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英雄狩り 〜世界最強の英雄を倒せば戦争は終わる。そう思っていた〜  作者: Toi
第1章 英雄狩り編

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1-9 親衛隊

第一章


英雄狩り編


第九話


夜の森。


静寂はなかった。


親衛隊長が剣を抜く。


その瞬間だった。


帝国親衛隊二十名が同時に動く。


速い。


普通の騎士団とは比較にならない。


共和国最精鋭ですら一瞬で殺される速度。


だが。


クロードが前へ出た。


巨大な盾を地面へ叩きつける。


轟音。


衝撃。


先頭の三人が吹き飛んだ。


「行け」


クロードが笑う。


「こいつらは俺がやる」


ノアは頷く。


迷わない。


止まらない。


そのまま親衛隊長へ向かう。


リゼが叫ぶ。


「私は!?」


「生きろ」


即答だった。


「雑!」


リゼが頭を抱える。


本当に雑だった。


だが。


慣れている。


今更だった。



親衛隊長が笑う。


「なるほど」


剣を構える。


「だから英雄候補を殺せたのか」


ノアは答えない。


間合いへ入る。


親衛隊長も笑みを消した。


速い。


異常なほど。


次の瞬間。


金属音。


剣と短剣がぶつかる。


火花。


二人が同時に離れる。


親衛隊長の目が細くなる。


「強いな」


ノアは答えない。


再び踏み込む。


今度は親衛隊長が押した。


連撃。


速い。


重い。


正確。


グラムほどではない。


だが。


強い。


間違いなく。


ノアは避ける。


流す。


捌く。


そして。


思う。


グラムほどじゃない。


その瞬間。


親衛隊長の顔が歪んだ。


「余所見か!」


斬撃。


ノアが飛ぶ。


肩が裂けた。


血。


親衛隊長が笑う。


「なるほど」


「英雄と比べているのか」


ノアは立ち上がる。


肩を押さえる。


そして。


初めて言った。


「弱いな」


静寂。


親衛隊長の笑みが消えた。



一方。


クロード。


完全に楽しんでいた。


親衛隊十数名を相手に。


笑っている。


「いいな!」


盾を振る。


一人吹き飛ぶ。


二人目。


三人目。


木が折れる。


人が飛ぶ。


滅茶苦茶だった。


だが。


押されている。


数が多い。


それでも笑う。


本当に楽しそうだった。



リゼは木の上にいた。


息を殺す。


資料を抱える。


戦えない。


だから見る。


そして覚える。


それが仕事だった。


「本当に頭おかしい」


誰も聞いていない。



親衛隊長が剣を構える。


ノアを見る。


「理解した」


低い声。


「お前は強い」


「だが」


「英雄じゃない」


ノアは答えない。


親衛隊長は続ける。


「だから負ける」


次の瞬間。


突撃。


今までで最速。


ノアの目が細くなる。


速い。


グラムほどじゃない。


だが。


速い。


剣が迫る。


首。


心臓。


喉。


全部狙っている。


親衛隊長も本気だった。


ノアは避ける。


だが。


完全には避けきれない。


腕。


腹。


脚。


傷が増える。


親衛隊長が笑う。


勝った。


そう思った。


その時だった。


ノアが前へ出る。


初めてだった。


避けるだけじゃない。


踏み込んだ。


親衛隊長の目が見開かれる。


近い。


近過ぎる。


剣の間合いじゃない。


短剣の間合い。


そして。


ノアが言う。


「だから勝てる」


親衛隊長の視界が回転した。


何が起きたか分からない。


ただ。


首が落ちていた。


静寂。


親衛隊が止まる。


隊長が死んだ。


帝国最強の一角。


それが。


一瞬で。


ノアは血を払う。


そして。


遠くを見る。


帝国軍本陣の方角。


グラムがいる場所。


「お前なら」


小さく呟く。


「今ので死なん」


その言葉に。


クロードが笑った。


「惚れたのか?」


ノアは真顔だった。


「違う」


「じゃあ何だ」


数秒。


沈黙。


そして。


「まだ届かない」


クロードの笑みが消える。


ノアが認めた。


世界最強との差を。


初めて。


その夜。


帝国親衛隊は壊滅した。


だが。


ノアは勝った気がしなかった。


本当に倒すべき相手は。


まだ剣すら交えていないのだから。

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