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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第九章 代理人、パパラッチされる

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8. スクープ

 翌日の放課後、秋人が学校から出ると不意に

「如月くんかな」

 と気安い感じで呼び止められた。呼び止めた相手は30代くらいの男で、秋人はその風体からして先日の雑誌記者と同じ類であろうと推測した。

「何か御用ですか?」

 警戒心満載の秋人に相手が苦笑を零す。

「いや、ごめんごめん。そう警戒しないでくれよ」

 なれなれしい態度に秋人の眉がきゅっと寄った。


「いや、君カッコいいね。モデルとかできそうじゃん」

 わざとらしい誉め言葉に一ミリも心を動かされた様子がない秋人の冷たい表情に、男は攻めあぐねている。

「ちょっと話ききたいんだけど、どうかな」

「お断りします。急いでいるので」

 男の横を通り過ぎようとしたところ、彼は慌てて秋人の腕をつかんだ。

「待ってよ。そんな邪険にすることないじゃん」

「放してください。大声出しますよ」

 一応普通の少年なりの対処法である。流石の秋人もここで相手を気絶させるのはまずいくらいは分かっている。


「こんなところで助けてくださいって叫ぶわけ?カッコ悪くない?」

 男が少年の自尊心を利用しようとしたが、そんな類の方法が秋人に通じるはずもない。

「手を放してください!誰か!誘拐です!!!」

「え?」

 秋人が本気で叫んだので、放課後で帰宅しようとしていた学生が一斉に振り向いた。


「げっ」

 男が慌てて秋人の腕を放して逃走を試みる。しかし、男の前方には大柄な生徒が回りこんでいた。

「何こいつ?」

「あ、智輝」

 野球部の新人エースは一年とは思えない立派な体格の持ち主である。あっさりと男を捕獲することに成功した。智輝が確保した男は、彼の背後からやってきた強面の男たちに引き渡される。


「ひっ」

「なんや、お前。ここ誰のシマか知っとるんか?」

 という()()()()なセリフに男は縮み上がった。

「こら、誰のシマでもねーだろ」

 という智輝の突っ込みに「へい」とヤクザの男たちは堪えるも、捕まえた男の手は離さない。ヤクザの一人が男のポケットから名刺入れを探り出し中身をだして、智輝に手渡した。

「なんだ?週刊文秋の記者さんが何してんだよ」

 智輝が男に問いただすと、彼は大慌てである。そうこうしているうちに学校から警備員が走ってきた。誰かが呼びにいったようである。


 チラリと智輝と秋人の視線がそちらに向くと、ジャーナリストらしき男は渾身の力で捕まれている腕を振り払い逃げ出した。

「あっ」

 と小さく叫んだが敵わず、男は逃走してしまった。


 警備員に事情を説明すると、最近ちょこちょこ苦情が入っているらしい。

「少し巡回するようにしましょう」

 とのことで、その場は収まった。



「何なんだ?」

 智輝の質問に秋人はうーんと首を捻った。

「なんか、薫のことを嗅ぎまわってる人がいるみたいなんだけど…」

 例の男はストーカーと聞いていたので、週刊誌の記者的なものは想定外である。秋人の疑問を智輝は呆れたように見つめた。

「そりゃアレだろ、この前神崎さんが連れてた女、有名人だろ?そのせいじゃね?」

 智輝の指摘に秋人は目と口を大きく開けて驚きの表情をした。

「なんで知ってるの!?」

 秋人は言ってない筈である。しかし、そんな秋人の様子に智輝はため息を零した。


「お前、あんだけ普通じゃないオーラー放ってる女なんて一般人の訳ないだろ。なんだ?女優かアーティストか、モデル?」

「そういうもん?」

「おまけに認識阻害のアイテム使ってただろ。そんな高級品使える一般人とかありえないからな」


 智輝は先日みかけた女性の印象がどうやっても安定しないことについて、父親に尋ねた。すると、彼は身に着けると外見の印象が残らなくなるマジックアイテムがあることを教えてくれたのである。

 ただし、単価は億単位である。ダンジョンのドロップ品か、あるいは高度な魔道具として作成される貴重品だ。そんじょそこらの人間が持てるものではない。

 有名なアスリート、頂点を極めた女優・俳優、トップモデル、国家を動かせるランクの政治家、経済を揺るがすほどの大企業のCEOなどが一つ持っていればいいようなアイテムだ。


「あー、そっかぁ。そっちの線は考えてなかったなぁ」

 秋人はてっきり薫自身のことについて嗅ぎまわられているのかと思ったが、よくよく考えたら桜子関連の方がおおいにあり得る話だった。


「誰か聞いてもいいか?」

 智輝が正体を気にしているのは、さきほどの連中のようなのが増えるかどうかを考えたかったからだ。しかし、他人の自分が口をだすべきことではないかもと、一応気を使って言ってくれていることに秋人は気が付く。

 どうせ、今後智輝が家に遊びにきたりしたらバレるだろう。


「霧崎桜子」

 と秋人が簡潔に答えると智輝は大きくのけぞった。その名前を知らない日本人はいない。

「はあ?マジか?」

 と智輝が驚嘆の声をあげる。

「どういう知り合いで?」

 思わず聞いてしまった。神崎薫は弁護士だ。Sランクの探索者(シーカー)とどういう経緯で知り合ったのか、理解できなかった。超武闘派と超インテリの組み合わせも不可思議だ。


「うーん、色々あったんだけど、仕事上で知り合ったんだ」

「あー、なんか法律の問題でか?」

「まあそんなところ」

 秋人が詳細を語らなかったので、智輝は適当に頷いた。弁護士がペラペラと情報を漏らしていたら一大事だ。

「そりゃあ、まあ追いかけ回されそうだな。あ、そっか。本人が入院してっからお前のとこに来てんのか」

「たぶんそう」

 秋人が肩を竦めると、智輝はため息をついた。

「あの手の輩はしつこいからな。霧崎桜子の方から手を回してもらえよ」

「わかった。そうする」

 秋人があまりにも簡単に言ったので、智輝は「ん?」という顔になった。薫と桜子がいい感じであることは分かったが、秋人がそうそう簡単に桜子に連絡を付けられるのだろうかと。


「あ、薫と桜子さん、僕もだけど一緒に住んでるんだ」

 という秋人の爆弾発言に、智輝はがっくりと肩を落とした。

「そりゃあ、大スクープじゃねーか」

 と。

ヤクザA「若の学校周りでブンヤどもがウロウロしてるらしいから片っ端からしめろ」

ヤクザB「でも、若にシマじゃねえって言われたっすよ」

ヤクザA「っかやろう、若の立場からしたらそうとしか言えねーだろ」

ヤクザB「なるほど!さすが兄貴」

警備員「最近この辺ガラ悪いな」

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