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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十章 代理人、師走を走る

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11. 新潟第三ダンジョン 2

 朝起きるとテントの前には5人の探索者(シーカー)が、粘土で固めたような状態でひとまとめの泥団子になっていた。

「土魔法あんまり得意じゃないだろ」

 と薫が秋人を見ると、秋人は小首をかしげる。

「火炎魔法よりは得意だよ。その場にあるもの利用できるし」

「そっか」

 二人が呑気に喋っている横で、捕まっている探索者(シーカー)は涙目でこちらを見ている。


「これ、どうする?」

 と秋人が薫に尋ねる。

「このまま放置ってわけにもいかんから、ギルドに取りに来てもらうか」

「ちょっと!」

 泥団子のうちの一人が喚く。

「ちょっと話にきただけなのにこの仕打ちは何なのよ!人を泥棒扱いして攻撃しかけてくるなんて最低!」

 喚く女性探索者(シーカー)に、薫はため息をついた。

「こちらの結界は人に反応するんじゃなくて、武器と攻撃魔法に反応するようにセッティングしてありました。なので、これに引っかかるということは何かしらの攻撃の意図があったと証明されます。あなた方、ここ最近オアシス狩りやってたでしょ。ギルドから注意喚起受けてまして調査してました」

 薫が笑顔で金色のカードを見せると、泥団子たちは青ざめた。

「Sランク…」

「あっ!」

 中の一人が薫の顔を見て叫ぶ!

「サバみその人だ!!」

「…………ぐふっ」

 当夜が思わず笑いをかみ殺す。このフレーズをもう10回は聞いてるが、まさかこんな場面で聞くとは思わなかった。薫が額を押さえて呻く。

「そうですよ。神崎薫。審議官です。嘘ついても無駄ですよ。ギルドの職員を呼びますので、覚悟しててください」

 薫が静かに告げると、泥団子たちは悔しそうに呻いた。



「俺、サバみそだけじゃなくて、桜子さんの筑前煮も好きなんだけどな」

 と薫がぼそっと言う。

「先生の好きなおかず、全体的に渋いっすね」

 当夜が突っ込むも薫はため息をついた。ダンジョンでもつながるデバイスを使ってギルドに連絡を取る。

「ええ、すいません。例のオアシス狩りを捕まえました。はい。新潟第三ダンジョンです。確保しにきてください」

『分かりました。いつもすいません』

 後藤の秘書が謝意を述べて電話は切れた。デバイスをしまいながら薫が言う。

「24時間にはまだ少しあるから、ここでしばらく休憩だな」

「この泥団子はどうするんだ?」

 金子が尋ねると、秋人はにこりと笑って

「このまま捕まえておこう。面倒だし」

 とのたまった。

 泥団子たちの顔には絶望が浮かんだ。悪魔だ人でなしだと騒ぎ立てたが、薫がジロりと睨むと口を噤んだ。薫の冷ややかな視線は、一般人には攻撃力が高すぎる。



「さて…と俺は読書しておくけど、秋人と当夜はどうする?」

「組み手でもするか?」

 当夜の言葉に秋人が一つ頷く。

「壊すなよ」

 と薫が忠告する横で、金子が不思議そうな顔になった。

「オアシスって壊れるのか?」

「そりゃあオアシスって言っても洞窟みたいなもんだからな。それに、当夜はナイショにしてるが確実にレベル40超えてるし、秋人は秋人だし」


 そこから繰り広げられた組手は泥団子たちを黙らせるのに十分な迫力だった。金子も開いた口が塞がらないレベルだ。薫が防御魔法を展開してテント周辺を守っているから無傷だが、辺り一面瓦礫の山である。

