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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第九章 代理人、パパラッチされる

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16. 後日談

 ヨナは動画サイトに載っている会見の時の桜子の不自然な乙女演技を見ながらけらけら笑っていた。


「もう、桜子。マジウケる。何このカマトトっぷり」

「いや、なんであんた『一緒に作ってくれるかしら』なのさ。そこは自分で作ってもてなしなさいよ」

 康子が呆れ顔で言うのももっともだ。

「もう、見ないでよ。さんざん笑ったじゃない」

 桜子がヨナの手元からタブレットを取り上げた。

「だいたい、桜子はずぼらなのよねー。何も夕飯を一緒にをここで一気に解決する必要ないじゃん」

 久美が携帯で続きを再生しながら指摘する。桜子がその携帯を取り上げようと久美の後を追いかけるが、斥候の彼女に追いつけるはずもない。


「それで、鯖みそは作ったの?」

 リサの問いかけに桜子は唇を噛みしめた。

「作ったわよ。作りましたとも!美味しかったですよ。薫さんが作った方がね!」

 桜子の叫びに全員が笑った。



 あの後、いくらかの騒ぎの後、今回の騒動は終結した。

 薫がまったくの冤罪、事実無根であること、桜子との記事を差し止めた腹いせにあること、ないこと書かれてしまったこと、そもそも今回の熱愛スクープの元になったのが自分たちのスタッフからの情報漏洩だったことなどを桜子と康子が改めて記者会見で語った。


 また、桜子は幼い頃から実家で虐待に近い扱いだったこと、その所為で最近探索者(シーカー)として知り合った薫に、法律的な相談をしたきっかけで仲良くなったこと、さらに霧崎家の嫌がらせが緊急対応を迫られるレベルに達した為、セキュリティ的に安全な住居に住んでいる薫の元に身を寄せたことなどを語り、その件でより親密になったと締め括った。

 薫がSランクであることを公にしてなかったことを質問されたが、薫は探索者(シーカー)になったのはあくまでも事故で、弁護士業が本職なので、依頼人のこともあり騒ぎになりたくなかったという事情は世論的にも受け入れられた。


 この告発で霧崎家は大炎上となり、アークエンジェルの皆は大いに留飲を下げたのだった。


 桜子は今あちこちでインタビューを受けている。概ね好意的にみられているのは、あの会見にきていた中でも表立って薫を槍玉に上げてなかった記者たちが、大慌てで彼のフォローに回ったからだ。

 また、当日撮影していたテレビや動画のクルーは、自分たちが如月秋人の敵認定され、関係者含めて「何があっても助けない」と宣言された事はおおっぴらにしたくないという心理も働いたらしい。

 中継してなかったのを幸いに、桜子が颯爽とやってきて、恋人を庇うシーンばかりが放送された。いわゆる「さばみそ会見」という奴で、もう少し時期が早ければ流行語大賞にまでノミネートされてもおかしくない勢いだった。



「いやあ、しかし、栗原総理大臣はカッコよかったわ」

 うっとりと康子が呟く。ナイスミドルが守備範囲、できる男が大好きな康子のどストライクなのだ。サインをもらって握手して、一緒に写真を撮ってもらったと大はしゃぎである。

「金子弁護士の方がいいと思うけどなぁ」

 久美はインテリ眼鏡が大の好物なので、あの会見で薫の弁護に当たっていた金子が、ドンピシャだ。久美は「インテリ眼鏡同盟」の会長をしていて、そこでも現在人気急上昇中である。


「秋人っちは元気にしてる?」

 ヨナが心配して尋ねた。今回の会見でかなりの無茶をした秋人は、流石に終わった途端に寝込んでしまったらしい。薫が会見を開くと言ってから3日間一睡もせず動き回っていたので、さもありなんである。


