3-8 七賢者
第三章
オラクル編
第八話
静寂。
七つの席。
七つの人影。
誰も動かない。
誰も喋らない。
ただ。
そこに座っているだけ。
それだけなのに。
会議場の空気が変わっていた。
重い。
息苦しい。
まるで。
世界そのものが見下ろしているような圧迫感。
ガイアスですら笑わない。
アイリスも。
バルドも。
セレスも。
本能で理解していた。
目の前の存在は。
英雄とは違う。
⸻
執行者が口を開く。
「改めて紹介しよう」
静かな声。
七つの席を見渡す。
そして。
英雄達を見る。
「我々がオラクルだ」
静寂。
誰も喋らない。
執行者は続ける。
「人は我々を」
間。
「七賢者と呼ぶ」
その言葉だけが響く。
名前は語られない。
何者なのかも。
どれほど強いのかも。
何も。
ただ。
執行者と同格の存在が。
あと六人いる。
それだけだった。
グラムが前へ出る。
低く笑う。
「なるほどな」
静寂。
「ようやく分かった」
執行者を見る。
真っ直ぐに。
「最初から止める気だったんだな」
執行者は否定しない。
沈黙。
それが答えだった。
ガイアスが肩を鳴らす。
「回りくどい真似しやがって」
豪快な声。
「最初からそう言え」
誰も笑わない。
七賢者も。
英雄達も。
今はもう。
冗談を言う空気ではなかった。
執行者が言う。
「試験は終わった」
静寂。
グラムの目が細くなる。
「試験だと?」
「そうだ」
静かな声。
「確認した」
執行者は続ける。
「お前達は変わらない」
会議場が静まる。
「初代と同じ」
「二代目と同じ」
「五代目と同じ」
静寂。
「最後まで人を選ぶ」
グラムが笑う。
「当たり前だ」
即答だった。
迷いはない。
執行者は小さく頷く。
「そうだな」
静かな声。
「だからお前達は英雄だ」
会議場が静まる。
初めてだった。
執行者が。
英雄を認めるような言葉を口にしたのは。
だが。
続く言葉は冷たかった。
「だから終焉を止められない」
静寂。
空気が凍る。
ガイアスの拳が鳴る。
アイリスの周囲の温度が下がる。
セレスが息を呑む。
バルドも黙る。
グラムだけが笑っていた。
怒りで。
「その結論を出すために」
低い声。
「俺達を呼んだのか」
執行者は答える。
「違う」
静寂。
「確認するためだ」
「何を」
執行者はグラムを見る。
真っ直ぐに。
逃げることなく。
そして言った。
「英雄が」
静寂。
「本当に英雄のままかを」
会議場が静まる。
誰も喋らない。
執行者は続ける。
「答えは出た」
静かな声。
「お前達は変わらない」
⸻
グラムが一歩前へ出る。
炎が揺れる。
「だから何だ」
執行者も立ち上がる。
七つの席の中央。
静かに。
ゆっくりと。
「だから」
静寂。
「アルメリアへは行かせない」
その瞬間。
轟音。
グラムの炎が吹き上がる。
会議場が揺れる。
ガイアスが笑う。
久しぶりに。
本気で。
「面白ぇ」
アイリスが立ち上がる。
「交渉決裂ね」
セレスも前へ出る。
バルドは目を閉じる。
そして。
小さく息を吐いた。
英雄。
賢者。
⸻
二つの思想は。
もう交わらない。
そして。
七賢者の一人が。
ゆっくりと席から立ち上がった。
静寂。
名前は分からない。
何者なのかも分からない。
だが。
その瞬間。
会議場の空気が変わる。
グラムが笑った。
炎を纏いながら。
「いいぞ」
低い声。
「誰からだ?」




