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英雄狩り 〜最初の獲物を狩った日、世界は俺を敵にした〜  作者: Toi
第4章 七賢者編

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4-8 無力

第四章


七賢者編


第八話


夜空を轟音が駆け抜ける。


グラムは何度吹き飛ばされても立ち上がり、そのたびに記録者へ拳を振るった。しかし結果は変わらない。速さで届けば怪力で押し返され、力で押せば技で崩される。距離を取れば黄金の炎が追い付き、近付けば最小限の動きだけで致命打を叩き込まれた。


「……チッ。」


初めて舌打ちが漏れる。


今までなら、どんな相手にも必ず突破口があった。


速ければ、それ以上に踏み込む。


硬ければ、それ以上に燃やす。


強ければ、それ以上に殴る。


だが目の前の相手には、それが通じない。


一つ超えれば、別の英雄が立ちはだかる。


「どうした。」


記録者が静かに言う。


「終わりか。」


返事はない。


グラムは拳を握り直し、再び踏み込んだ。


今度は真正面ではない。


左へ回る。


瞬間、記録者も同じ速度で回る。


上から叩く。


怪力で迎え撃たれる。


距離を離す。


黄金の炎が夜空を焼きながら追い付く。


何を選んでも。


答えが用意されていた。


轟音。


再び拳が腹へ沈む。


グラムは地面へ叩き付けられ、その衝撃で山肌が大きく崩れた。



地下神殿。


ガイアスは空を見上げていた。


「……押されてる。」


誰よりもグラムを知る男だから分かる。


あいつが笑わない。


それだけで異常だった。


選定者は静かに呟く。


「英雄の歴史に、一人では勝てない。」



夜空。


グラムは瓦礫を押し退け、ゆっくり立ち上がる。


肩で息をする。


炎も少しずつ弱くなっていた。


それでも視線だけは逸らさない。


記録者は本を閉じる。


「六代目。」


「何だ。」


「お前は強い。」


「知ってる。」


「だが。」


長い沈黙。


「お前は一人だ。」


その言葉が胸へ刺さる。


記録者は静かに拳を下ろした。


「私は違う。」


「英雄の歴史、その全てが私にある。」


夜空が震える。


初代の力。


二代目の速度。


三代目の技。


五代目の精神。


六代目の炎。


どれも欠けていない。


完成された歴史。


その前で。


グラムは初めて笑わなかった。


ただ静かに拳を握り締める。


負ける。


そんな言葉は口にしない。


だが。


勝ち方も見えない。


夜空へ吹く風だけが静かだった。

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