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英雄狩り 〜最初の獲物を狩った日、世界は俺を敵にした〜  作者: Toi
第4章 七賢者編

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4-3 耐性

第四章


七賢者編


第三話


夜空を黄金の炎が染める。


グラムは迷わず踏み込んだ。拳、蹴り、肘、炎――英雄らしい豪快な連撃が途切れることなく記録者へ叩き込まれる。爆発の余波だけで雲は吹き飛び、遥か下の山々が崩れ落ちた。


「終わりだ!」


炎が弾ける。


普通なら跡形も残らない。


しかし、爆煙が晴れると、記録者は静かに立っていた。


焼けた腕を一瞥し、小さく頷く。


「記録した。」


その瞬間、焼け焦げた皮膚がゆっくりと元へ戻っていく。血も傷も、まるで最初から存在しなかったように消えていった。


グラムは眉をひそめる。


「……治癒か?」


返事はない。


考えるより先に身体が動く。


「なら、治る前に叩き潰す!」


轟音。


再び拳が突き刺さる。


確かな手応え。


しかし次の瞬間、グラムの表情が止まった。


拳は届いている。


炎も燃えている。


それなのに、何も効いていない。


記録者は一歩も動かず、静かに拳を振るった。


鈍い衝撃。


グラムの身体が夜空を一直線に吹き飛び、山脈をいくつも砕きながら地平線の彼方まで転がっていく。


瓦礫を押し退け、すぐに立ち上がる。


「ハッ……!」


口元の血を拭い、もう一度飛び出した。


今度は拳ではない。


炎の斬撃。


回し蹴り。


体当たり。


距離も角度も変えながら攻め続ける。


それでも結果は変わらなかった。


当たる。


効かない。


反撃を受ける。


吹き飛ばされる。


それを何度も繰り返す。


夜空には爆発だけが響き続けた。



地下神殿では、ガイアスの拳が選定者へ届く寸前で止まり、アイリスの剣は監察者に紙一重でかわされていた。


どの戦場でも、英雄達が押されている。


七賢者は誰一人、焦っていなかった。



再び夜空。


息を切らしたグラムは、記録者を真っ直ぐ見据えていた。


「何なんだよ、お前。」


記録者は静かに本を閉じる。


「耐性。」


ただ一言。


能力の説明はない。


理由も語らない。


その言葉だけが夜風に溶けた。


グラムは拳を握る。


今まで戦ってきた敵とは違う。


強いから勝てないのではない。


勝ち方そのものが見えない。


それでも炎は消えなかった。


「……面白ぇ。」


その笑みを見た記録者は、初めて僅かに目を細める。


歴代の英雄達も、同じように笑っていた。


だが、その笑みはいつも長くは続かなかった。

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