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人魚捜索 17

狼男は八雲に近付いた末についに手を伸ばして、八雲の肩を掴んだ。


「さて、それじゃあ、捕まってもらうか」


「あっ……」


狼男は声と共に連行するよう手に力を入れる。

それに対して八雲は声を出す。

そして肩を掴んだ手は強引に八雲を引っ張って行ったのであった。

表情を隠していた本が片手で掴んでいたために揺れる。

そこで大越は八雲の表情を見た。


(……?)


大越には疑問が浮かんだ。

八雲の表情は恐れているのでなければ、驚いているものでもない。

口元が上がっているような状態、そう、笑っていたのであった。


「一つ言っておくと、私、無理強いさせる男って嫌いなの」


八雲は淡々とした言葉を放つ。

そして更に八雲の肩を引っ張って、持っていた本が落ちることになる。

ここで八雲が笑っていた理由が大越には理解できた。


八雲は本の陰で構えた銃を隠していたからだ。


笑みを浮かべて銃を狼男に向けた八雲、その光景を見た狼音は言葉の出ない表情を浮かべていた。

本の落下音と共に銃声が響く。

予想出来なかった攻撃に狼男は軽く後方に飛ばされた。

飛ばされた狼男は仰向けで地面に倒れる。

突然の好転に大越は戸惑い、何も出来なかった。


「なんて驚かし方しやがって……女が男に歯向かっ……がほぁ!」


狼男の言葉の最中に既に八雲は走っていて、一飛びしてから八雲は腰を狼男の胸に落とす。

言葉の途中に狼男は息が漏れる音を出すも、八雲は容赦なく攻めの手を止めない。

八雲は銃を開いた狼男の口に深く差し込んだ。

次の光景を予想出来た大越はあまりの一方的な攻めに恐れにも似た唖然を感じ、言葉が出なかった。

鈍い銃声が二回。

狼男が気を失うには十分で、まさか死んでないかと見ていて疑いたくもなった。


「あと、もう一つ言っておくことがあったわね……」


八雲は立ち上がりつつ、銃を狼男の口から抜いて話す。


「これ、全部誤射だから許して」


銃を斜め下に一振りして、八雲は聞こえないだろう狼男に告げた。


(わー……すごーい……)

心の中で大越はやっと出てきた言葉は驚きと賞賛だけであった。


「取り敢えず危機は去ったわけだけど……一応周りに敵はいないようね」


大越はそう言うと、警戒は緩めずに周りを見渡して敵がいない事を確認する。

八雲にも聞こえる話したのだが、あれだけのことをやったせいか八雲に距離感ができたことは感じていた。


「そう、じゃあ私はそこで寝ているサブローくんを起こすわ」


「あ、うん」


八雲は御堂へ足を運ぶと共に話し、大越も声と共に頷く。

となれば大越は連絡をしたほうがいいことにはなる。


「連絡……しても反応あるかな?」


大越はスマホを取り出し、柄池に連絡を試みる。


「ほら、起きたら?」


八雲はしゃがむと共に御堂に声をかけながら、軽く御堂のほおを叩く。

大越のスマホに柄池からの反応があった。


「あ、繋がった。柄池くんだよね?」


「ああ、そうだけど、そっちは大丈夫?」


スマホを通して大越は柄池かと確認の言葉を出す。

柄池は対して肯定の言葉とこちらのことへの心配の言葉を返す。

御堂の起きない様子を見るに八雲は次の行動に移った。


「起きないと眼鏡をとって隠すわよ?」


八雲は御堂の眼鏡を掴んで、前後に移動させながら隠すことを事前に言った。


「驚くことに八雲さんが倒しちゃってほぼみんな無事、サブローが気を失っているだけで、他は大丈夫」


「な? マジ? !こっちも終わって他のみんなが三人を探しているとこなんだ」


大越は八雲がやったことを柄池に伝え、柄池は驚きながらもこちらを探していると話す。

御堂の方はまだ反応がないようであった。

その様子から八雲は御堂の顔を真上へと向けるよう調整する。


「起きないようなら……こうしてもいいわよね」


八雲は御堂の口に八雲が使った銃をゆっくりと近づけた。


(え!? それは良くないでしょ?! 起きたほうがいいよ!)