「当夜は、いかにも常識人みたいな物言いするけど、あれでもうだいぶ秋人のやり口に慣れちゃってるからな」

 薫が昼食の準備をしながらそう呟いた。



 ギルド職員が到着した頃には、秋人がカレーを作っていた。

「あ、いらっしゃい」

 と少年が笑う。ギルド職員はやけに童顔な探索者(シーカー)だなと思った。彼は下っ端なので、目の前の人物が伝説の如月秋人だとは知らない。

「カレー食べます?」

 と勧められたが、流石に仕事中なのでと断った。職員はまるでキャンプ場の有様のオアシスを呆れ半分で見て、傍らで読書している青年の顔を見て「あれ?」という顔をする。

 流石に見覚えがあった。Sランクの探索者(シーカー)の顔と名前くらいは憶えていないと、職員失格である。


「あ、お手数おかけします」

 薫がにこやかに微笑みながら、泥団子を引き渡した。

「秋人、解放して」

「わかったー」

 お玉を振り回しながら「秋人」と呼ばれた少年が何かを唱えると、泥団子は崩れ中からぐったりとした探索者(シーカー)が解放された。


「オアシス狩りの現行犯です。これは供述です」

 と薫が暇な時間に審判の日(ジャッジメント)で自供させた映像を職員に渡した。尋問する手間が省けてラッキーである。薫は古風な腕時計を見て頷いた。

「丁度良かった。そろそろ24時間なので、ギルドカードください」

 と薫が言う。薫、少年の他にあと2人のメンバーがいた。いかにも探索者(シーカー)らしい立派な体格の青年の傍らに、インテリ風の線の細い青年がいる。

 ギルド職員は迷わず金子に向かってカードを手渡した。

「どうぞ、手を当ててください。ジョブが反映されます」

「あ、どうも」

 金子は恐縮してカードを受け取った。

「あ、出た」

 どれどれと全員が金子を囲む。金子自身も別に内密にするつもりはなかったので、そのままカードを披露した。


「審議官じゃないのか」

 薫が残念そうに呟く。同士が欲しかったのに。

「回復魔法師だね。医療関係者じゃないのに珍しい」

 秋人も首を傾げた。

「ああ、たぶん弟の件でそちらもかなり勉強したからかな。俺としては有難いよ」

 まさかのジョブだったが、案外悪くないと金子は思った。

 万能薬がもしも手に入らなければ、弟はこれからもあの人工的に作られた瘴気の部屋で過ごすことになる。

 金子は探索者(シーカー)になったので、あの部屋に入って弟に触れることもできるし、治療も可能になったのだ。


「ま、なんにしろレベル10までいけば、魔法一つ覚えられるだろ。回復魔法師だとたぶん回復系魔法だし、金になるジョブで良かった」

 金子の言葉に薫は

「審議官じゃなかったら、金庫番とか会計士とかだと思ってたのに」

 と呟いて、皆が大笑いした。



 ギルドの職員がオアシス狩りのメンバーを連行していったので、3階層のオアシスには薫たちしかしなくなった。秋人のカレーを食べながら明日のルートについて検討する。

「金子をレベル10にしてから、秋人の小道に行くとして、どこまで付いていくかだよな」

「結構危ないから途中のオアシスで待っててくれる方が嬉しいんだけど」

「だめ」

 ぎりぎりまで付いていくつもりの薫と、それに難色を示す秋人。

 桜子救出作戦時の件もあるし、救世来神教(エルミネイト)の事もある。今までが大丈夫だったからといってこれからも大丈夫かどうかは分からないという薫の言葉にも一理あるのは、秋人も認めている。ただ、今回に関しては秋人はまだ薫に言ってない条件があるのだ。


「行けば分かると思うけど、たぶん僕しか入れないと思うよ」

 そう秋人が言うにはそれなりの訳があるのだ。

秋人「僕は薫の作るビーフシチューが好きだよ」

当夜「俺は唐揚げが好きっす」

金子「俺は神崎が作る塩ちゃんこ鍋が好きだったな」

秋人・当夜「それ食べたことない!!」

薫「あー、大学生の貧乏飯だからなぁ。今度やるか」

3人「わーい」

泥団子「お腹すきましたー」

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