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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
六章 体育祭、自覚する気持ち
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百四十四話「体育祭競技決め ジャンケン勝負2」

連日更新五日目!

 仁志と彰のジャンケン。

 彰は仁志の最初にチョキを出す癖を見抜いていて、グーを出したがパーを出されて負けた。

 これまで連勝を続けていた彰が負けたことに場が驚きに沸くが。


「…………どうして……あり得ない………おかしい…………意味が分からない…………」

 その中でも一番困惑していたのは彰だった。

 ここ一番で仁志がチョキを出すのは確定事項のはず。……これまで十何回も使ってきたこの勝利の方程式が、今回に限って崩れた。

 どうして今回は崩れたんだ……? ……十何回も使ってきたこの式の中には、運という項は存在していない。式自体は完璧なはず。ということは、別の不確定因子が紛れ込んだ……?



 どうにか思考を立て直した彰は、まず正面を観察した。

「…………?」

 そしてジャンケンに勝った仁志がガッツポーズを取っていないことに違和感を覚える。

 これまでここぞというときにジャンケンで負け続けた仁志は、負ける度に悔しがっていた。それが今回は勝てたんだから感極まって当然のはずなのに……現在の仁志は何かに感心している様子だ。 


 感心……というか得心? 納得しているって感じだが……。


「まさか……!?」

 ある可能性を思いついた彰は観客を見回す。

 感心…………考えられる可能性の一つは、仁志は誰かにジャンケンのアドバイスを受けていたということだ。アドバイスの通りだったから、仁志は感心している。

 だとしたら、この結果に驚かず当然の結果だと思って見ている奴がいるはず……!



 そして、その人物はすぐに見つかった。



「美佳! おまえが仁志にアドバイスしたんだな!?」

「ご明察ー♪ いやー、本当にうまく行くもんなのね。……彰は、仁志が最初にチョキを出すのを分かってたんでしょ?」

「くっ……!」

 方程式に気づかれている……!!

 確かに美佳なら今まで俺と仁志がジャンケンした姿を何回も見ている。それなら気づいてもおかしくない。そして仁志にパーを出すように言えば、今の状況は理解できる。


 ……はずだが、何か引っかかる。

 最近の美佳は俺と仁志が争っていても、またか、と興味を無くしている様子だった。その美佳が何故今頃になってこの争いに介入してくる?

 いや、待てよ。今の美佳の言葉は伝聞形だった。ということはつまり……。



「そういうことか…………斉藤」

 観客の中にもう一人、驚いていない生徒を見つける。

「何でしょうか彰くん?」

「おまえが仁志にアドバイスしたもう一人だろ?」

「鋭いですね。……ええ、そうです」


「なあ、どういうことだよ斉藤?」

 仁志の勝利に驚いていた観客も、徐々に復帰していた。彰と斉藤のやりとりが理解できずに尋ねる。

「簡単な話です。彰くんが仁志くんにジャンケンで連勝していた。……どうして皆さんはそのことに疑問を抱かなかったのですか? 普通おかしいでしょう? だから僕は彰くんには何らかの必勝法があるのではないかと思った」

「必勝法……?」

「クラスの情報通、美佳さんに話を聞いて、彰くんと仁志くんのジャンケンに何か法則性が無いのかを調べてもらった」

「いやあ、必勝法とかそんなの考えたこと無かったけど、調べてみたらすぐに分かったわ」

 どうやって今までのジャンケンの結果を調べたのかは分からないが、クラスメイトの見解は『美佳ならおかしくない』で一致していた。


「それで彰くんと仁志くんのジャンケンは一度もあいこにならずに、彰くんがグー、仁志君がチョキを出していることが分かりました。

 ……彰くんは仁志くんの癖を見抜いていたのでしょう。ここ一番のジャンケンで緊張しているからかは分かりませんが、とにかく最初はチョキを出す癖があるのだと」

「後は簡単よ。仁志にこれを話して、最初にパーを出すように言った。……それでこの結果ってわけ」


「へえ、そんなことが……」

 どうやらクラスメイトたちは納得したようだ。彰も同様に納得している。

 美佳の情報に、斉藤の頭脳が組合わさった結果ってことか。……確かにこの二人の力が合わされば、勝利の方程式の解明くらいお手のものだろう。



「分かった、分かった俺の負けだ」

 彰は両手を上げるパフォーマンスと共に、潔く負けを認める。

「ふふん、認めたわね」

 得意げな美佳。彰に一泡ふかすことができて満足しているのだろう。


「…………おかしいですね……」

(あの彰くんが素直に負けを認める? そんなことがあるわけないのですが……)