八雲の行動に大越は第三者でも危機が伝わり、危機の言葉が言葉としては出ないも心の中では出す。

大越もこれは見過ごしてはいけないと思いながら口を開くも、柄池の方が話し始めて、意識せず柄池の応対をしてしまった。


「それと、連絡してくれると助かるけど……」


「あ、じゃあ、私の方で位置を知らせるから、それでいい?」


「ありがとね。お願いするよ」


柄池の提案に大越はこっちでやると返して、柄池から礼の言葉を贈られる。

御堂の方はやっと顔を動かす。

反応があり、八雲はすかさず銃を離した。

御堂の口は狼男の口内に入った銃と触れる危機から逃げ切れた。


「それじゃあ、切っちゃうよ」


「ああ、待っていてね」


大越は連絡を切ることを事前に告げて、柄池は待ってくれと言って、スマホでの会話を終えた。

大越は通話を切り、連絡システムで位置情報を通達する。

御堂の方を見ると、御堂自身で上体をゆっくり起こす姿が眼に映る。


「えっと、狼男に突っ込んで……それで退けられて……それから、どうなったんだっけ……」


「サブロー、もう狼男は大丈夫だからね」


御堂は言葉と共に上体を思い起こし、大越は重要なところであろう部分だけ、御堂に話す。


「え? 俺がこんなことしてる間に? 誰が?」


「八雲さんが、よ」


御堂の疑問に対して、大越は八雲に視線を向けて答えると、八雲は手を挙げる。


「すごいな……どうやって倒したの?」


「単純に銃を三発当ててよ、そうよね、大越さん?」


御堂は大越に視線を向けて、再び疑問するが、先に答えた方は八雲であった。

大越も答えようと口を開いたところであったが、先を越されてしまう。

更に八雲は大越に確認を求める口ぶりも見せていた。

これはそう、同意するだけで、銃のことは言わないようにとも大越には感じている。


「そ、そうね。三発当てたらあの通りになったわよ」


「そうか……まぁ、解決してよかったよ。あと、あんな状態で一人先走ってごめん」


大越は余計なことを言わずに同意の意思を伝えて、御堂は理解と共に勝手な行動についての謝る意思を伝えた。

大越としてもあの場で突っ込みたくなる気持ちも理解はできたので、あまり責めるつもりはない。


「ああ、いいのよ。腹たつ物言いだから、突っ込みたいのも分かるよ」


「……解決はしたから良いわよ」


御堂に掌を見せて、大越は横に振りながら不問にする声を出す。

その場を離れて背を向ける八雲は表情が見えないも、不問にする言葉を出した。

八雲はそのまま本のところへ向かい、本へと手を伸ばす。

手を伸ばして触れそうなところで、八雲は一旦停止したのであった。


「ところで大越さん。良いかしら?」


「えっと……何か?」


八雲から視線を本に向けたままの質問、大越は何かと返答する。


「あなたって、化者? 化学の化、従者の者と書く方の」


「え?」


八雲の質問は突然にして核心のある内容であった。

大越は当たり障りのない言葉で一旦返答する。

八雲は大越の声を聞いてから本を取り、本で表情を隠しながら大越に視線を送る。

返答内容は否定以外無い。

だが、返答次第では自らが化者だと怪しまれる。


(下手なこと……言えないじゃない。こんな質問……)


まるで見えない誰かに銃を背後から突き付けられたかのような感覚、その感覚に大越は心の中で呟く。

大越は口を開こうとするも、先に御堂から言葉が出る。


「……八雲さん、それを突然聞くのはよく無いことだと思うんだよな」


「……そう?」


御堂は口を挟む形の言葉で申し訳ない表情をしていて、八雲は御堂に言葉を投げる。

八雲の視線は御堂の方に向いていた。


「例えばそう……入試で何点取ってこの大学に入ったか、それを聞くようなものだし、周りに俺のような他人もいて突然聞くには良くない質問かなと」


まだ申し訳なさが残る御堂は八雲の投げた質問の意味を話す。


「多分さ……化者かどうかって話は自分の力を大っぴらにすることと同じだし、そういうことだと思うから気をつけた方いいんじゃ……」


八雲の質問を続けて説明する御堂はこれにて話を終える。

突然の好機だが、大越は危機から去ったと言えるだろう。


「そう……分かったわ。大越さんもごめんなさいね、こんなことを聞いて」


「ああ、うん。分かれば良いから。あと、私は化者とは違うからね」


八雲は大越に向き直り、謝りの言葉を伝える。

大越は許容を伝える言葉を話した。

それと同時に嘘も、だ。

ここで嘘でも言っておかないと、八雲に追求されることと、化者について何も言わなければ、怪しまれることもある。

その為、大越には嫌な気分を裏で味わうこととなるが、必要なものと身を切る思いで言葉を出した。

それと、どういう思いで先に言ったか分からないが、御堂にも密かな感謝を大越はしていたのであった。

それから少しして柄池達も到着し八人が揃うこととなった

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