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英雄狩り 〜世界最強の英雄を倒せば戦争は終わる。そう思っていた〜  作者: Toi
第1章 英雄狩り編

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1-8 敗北!?

第一章


英雄狩り編


第八話


グラムが去った翌日。


帝国軍は動いた。


正確には。


動かされた。


「第四補給路が襲撃されました!」


「第五拠点もです!」


「輸送隊との連絡が途絶えました!」


帝国本陣は混乱していた。


副官達が走る。


伝令が飛び交う。


怒号が響く。


だが。


グラムだけは静かだった。


「やはりな」


地図を見る。


補給路。


輸送拠点。


物資集積所。


赤い印が増えている。


ノア。


あの男は最初から自分を見ていなかった。


帝国軍を見ていた。


もっと言えば。


戦争を見ていた。


グラムは椅子へ座る。


そして。


初めて。


敗北を考えた。


戦場では勝っている。


だが。


戦争では。


負けるかもしれない。


その事実に。


不思議と怒りは湧かなかった。


むしろ。


少しだけ嬉しかった。


「面白いな」


副官が顔を上げる。


「何がですか」


グラムは笑った。


「戦争だ」



同じ頃。


共和国。


ノア達は移動していた。


山道。


夜。


クロードが荷車を押している。


リゼが資料を読んでいる。


そして。


ノアは空を見ていた。


「何考えてるんです?」


リゼが聞く。


「グラムだ」


即答だった。


リゼがため息を吐く。


「好きですね」


「嫌いだ」


「じゃあ何です?」


ノアは少し考えた。


「分からん」


本音だった。


グラムは英雄候補とは比較にもならない。


強い。


圧倒的に。


そして。


戦争を理解している。


そこが厄介だった。


リゼが資料を閉じる。


「でも」


「何だ」


「勝ってるんですよね?」


ノアは頷く。


「勝っている」


「なら問題ないじゃないですか」


ノアは答えない。


数秒。


沈黙。


そして。


「そうでもない」


リゼが眉をひそめた。


初めてだった。


ノアが自信なさそうな顔をしたのは。


「何がです?」


「グラムが動き始めた」


クロードが笑う。


「今更か」


「違う」


ノアは首を振る。


「今までは英雄だった」


「これからは指揮官になる」


静寂。


クロードの笑みが消えた。


それは。


確かに厄介だった。



その夜。


帝国軍本陣。


グラムは地図を見ていた。


補給路。


輸送網。


共和国軍配置。


全部。


「見つけた」


副官が顔を上げる。


グラムは笑う。


「ノアは補給を狙っているんじゃない」


「は?」


「俺を狙っている」


静寂。


副官は意味が分からない。


グラムは続ける。


「補給を潰せば俺が出る」


「俺が出れば前線が止まる」


「前線が止まれば帝国軍が鈍る」


そして。


笑う。


「最初から俺を戦場から引き剥がしたかったんだ」


副官の顔色が変わる。


確かに。


全部繋がる。


全部。


ノア中心で考えると。


グラムは立ち上がった。


剣を持つ。


「どちらが先か」


「グラム様?」


「俺がノアを捕まえるか」


月明かりが差し込む。


焔帝は笑う。


戦争を楽しむように。


「ノアが帝国を止めるか」



一方。


共和国側。


ノア達は山を越えていた。


その時だった。


クロードが足を止める。


「どうした」


ノアが聞く。


クロードは前を見る。


森の入口。


一人の男が立っていた。


見覚えがある。


帝国軍の鎧。


そして。


英雄直属部隊の紋章。


親衛隊。


男は笑った。


「ようやく見つけた」


周囲から気配が現れる。


一人。


二人。


三人。


十人。


二十人。


全員が強い。


兵士ではない。


英雄直属。


帝国最強の部隊。


リゼが顔を青くする。


「最悪ですね」


クロードは盾を構える。


「そうでもない」


笑う。


久しぶりだった。


強敵との戦い。


ノアは親衛隊長を見る。


そして。


静かに聞いた。


「グラムは」


親衛隊長が笑う。


「来ない」


その答えに。


ノアも少しだけ笑った。


「そうか」


グラムは来ない。


つまり。


試されている。


英雄狩りの価値を。


その夜。


帝国最強の親衛隊と。


ノア達の戦いが始まった。

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