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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第八章 代理人、文化祭へ行く

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19. 文化祭 日曜日 18:00

 出し物が全て終了し、あちこち走り回ったおかげでようやくすべての片づけが終わろうとしていた。


 秋人は土曜の朝一人で動かした大型の石膏像をチラリと見る。準備室まで持っていくのに台車を取りに行き、複数人で載せて運んで降ろして台車を返しに行くという作業を思うと、「面倒だな」という気持ちが沸き起こる。

 存外秋人はめんどくさがりで気が短いのだ。一人で何でもやってきた所為で、効率重視な面が強いのもある。キョロキョロとあたりを見渡しても誰もいない。


「よし」

 身体強化を使えばこんな石膏像など片手で持ちあがる。あとは、誰にも見つからないうちに準備室に入れてしまえばいいのだ。秋人は軽々と大型の石膏像を抱え、美術準備室のドアを足で開けた。何の苦労もなく石膏像を元の位置に収納する。


「あれ?」

 他の石膏像の隙間に今朝見た華が隠していた封筒らしきものが立てかけてある。

「これ、鳥本先輩のだよね?」

 秋人はそういえばこれに薫が関係しているのではないかという情報を思い出した。

「?」

 封筒を開けて中身を取り出したところで、秋人は大きく息を飲んだ。



「何これ…」

 中身はマンガの原稿らしいというのは、この前の合宿の時に色々させられたので分かった。このタッチは華のものだろう。彼女の線はとても美しい。しかし中身がとんでもなかった。秋人は数枚のページをめくってどんどん顔色が悪くなっていく。

 薫と自分の恋愛模様がつづられている物語を読む羽目になって、秋人は愕然とした。おまけに18歳未満禁止な内容である。


「ちょ、無くなったってどういうことよ!」

 不意に準備室の外から輝美の叫ぶ声がした。

「知らないわよ!今朝置いたところになかったのよ!!」


 彼女たちが探しているのはこれだろう。秋人は封筒をどうするべきか、中身について問いただすべきか分からず棒立ちだった。

 なので、美術準備室へ二人が入ってきた時に、真っ青な顔で彼女たちの原稿を持ったまま突っ立ていた。

 暗い準備室での秋人の様子が尋常ではなかった所為で、二人は「ぎゃああああ」と悲鳴を上げたのだった。



「あんたたち…」

 美香の額には青筋が立っており、部長は頭を抱えている。秋人は半泣きだった。

「き、如月君、それどこにあった?」

 華がもみ手で秋人に尋ねる。秋人はうつむいたまま石膏像の辺りを指さした。

「落とし物だと思って…」

 そうボソリと呟く秋人の声は弱い。


 華と輝美はそんな秋人の様子に戦々恐々だった。ほんのちょっとした出来心だったのだ。それが人をこんな風に傷つけることになるとは思ってもみなかった。特に輝美は秋人には見せるなと薫から注意されていたにも関わらず、一番ダメなパターンで見せてしまった。


「あの、僕と薫ってこういう風に見えるんですか?」

 秋人が震える声で尋ねる。華と輝美は居たたまれない。そして、美香の方を恐ろしくて見られない。

 美香はぎっと二人を睨んだ後、優しく笑顔で秋人に向かった。

「如月くんと神崎さんは全然こんな風に見えないよ。その頭のおかしい二人のいかれた脳みそが作り出した妄想だよ」

 容赦ない親友の言葉に二人はぐさぐさ刺されていたが、これはもうどう罵倒されても言い訳のしようがなかった。


「申し訳ありませんでした!!」

「二度としませんから訴えないでください!!!」

 二人は土下座で秋人に謝った。秋人はがっくりと肩を落としている。


 自分と薫の関係は他人にどう見えるかなど思ってもみなかったが、確かに親子には見えないし、兄弟というにはまったく似てない。秋人にとって薫は大切な人だが、こんな風にみられることが薫にとって、どれほどマイナスかなんて、世間知らずの秋人にだって分かる。秋人は未成年であり、薫は弁護士なのだ。

「12から15歳のこどもにそういうことをするのは犯罪」

 と智輝も教えてくれた。

 預かっている未成年の同性に手を出す男だと思われたら、最悪薫の弁護士人生が終わってしまう。



「これ、他に見せた人います?」

 秋人の冷たい声に二人は震えあがった。全身を使って否定する。


「薫はあの顔なので、本当に苦労してるんです。先日も変な人に目をつけられて大変な目に合ったばかりなんです。こういうの困ります」

 秋人がぼそぼそと話す内容に、華も輝美も愕然となった。そんな事思いもしなかった。薫は大人で弁護士だから、そんなトラブルに合うなんて想像もしたことがなかった。


「私言ったよね。やめなさいって」

 美香が本気で怒っているのを感じて、華と輝美は小さくなるしかなかった。


「コピーはありますか?」

「それが原本でコピーは2部だけよ。」

「全部処分するので渡してください」

「そこに一緒に入ってるわ」

 華の言葉に秋人は頷く。中を見て目を見開いた。


「1部足りない…」

 中には原本の手書きのものと、コピーが1部しかなかった。

「だ、誰か持っていったの?」

 華が震えあがる。そもそも彼女たちは今朝これを部誌の棚に隠したのだ。ここではない。誰かが見つけて1部抜き取り、ここに放置したと考えるしかない。


「一体誰が…」

 秋人が唸る。こんなものを拡散されたら大問題だ。


「そうだ!顧問に、田辺先生にここの録画を見せてもらいましょう」

 美香がぽんと手を打った。美術室やこの準備室には監視カメラが設置されている。学生の権限では見ることは叶わないが、教師ならば可能だ。


 しかし、秋人はギクリと顔を強張らせた。その表情を見て美香も同じような顔をする。

「き、如月君、あなたまさか…」

「すいません」

 魔法使いました…と小さく呟く秋人に美香は天を仰いだ。録画を皆で見れば、秋人があの大きな石膏像を軽々持ち上げ足でドアを開けて簡単に元の位置に置いたところがばっちり映ってしまう。


「明日薫に見てもらいます。そういう魔法が使えるので」

 秋人が美香に小さく説明すると、美香は仕方ないと頷いた。


「とりあえず、顧問には私から聞いておくわ。みんな片付けしてキャンプファイヤーに行きましょう。如月君はそれ燃やしちゃいましょう」

 とニコリと笑って誤魔化してくれた。

秋人「そもそもどうして18歳未満閲覧禁止なのに17歳の先輩たちが描いてるんですか?」

華「如月君が厳しい(涙)」

輝美「目が冷たい」

美香「いや、自業自得でしょ。あと試験の時にノートはもう貸さないからね」

華・輝美「そんなあ…」

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