3-4 第三の終焉
第三章
オラクル編
第四話
静寂。
地下神殿に沈黙が落ちる。
執行者は世界地図の前に立っていた。
青白く光る巨大な地図。
その上には二つの赤い光。
ベルグ。
リュシア。
消滅した都市。
執行者が口を開く。
「終焉による都市消失は現在二件」
静かな声。
「ベルグ」
「リュシア」
地図が光る。
二つの都市が赤く染まる。
ガイアスが腕を組む。
「それで」
豪快な声。
「次があるって話か」
執行者は頷く。
世界地図の一角が赤く染まる。
会議場が静まる。
三つ目。
まだ消えていない。
だが。
確実に赤く染まり始めていた。
執行者が言う。
「第三の終焉だ」
静寂。
セレスが立ち上がる。
「場所は」
「沿岸交易都市アルメリア」
地図が拡大される。
港湾都市。
人口約四十万。
五大国の交易中継地。
もし消えれば。
経済も物流も大打撃を受ける。
だが。
グラムが気にしたのはそこではなかった。
「いつだ」
「三日後」
即答だった。
会議場が静まる。
ガイアスが笑う。
「なら簡単だ」
立ち上がる。
巨大な体が揺れる。
「止めればいい」
アイリスも立ち上がる。
「住民避難が先ね」
バルドも頷く。
「共和国も協力しよう」
セレスが言う。
「時間は十分あります」
誰も迷わない。
当たり前だった。
英雄だから。
人を守る。
そのために存在する。
執行者は黙っている。
ただ。
見ている。
グラムを見る。
アイリスを見る。
ガイアスを見る。
バルドを見る。
セレスを見る。
静寂。
グラムが違和感を覚えた。
「何だ」
執行者を見る。
「何がだ」
「お前だ」
低い声。
「反対しないのか」
会議場が静まる。
執行者は答えない。
代わりに聞いた。
「救うのか」
静かな声。
ガイアスが笑う。
「当たり前だろ」
アイリスも言う。
「聞くまでもないわ」
バルドも頷く。
セレスも。
グラムも。
答えは同じだった。
執行者は小さく目を閉じる。
そして。
再び開いた。
「そうか」
静かな声。
感情はない。
だが。
どこか納得したような。
そんな声だった。
ノアだけが違和感を覚える。
執行者は喜んでいない。
安心もしていない。
まるで。
予想通りだったような。
そんな反応。
ガイアスが眉をひそめる。
「何だその顔は」
執行者は答えない。
静寂。
そして。
初めて聞いた。
英雄達へ。
「仮に」
会議場が静まる。
「その都市を救うことで」
世界地図が光る。
アルメリア。
その周囲。
さらに広範囲が赤く染まる。
静寂。
「世界が滅ぶとしても」
誰も喋らない。
執行者の目が英雄達を見る。
一人ずつ。
「それでも救うのか」
会議場の空気が変わる。
ガイアスの笑みが消える。
アイリスの目が細くなる。
バルドも黙る。
セレスが眉をひそめる。
グラムだけは動じない。
「救う」
即答だった。
静寂。
執行者を見る。
真っ直ぐに。
「そんな未来なら」
低い声。
「俺がぶっ壊す」
ガイアスが笑った。
「ははは!」
豪快な笑い声。
「それでこそ焔帝だ!」
アイリスは呆れたように息を吐く。
「馬鹿達ね」
だが。
否定しない。
バルドも小さく笑う。
セレスも笑っていた。
執行者だけが黙っている。
長く。
長く。
そして。
小さく呟いた。
「やはりそうか」
誰にも聞こえないほど小さく。
だが。
ノアだけは聞いていた。
静寂。
執行者は世界地図へ向き直る。
そして言った。
「なら続けよう」
会議場の誰も気付いていない。
この瞬間。
英雄達が。
何かを試されていることに。




