人魚捜索 18
ここまで大越視点
八人が揃ってから、先に皆の被害状況を確認をすることとなった。
被害の方は龍富、柄池、御堂が受けて、一番大きい柄池でも思ったより問題がないと本人は言っていた。
纏めると被害は深刻なものではなく、すぐに別の話へと移ることになる。
「じゃあ……錠をあの狼男に掛ける……の前に」
龍富は首を後ろに向けながら話す。
「後ろのこの子を誰か頼めないか?」
後ろで背負うもっちを代わりに背負うことを龍富は頼む。
八人が来たというよりは実際まだ気を失っているもっちも背負って連れて来たので、実際には九人である。
手を挙げて話に乗ったのは大空であった。
「じゃあ私が背負うよ、ん? もしや、マツの方がいいかい?」
「俺はいいよ。長距離走って、少し休みたい感じだし」
大空が背負うと話し、古賀松に話を振るも、古賀松は長距離を走ったことを理由に拒絶した。
「んーなんだ……まあ、アタシが引き受けるよ」
「済まない、頼む」
大空は古賀松が話に乗らないことを少し残念がりつつも、言葉を話しつつ龍富に背を貸してもっちを背中で引き受けた。
龍富も頼むと言いながら渡して、倒れた狼男の方へと歩く。
(あの男、立ち上がったりしないよね……流石にあんな事されて、暫く立ち上がらないだろうけど)
大越は狼男が起き上がらないかと心の中で心配をしつつ、注視していた。
その心配も思い過ごしで終わり、龍富は横になっている狼男の前で錠を取り出す。
「……その錠だけでいいのか?」
「ああ、心配ないよ。これで化者は無力化出来るよ」
御堂が錠について疑問を話すと、柄池はその疑問について答える。
大越も事前に錠をかけるところは見ていて、急いでいたあの時は気にしなかったが、今になって錠だけでいいのか疑問も出て来た。
龍富は寝ている狼男の片手に錠をかけた。
「あの錠はね、手を拘束するだけでなく、かけた化者は化けられなくなる効果もあるんだ」
「そんな効果があるんだな……」
柄池は錠についての話をして、御堂は関心の言葉を出す。
龍富が狼男の別の手に錠をかけている間、大越もまたそんな会話に言葉を出さずに関心を寄せていた。
「ところでこの狼男ってどうなるの?」
愛川はふとした疑問を呟く。
「あとは他の退魔師に連絡して、債務をしてもらうわけだな。誘拐なんてこと悪いことをしたからな」
その疑問に答えたのは龍富であった。
愛川はいまいち理解できてなかったようで、首をかしげる様子を見せる。
おそらく債務についてであろう。
大越も債務についてはある程度の予想はつくも、分からない部分はあったので聞いておきたい話であった。
「債務……ってのは、罰を償うための行動だな。人間だって犯罪を起こせば、刑務所に行く必要だってあるだろ?」
「……となると余りにも非道なことをやれば、命そのものがやばいことになるよな。その時は?」
龍富は債務についての解説に入る。
解説に別の疑問を出したのは御堂であった。
「いや、どんな場合であろうと、債務を行う場合はそいつの命を奪うことはほぼあり得ない」
「え、そんなことが? そんなんで」
龍富は御堂の疑問に答えて、途中に御堂からさらなる言葉が挟まれる。
龍富は疑問への回答を続けた。
「命を奪う以上に重い債務をすればいいだけだからな。死刑や終身刑以上の罰則なんて退魔師側の方でやる事だって出来る。死なない体になって死ぬ程の痛みを永遠に与えられる、なんて債務もな」
「お、おお……そうか……」
龍富から言うなんて予想出来なかった言葉が飛び出して来た。
その言葉に御堂は引きつり気味の声が出てしまう。
実際に大越も予想のできない言葉でもあったのは間違いない。
「まあ、少なくともこの狼男達は今言った債務を受けるなんてあり得ないからな。俺の今言った債務はどうしようもなさを2枚分羽織ったような奴向けだから、あんまり気にしなくていいからな」
「そーなんだー、ふーん」
龍富は補足として狼男の債務について話し、愛川は分かったような言葉を上の空の表情で話す。
