4-27 光は何を照らす
第四章
七賢者編
第二十七話
白い世界に静寂だけが広がっていた。
セレスは俯いたまま動かない。
認識者の言葉が何度も頭の中で響く。
『お前は何も成し遂げていない。』
『お前は英雄ではない。』
否定されている。
能力も。
存在も。
生き方も。
「……そうかもしれない。」
小さく呟く。
今まで自分は戦場の後ろにいた。
作戦を立てる。
情報を集める。
敵を分析する。
前で戦うのはいつもグラムだった。
民を守るのはガイアスだった。
希望を与えるのはアイリスだった。
「私は。」
右手を見る。
「何をしてきたんだろう。」
認識者は静かに答える。
「情報を集めていた。」
「それだけだ。」
「情報では世界は変わらない。」
「世界を変えるのは力だ。」
セレスは何も返さない。
静かに目を閉じる。
思い出す。
塔で戦った時も。
光を剣にした。
光を矢にした。
光を盾にした。
ずっと。
光を武器としてしか使ってこなかった。
「……。」
認識者は歩き始める。
「終わりだ。」
「次で、お前という認識を消す。」
その背中を見送りながら、セレスはもう一度だけ右手を見る。
何も灯らない。
この世界に光は存在しない。
認識者がそう認識している。
だから能力は使えない。
そのはずだった。
それでも。
セレスは小さく違和感を覚える。
「おかしい。」
認識者の足音は聞こえる。
声も聞こえる。
本のページをめくる音も。
全部。
自分へ届いている。
「音。」
小さく呟く。
「情報は届いてる。」
認識者は振り返らない。
「当然だ。」
「認識とは情報だ。」
その一言だった。
セレスの瞳が僅かに開く。
情報。
認識。
光。
頭の中で、今まで繋がらなかった言葉が少しずつ重なり始める。
まだ答えは見えない。
それでも。
何かが引っ掛かった。
セレスはゆっくり立ち上がろうとする。
もちろん立てない。
それでも。
口元だけが少しだけ笑っていた。
「……そういうこと。」
認識者は初めて足を止める。
「何がおかしい。」
セレスは首を横に振る。
「まだ分からない。」
「でも。」
静かに認識者を見つめる。
「あなた。」
「何かを見落としてる。」
認識者は無言で本を開いた。
「なら。」
「次で終わらせよう。」
白い世界に、新たなページが開かれる。




