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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第九章 代理人、パパラッチされる

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閑話:初めての正月

<お正月記念SS>です。

時期は作中でいうと約1年前に当たります

 デパートの食器売り場に秋人を連れて出かけた薫は、漆塗りの3段お重を見比べた。輪島塗りの職人が丹精込めて作ったそれは、かなりのお値段が記されている。薫は隣に黙って付いてきている秋人を振り返った。

「どっちが好き?」

 黒一色のシンプルなものと、金色の蒔絵が施されているものを指さす。秋人はじっと真剣にその二つを見比べ、シンプルな方を選んだ。


「こっちの黒の方が綺麗」

 最近はこうして理由をちゃんと伝えてくれることが増えて有難い。

 実はシンプルな物の方が作家ものなので高級品だった。秋人の目利きは確かである。

 価格の安い方を選ぶ必要がないことは以前に一度伝えてあるが、この年齢より小柄な少年はやたらと気にするのだ。


 赤城たちに搾取されていた間、秋人はあまり生活費をもらえていなかった。探索に必要な装備や道具も必要最低限のものしか与えられておらず、その癖が抜けないのだろう。


「君はおそらく世界で一番お金持ちの少年だ。欲しいものはなんでも買っていい」

 と薫が言った時、彼の顔に浮かんだのは「困惑」の2文字だった。物欲が霞のレベルで薄い彼は、欲しいものが思いつかないようだった。なので、薫はこうして「どっちがいい?」と聞くことから始めている。少しでも、彼が自分の望みを選択できる力を取り戻せるようにと。



「何入れるの?」

 珍しく秋人がそう尋ねた。そして彼の目がキラキラしている。どうやら、このお重がものすごく気に入ったらしい。

「お節料理だよ」

 と薫が言うと秋人は大きな目をこぼれそうなほど大きく見開いた。

「これ、お弁当箱なの!?」

「そう、スペシャルな時に使う用の弁当箱だよ」

「へええええ」

 心底驚いたらしい。

「帰ってからが本番だ」

 薫はニヤリと笑った。



 そこから自宅に帰ってから二人で台所でずっとおせちを作っていた。こんなに本格的なのを作るのは薫も初めてだった。レシピを見ながらのものもあったし、秋人のリクエストで、普通のおせちには入ってないような唐揚げやらコロッケが入ってるのも面白い。

 秋人が田作りの形状に若干引いていたり、海老の色が変わるのをわくわくしたりして覗き込んでいる姿は中学生より幼く見えた。

 彼は特に栗きんとんが気に入ったみたいで、一段全部これでいいとか恐ろしいことを言っていた。

 ちょっと失敗したり、形が悪いのもあったがそれも手作りならではだ。


「おお、綺麗綺麗」

 出来上がったお節を薫が自画自賛していると、秋人は横でパチパチと拍手をしていた。

「すごいね、薫。綺麗だね」

 3段のお節はかなりの出来栄えだった。

 薫はSNSはやっていないので写真を撮ってアップしたりすることはないのだが、少しだけ誰かに見せびらかしたいような気持ちになった。それはたぶん、秋人と一緒に作ったものだからだろう。


「お正月の料理ってことは来年も作る?」

 なんとなく微妙な緊張感を伴って秋人が薫にそう尋ねたので、彼は

「うん。秋人が手伝ってくれたら、来年は今年のよりもっと上手く作れると思う」

 と頷く。

「楽しみだね」

 秋人は安堵したようで、ふわりと溶けるような笑顔で嬉しそうに笑った。



 因みに、この時秋人は来年も薫と一緒にいられたら、追加で1段お重を注文して、1段全部栗きんとんを実行するつもりなことを薫は知る由もない。

せっかくなので、お正月スペシャルSSでした。


この時の秋人はまだ薫にずっと一緒にいて欲しいと言えてないので、来年も一緒にいられるかどうか不安に思ってますが、薫はまったく気が付いてないです。


本年もよろしくお願いいたします!

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