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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第八章 代理人、文化祭へ行く

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18. 文化祭 日曜日 12:00

 秋人は美術部の展示とクラスの出し物の二足の草鞋状態なので、文化祭の間中かなり忙しい。それでも、昼食のタイミングで美香のクラス出し物のメイド喫茶に智輝と行くことができた。


「きゃー、美香の後輩かわいいーーー」

 と美香のクラスメイトたちにもみくちゃにされたのには閉口したが、秋人の先輩はそんなクラスの女子を窘めて、オムライスをご馳走してくれた。

「メイド喫茶といえばオムライスだよな」

 と智輝がうんうんと頷いているが、秋人は謂れがよく分からないので首を傾げるだけだ。


「工藤先輩をお化け屋敷には招待しないのか?」

「背景画見たいから最後の方でくるって。」

「へえ」

 ニヤニヤと智輝が笑う。秋人はそんな彼の顔を見ないように視線を外した。

「サービスポイントはいらねえの」

「要らないよ」

 秋人が強がるも智輝は笑いを堪える。メイド喫茶から出るとき、智輝が何やら美香に話しかけていたが、秋人は美香のクラスメイトにまたもみくちゃにされていたので、何を話していたのか分からなかった。


 食事をし終わったら今度はクラスの方で幽霊役である。着物の着方もようやく慣れた。今度道着を着るときは前よりはマシに着られるかなと秋人は思った。

「じゃあ、よろしくな」

 智輝がニヤニヤしながら秋人を教室に入れる。どうせろくなことを考えてないに違いない。

「だいたい智輝は一言多いんだよ…」

 ぶつぶつ言いながら位置に着く。


 今日もまたよくわからないお役目で、女の子の相手をしないといけないのかと思うとため息が出る。先輩に嫌なら嫌と言わないとだめだと言われたが、今言うのはちょっと厳しい。言うなら最初から言わないといけなかったよなと大いに反省した。

「僕もう少しノーって言えるようにならないと」

 その点薫はきっぱり断ることが出来る。コツを今度聞かなくては…と秋人は決意した。



 そこから1時間くらいクラスの出し物に徹していると、また一人新たなお客さんがやってきた。女子はたいてい二人連れだが今回は一人だ。一人のお客さんは押しが強い人が多くて秋人は苦手だった。しかし、向かいのモンスター役の男子に脅かされて本気の悲鳴を上げたその人は派手に転びそうになったので、慌てて秋人は助けようと動いた。しかし運悪く、暗くてよく見えなかった所為で足元の棒をひっかけたらしい。

 女性もろとも通路に転がってしまった。女の子を踏みつけるわけにいかないので、秋人が下敷きだ。押し倒されるような恰好になった秋人は流石に慌てて体を起こそうとした。

「如月くん?」

 秋人の上に乗っかってる女性が秋人に話しかける。

「え?」

 秋人の顔のわずか数センチのところに美香の顔があった。

「うわ、先輩。ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 すぐ目の前に美香がいる。彼女を抱きしめるような体勢になってしまっている。


 彼女を抱き上げてビルの間を跳んだことだってあるのに、あの時は何も感じなかったはずが、今はばくばくと心臓の鼓動が秋人の耳の奥に木霊した。

 焦って動こうとした所為で余計に彼女に密着することになり、柔らかい感触が秋人の手に当たった。

「!!すいません!!!」

 今度こそ焦って秋人が飛びあがる。

 ぐしゃり

 その時、床についた秋人の手元から何かが壊れる音がした。

「「あっ」」

 その場の全員が固まる。

「眼鏡…が」

 秋人は暗い中でも顔面蒼白だ。どうやら美香の眼鏡を手で踏んづけて壊してしまったらしい。秋人はひしゃげたフレームとレンズを拾い上げ、小さく唱えた。

修理魔法(リペア)

 その詠唱は美香にだけは聞こえた。

「如月くん!!」

 咎めるような声に秋人は首を竦める。

「よかった!壊れてなさそうですよ」

 秋人は高速で直した眼鏡をそっと美香に渡した。

「キャンプファイヤーするとき、無いと困るでしょ」

 と言い訳するように美香の耳元で告げる。美香は

「しょうがないわね」

 とため息をついた。



 美香を送って出口まで行くと、ニヤニヤと笑っている智輝がいた。

「工藤先輩にお前の雄姿を見てもらおうと思ってな」

 どうやらチケットをこっそり避けていたらしい。秋人はぐりぐりと智輝の頭を拳で挟んで回していた。

「おーまーえーはーーーー」

「痛い痛い痛い、未来の甲子園のスターが壊れたらどうするよ」

「知らん!!」

 秋人が叫ぶと美香はくすくすと笑った。

「よかった。如月くん、友達できたのね」

 との美香の言葉に秋人はもちろん智輝までが打ちのめされた。


「如月くんの背景画すごくよかった。やっぱり如月君の絵は色が綺麗ね」

 と美香が褒めると秋人は嬉しそうに小さく笑みをこぼす。その顔に秋人目当てに並んでいた女子は全員ノックアウトされていたが、秋人はまったく見えていない。


「それじゃ、またね。夕方からは美術部の方の片づけだからね」

 と美香は手を振って去って行った。顔には秋人がこっそりなおした眼鏡がちゃんと収まっていたことに、秋人は満足感を覚えた。


「お楽しみいただけましたか。旦那」

 と智輝がふひひと笑ったので、今度は脛を蹴とばす。

「痛いって!暴力反対!!」

 と智輝が叫ぶ。

「如月!早く中に入れ!時間延長するぞ」

 委員長が怒鳴る声が聞こえて秋人は慌ててお化け屋敷に入っていった。

委員長「なんか、さっきぴかって光らなかった?」

クラスメイト「うん、なんか眼鏡がっつり壊れてたような」

秋人「気のせいだよ」

委員長「そうかな?」

秋人「うん、気のせいだよ(ニコ)」

委員長「…わかった」

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