくわね』

 と返ってきたので、秋人は大きく頷いた。



 本来、クリスマスのパーティーというのは25日に行うものだが、日本ではなぜか24日のイヴに行うのが通例だ。なので、パーティー関連は24日周辺に行われることが多い。

 スポンサー関連のパーティー会場で華やかに装っているアークエンジェルのメンバーに、桜子は説教されていた。

「だから、がんばって25日に予定開けたのに、なんであんたは二人のデートを蹴って家族パーティー提案しちゃうかな」

 康子がため息をつく。

「だって!みんなでしたかったんだもん」

 と桜子が告げると、全員が肩を竦めた。いい子ぶっているわけではなく、桜子は本気でそう想っているのだ。

「憧れてたんだ。家でそういうのやったことないから」

 とぼそっと告げる。手作りのケーキにチキン、プレゼントを交換してわいわい過ごすクリスマス。霧崎の家では自分だけがその景色から排除されていた。


「馬鹿ね」

 康子が腰に手を当てて憤慨する。

「そういう事はもっと早く言いなさい。私たちでやればよかったでしょう」

 との言葉に桜子は「あっ」となった。リサも、ヨナも、久美も少々怒っている。何という水臭いことだろう。

「来年は、アークのみんなでやろうよ。今からなら調整できるっしょ」

 とヨナが康子を見上げると、彼女は額に手を当てて

「分かったわよ」

 と了承した。桜子はいい仲間に恵まれて幸せだなと笑った。

ヨナ「どうせなら、来年は私らと神崎せんせーとこと合同でぱーっとやろうよ」

リサ「いいわねぇ。どっかの島でも借りる?」

康子「島かぁ、どこがいいかなぁ。やっぱ冬だし海が荒れるからなあ。花火の用意もあるしなぁ」

久美「あたしあったかいところがいいー」

桜子「違うの、そういうのじゃないの!!」

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