↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄狩り 〜最初の獲物を狩った日、世界は俺を敵にした〜  作者: Toi
第4章 七賢者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/143

4-9 それでも

第四章


七賢者編


第九話


夜空は静まり返っていた。


グラムは立っている。全身は傷だらけで、炎も弱まり、呼吸も乱れていた。それでも視線だけは、記録者から一度も外さない。


「来ないのか。」


記録者が静かに問う。


いつもなら答えるより先に殴っている。


だが今回は違った。


グラムは拳を下ろしたまま、記録者だけを見つめている。


長い沈黙。


先に動いたのは記録者だった。


半歩。


その瞬間、グラムは炎を噴き上げる。しかし狙ったのは拳ではない。記録者の攻撃を避けることだった。


轟音。


拳が空を切る。


グラムは初めて真正面から受けず、最小限の動きで横へ流した。


「ほう。」


記録者が僅かに目を細める。


グラムは距離を取ったまま、何も仕掛けない。ただ呼吸を整え、記録者の動きを観察していた。


「攻めないのか。」


「違う。」


短く答える。


「見てる。」


その一言で空気が変わった。


再び記録者が踏み込む。


今度は初代の怪力。


グラムは受け止めず、衝撃を逃がすように身体を回転させる。吹き飛ばされはしたが、さっきまでのような致命傷にはならない。


立ち上がる。


笑う。


「全部勝とうとしてた。」


血を拭いながら呟く。


「でも違う。」


拳を握る。


「一個ずつ越えればいい。」


今度は自分から踏み込む。


狙いは顔でも腹でもない。


右足。


しかし二代目の速度で避けられる。


追わない。


すぐに距離を切る。


また見る。


また考える。


記録者は静かに本を閉じた。


「変わったな。」


「やっと、お前を見始めた。」


グラムは静かに笑う。


「今まで見てたのは、自分の強さだった。」


「でも今は違う。」


「勝つために、お前を見てる。」


その言葉に、記録者は初めて僅かに沈黙した。


歴代の英雄は皆、自分の力を信じて戦った。


だが六代目だけは違う。


戦いながら、自分を変えている。


本に記された六代目焔帝。


その記録は、もう目の前の男と一致していなかった。


「……なるほど。」


記録者は静かに呟く。


「これがお前か。」


夜風が吹く。


グラムはゆっくり拳を握る。


まだ勝てない。


だが。


もう負けてもいない。


記録者は静かに構えを取り直した。


「ならば。」


小さく息を吐く。


「次で終わらせよう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。