中でも御堂と大空と古賀松、それと入っているであろう大越の各々引けた反応に気を使った内容なのかと予想出来る。
(あー理解してなさそうな表情、ある意味羨ましい)
大越は愛川の理解してない反応に心の中で呟く。
ただ、呆れの感情も大越にあったが、それでも愛川の反応に気持ちが和らぐところもあったのだ。
「それじゃ、あとは狼男を運んでもらうように俺が別の退魔師へ連絡するから。こいつらは解決として、あとはもっちを俺たちが連れて行くか……」
「お、ちょうどいいところに。龍富、お目覚めだとさ」
これからのことを龍富は話すと、大空からもっちが目覚めたと伝えて来た。
もっちは大空の背の上で頭を起こす。
「ん? あれ? 私なんでこんな事を?」
「おや、覚えてないか? 狼男に誘拐されて俺たちが助けたのさ、あっちの王駕くんに感謝しなよ」
もっちは状況を掴めてないと話し、古賀松が説明すると同時に、感謝先の話もする。
大空が姿勢を低くして、もっちは地面に立った。
「おい、俺は感謝されるには微妙なことしかしてないぞ。感謝ならガットの……」
「あなたなのね、王駕くん。ありがとう!」
龍富は感謝されるにふさわしくないとの言葉で断るも、もっちはそれでも龍富に感謝をして、龍富へ向かって歩く。
「俺こそ大したことしてないし、ね?」
「そーそー。感謝はしっかり受けないと失礼だぞー」
対して柄池は代わりに感謝を受けてくれてと話しながら、古賀松も感謝を受けるようににやけながら龍富に言う。
古賀松の内情ははっきり分からないも、柄池は気を使っての行動だろう。
「せっかく助けてもらったからお礼はしないとね」
「いいんだ。例の為にやっているわけじゃないから、気にしなくても」
もっちはお礼をしたいと言うも、龍富は片手を振って拒絶をした。
そんなもっちは次に龍富の振ってない手を片手で握って来る。
「えいっ!」
もっちは龍富の片手を引っ張って、声と共にもっち自身の太ももに触れさせた。
更には龍富の手をもっちの太ももに押しつけるように、もっちは龍富の手を強く引っ張る。
「どう? 私の自慢の足の触り心地は?」
もっちは大胆な行動をしつつ、龍富の目を見つめながら感想を聞く。
龍富は予想出来なかった行動で言葉を失っていたが、少しして口を開く。
「……あ、そう言うのはいい! いいから、いいから!」
感情を整理してない事が言葉でも分かり、龍富はとにかくと言いたげな拒絶をする。
「ふーん……」
拒絶を受けたもっちは龍富の顔を覗き込むと、ふと笑った。
そしてその後に龍富と身体を密着させて自らの片足を龍富の足に絡むように触れさせた。
「こう言うのがいいってこと……?」
さらなる大胆なもっちの行動と言葉に龍富は再び言葉が言えなくなる。
「おーいーねー」
「いーよいーよ! そのままどうぞ!」
大空ももっちの行動に評価しつつ、古賀松は言葉で促進するようにした。
龍富はやっと行動できるようになり、古賀松に顔を向けた。
「おい! 古賀松! なんて事を言うんだよ!」
「ああ、これ王駕くんの照れ隠しなんで、気にせずにねー」
龍富は古賀松に余計な事をするなと言葉をかけるも、古賀松はさらに拗れる
余計な言葉を言った。
「そうなんだー、王駕くんかわいいねー」
「おっ! おい、松! なんて事を言うんだ! そんなに近寄られると……あっ、王駕って呼び名もダメだ!」
もっちは変わらず龍富へのお礼を言葉と共にして、龍富はと言うと脳内で言いたいことと実際の言葉がずれているような話をしていた。
大越は見ていて助けたほうがいいかとも考え始めてしまう。
「龍富くん、顔赤ーい」
「やっちゃえー」
が、大越もその反面、自らの言葉でどんな反応が出るかと気になって、言葉をかけてみたのであった。
八雲もまた本で隠しながら言葉を出す。
その後、龍富は柄池に助けを求めるも助ける必要はないんじゃ? とも言われたが、結局柄池は助けることになって龍富は色気から逃れたのであった。