 一方の斉藤は懐疑的だ。

 そして、斉藤の思ったとおりに彰はこう続けるのだった。


「じゃあ、次の勝負に移ろうぜ」


「……え?」

「だって、一回勝負なんて言ってないだろ? こんな重要な勝負なんだから、五回勝負くらいで慎重に決めないと」

 いけしゃあしゃあとのたまう彰。


「……さすがにそれは屁理屈だと思いますけど」

「どうせ自分が勝ったら一回で終わるつもりだったはずなのに」

 彰という人物をよく理解している恵梨と由菜の発言。


「どうした? 構えろ、仁志」

「いや、けど……えっ? えっ?」

 混乱しながらも拳を突き出す仁志に美佳が割って入る。


「出す必要は無いわよ、仁志! あなたの勝ちで終わり! そうに決まっているでしょう!」

「何だ負けるのが怖いのか、仁志?」

「言うに事欠いて、俺が臆病だと……!? そんなわけあるか!! 何回だって勝ってやる!!」

「挑発に乗るなあ!! 冷静になって! ね!」

 必死に美佳が仁志を押し止める。


 何か面白いことになってきたぞ、と観客が再度注目する中、斉藤は冷静に声をかけた。

「ちょっと落ち着いてください、仁志くん、それから美佳さん」

「これが落ち着いてられるか! バカにされたんだぞ!」

「だからどうして、彰のちょっとした挑発にここまで乗せられているの!?」

「落・ち・着・い・て・く・だ・さ・い」

「…………」

「…………」


 今の斉藤……恵梨の暗黒面ダークサイド並みの迫力あったけど……あんな迫力出せる奴がポンポンと居ていいのか?

 斉藤の迫力を向けられていない彰はのんきに考える。



 二人を落ち着けた斉藤は彰の方を向いた。

「彰くんの言っていることは屁理屈です」

「はあ? ちゃんとした論理だろ?」

「……屁理屈ですが、認めましょう。確かに何回勝負か決めてませんでしたからね。彰くんの言うとおり、五回勝負……先に三回勝った方の勝ちでいいです」

「そうか……」

「しかし彰くんの条件を呑む以上、こちらにも要求したいことがあります」

「何回勝負か先に言わなかったのは俺の落ち度だからな。まあ、聞いてやろう」

「それでは……一回のジャンケンが終わる度に、作戦会議をする時間を設けてもいいでしょうか? 連続ですると仁志くんに指示を与える暇がありませんのでね」

「何だ、それくらいならいいぞ」

「ありがとうございます。それと当然ながら、仁志くんが一勝した状態から始めますからね」

「さっきの勝負は有効だってことだな。……当たり前のことだろ」

「当たり前ですけど、うやむやのままだとまた屁理屈をつけられそうですのでね」

 にこやかに毒を吐いた斉藤はそのまま味方の元に戻る。



 美佳と仁志はどうやらさっきの出来事から落ち着いたようだった。

「どうして彰との勝負を引き延ばすの? さっきので勝ちでいいのに」

「俺が騎手でいいじゃねえか」

「……二人はさっきの勝利で満足しているのですか?」

 斉藤の問いかけ。


「確かに彰くんには勝ちました。……しかし、それは不意打ちのようなものです。もっと正面からぶつかって、彰くんを打ち負かしたいとは思いませんか。たぶん彼はそのとき、ものすごく悔しがると思いますよ」

「彰が本気で悔しがる顔……そう言われると、見てみたいわね」

「……いつも彰には迷惑かけられているからな。今までの鬱憤も晴れそうだぜ」

「でしょう? ……大丈夫です。僕の頭脳に、美佳さんの情報があれば絶対勝てます」

「そうよね。……よーし、彰を打ち負かすわよ!!」

「吠え面をかかせてやる!!」


 彰を悔しがらせる。

 この共通目標を元に、仁志、美佳、斉藤の三人は結束した。






「ふう、あぶねえ、あぶねえ」

 彰は屁理屈が通って一安心していた。

 大人げないだとか、そこまで必死になることなのかと言われようが関係ない。俺は絶対に仁志なんかに乗られたくない。そのためなら何だってしてやる。


「どうせ斉藤は俺を正面から叩き潰して、悔しがらせたいんだろうが…………そう上手くいかせるものか。本気を出した俺の実力見せてやろう」

 美佳の情報、斉藤の頭脳、仁志の……仁志の…………とにかく、三人の力が合わさったところで俺にはかなわないことを思い知らせてやる。







「三人で結束……友情。相手の必勝法を研究……努力。そして勝利。……今完全に主人公は仁志さんたちの方ですよね?」

「自分の本気を見せてやろうって、どこのラスボスよ」

「いつもの彰も、屁理屈言う彰も、三人を打倒しようとラスボスみたいな彰、どれも全て良いわね」

 勝負行方を見守る三人の姿があった。

いいところですが、明日更新はちょっと無理そうです。ですが、早めに届けたいと思います。

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