「うん、薫さんが退院したから今度は代わりに看病してる」

「あの二人はすごく仲良しだから、まあなんかちょっとそういう噂になるの、分からんでもないよね。見た目がやたらと麗しいし」

 鎌倉での薫の献身的な看病を知っているリサの言葉に、桜子は苦笑する。会見後の二人を思い出したのだ。



 会見が終わって後片付けを済ませ建物を出たら、深くキャップを被った少年がぽつんと俯いて立っていた。


「秋人…」

 薫が小さくその名前を呼ぶ。少年は肩をびくりと揺らした。彼なりの精一杯の努力だったが、薫の意に反していることは分かっている。たとえ、怒られても嫌われても、秋人は薫を守りたかった。でも、嫌われるのはとても辛い。身を切られるより苦しかった。


「秋人」

 もう一度、薫はその名前を優しく呼ぶ。秋人は恐る恐る顔を上げた。


 薫が困ったように笑っている。

「秋人、ありがとう。助かったよ」

 薫が万感の思いを込めてそう囁くと、秋人の目からボロボロと大粒の涙がこぼれた。

「薫!薫!よかった!本当に良かった」

 秋人が薫に抱き着いて叫ぶ。

「色々聞きたいことはあるが、まあもうやっちゃったことは仕方ないからな」

 薫が秋人の頭を掻きまわした。

「助けてくれて、ありがとう。秋人」

 薫の言葉に、秋人は子供のように声を上げて泣いた。康子と桜子とさらには後藤までもらい泣きした。



 桜子が思い出しながら呟く。

「美術部の子たち、謝ってたよ。こんな大きなことになるとは思ってなかったって」

 特に華は「自分が輝美の言う事を聞いておけばこんなことにならなかった」とすっかり憔悴して、学校にも来れなくなった。彼女はもう二度と漫画は描かないと言ったが、それは秋人が止めた。題材に気をつけてくれればいいと。

「僕、華先輩の絵が好きなので、やめないでくださいね」

 と秋人が言うと、華は泣きじゃくった。輝美と美香に謝り、薫と秋人には両親に連れられて正式に謝罪した。


「悪気がなくても許されない事ってあるものよ。ましてや、悪気があるならなおさらね」

 康子の言葉は苦い。


 その場の全員の脳裏にメグミの姿がよぎった。彼女は容赦ない金子弁護士の追求と、業界の冷たい視線に耐えかねて、全てを失って東京を去った。

 また、美術部顧問の田辺も退職を余儀なくされた。

 彼は「そんなつもりはなかった。ちょっと懲らしめてやろうと思っただけだ」と言い訳をしていたらしいが、金子が容赦するわけがなく、多額の賠償金を言い渡されて夜逃げしたらしい。


 ちなみに、賠償金は借金になり、追い込みは木下組がやってるとか、いないとか。

後藤「いやあ、栗原総理大臣、お疲れ様でした」

栗原「いや、後藤さんこそ大変だったでしょう。一緒に行くかどうかイエスかはいで答えてって内閣総理大臣に言えるのあの子だけですよ」

後藤「あれは絶対に誰かの入れ知恵です。秋人くんは日頃はもっと大人しいイイ子です」

栗原「しかし彼どうやって首相官邸に侵入したかさっぱり分からないんですが…警視庁のAIで演算させても結果が荒唐無稽すぎて」

後藤「…なんて出ました?」

栗原「監視カメラより早く動いていると」

後藤「・・・・・・・・・・・・」

栗原「え?できるんですか?」

後藤「・・・・・・おそらく」

栗原「・・・・・・はいって言ってよかった」

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― 新着の感想 ―
BLはガチで業が深いからなぁ ナマモノは禁止なの当たり前なのに逆に女は男があいつの体エロいよなまるまるしたいって漫画や小説にして打ってたらキモいって言わんのか
結果が全てとは言いませんが、結果はどうにもならないことも多いのかもですね。 ザマァされたら、どんな事情があろうと切り捨てられる作品も多い中、最後までキチンと向き合って終わりを描いてくれたので、逆にスッ…
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