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英雄狩り 〜最初の獲物を狩った日、世界は俺を敵にした〜  作者: Toi
第4章 七賢者編

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74/140

4-5 執念

第四章


七賢者編


第五話


夜風が静かに吹き抜ける。


グラムは岩壁から身体を起こし、口元の血を乱暴に拭った。全身は傷だらけだったが、その目だけは少しも曇っていない。


「終わりか。」


記録者が静かに問う。


「まだ始まったばかりだ。」


短く返すと、グラムは再び踏み込んだ。


拳が唸る。


炎が弾ける。


蹴りから肘へ、肘から頭突きへ。攻撃の繋ぎを変えながら、休む間もなく畳み掛ける。


だが、結果は変わらない。


どれだけ叩き込んでも記録者は揺るがず、返ってくる一撃だけが確実にグラムを削っていく。


轟音。


腹へ拳がめり込み、再び地面へ叩き落とされる。


それでも、すぐに立ち上がった。


「しつこいな。」


記録者が初めて感想を漏らす。


「よく言われる。」


グラムは笑うでもなく答え、肩を鳴らした。



地下神殿では、ガイアスが選定者へ何度目かの拳を叩き込んでいた。


届かない。


未来を選ばれるたび、拳は僅かに逸れる。


「だったら、その未来ごと砕く。」


豪快に笑って踏み込む姿に、選定者は初めて視線を細めた。



夜空へ戻る。


記録者は本を閉じ、静かにグラムを見つめる。


「六代目。」


「何だ。」


「お前は歴代で最も変化が激しい。」


グラムは首を傾げた。


「知らねぇな。」


「俺は毎日、自分より強い俺になろうとしてるだけだ。」


その一言に、記録者の瞳が僅かに揺れる。


本へ目を落とす。


書き記したはずの六代目焔帝。


だが、そこに記された姿と、今目の前に立つ男は、もう微妙に違っていた。


「……記録が古い。」


誰にも聞こえないほど小さな呟き。


記録者は静かに本を開く。


頁をめくる。


一枚。


また一枚。


夜風が止まる。


グラムは本能で悟った。


まだ終わっていない。


記録者はゆっくりと右手を掲げる。


その腕に。


黄金の炎が灯った。

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