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英雄狩り 〜世界最強の英雄を倒せば戦争は終わる。そう思っていた〜  作者: Toi
第2章 焔帝編

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2-18 観測の間

第二章


焔帝編


第十八話


第三階層へ続く階段は異様だった。


今までと違う。


静か過ぎる。


第一階層では試練があった。


第二階層では死者の気配があった。


だが。


ここには何もない。


音すら。


存在しない。


グラムが珍しく口数を減らしていた。


セレスも黙っている。


案内人ですら笑っていない。


そして。


執行者は先頭を歩いていた。


誰も追い越せない。


そんな空気があった。


やがて。


階段が終わる。


巨大な扉。


今までで最も大きい。


塔そのものを塞ぐほどの。


執行者が手を伸ばす。


扉が開く。


轟音。


そして。


全員が足を止めた。


そこには。


何もなかった。


本当に。


何も。


床だけ。


壁もない。


天井もない。


空もない。


果てしない白。


無限に続く空間。


世界そのものが消えたみたいだった。


グラムが眉をひそめる。


「何だここは」


返事はない。


執行者だけが前へ進む。


やがて止まる。


そして振り返る。


「第三階層」


静かな声。


「観測の間」


ノアの目が細くなる。


観測。


その言葉に何か引っ掛かった。


執行者はノアを見る。


真っ直ぐ。


初めて。


はっきりと。


「ここから先はお前の領域だ」


静寂。


グラムが振り返る。


セレスも。


ノア自身も。


意味が分からない。


執行者は続ける。


「境界」


その瞬間。


空間が揺れた。


ノアの胸が熱くなる。


初めてだった。


誰かが。


能力名を口にしたのは。


「何故知っている」


ノアが聞く。


執行者は答えない。


代わりに。


指を鳴らした。


世界が変わる。


白い空間が崩れる。


景色が生まれる。


帝国。


共和国。


神聖国。


五大国。


海。


山。


都市。


空。


世界そのもの。


巨大な球体として。


全員の前へ現れた。


グラムが息を呑む。


セレスも。


これは地図じゃない。


世界そのものだ。


執行者が静かに言う。


「何に見える」


グラムが答える。


「世界だ」


セレスも頷く。


だが。


執行者は首を振った。


そして。


ノアを見る。


「お前は」


静寂。


ノアは世界を見る。


じっと。


ずっと。


その時だった。


見えた。


違和感。


一本の線。


世界を覆う無数の線。


人から人へ。


国から国へ。


空へ。


地面へ。


世界そのものへ。


繋がっている。


まるで。


巨大な網。


ノアの瞳が見開かれる。


「これは」


執行者が頷く。


初めてだった。


少しだけ満足そうな顔をしたのは。


「見えるか」


静かな声。


「世界の法則が」


グラムが振り返る。


セレスも。


案内人も。


何も見えていない。


だが。


ノアだけは見えている。


無数の線。


世界を支える何か。


その一本一本が。


英雄達へも繋がっていた。


グラムへ。


セレスへ。


そして。


執行者へ。


ノアの鼓動が速くなる。


理解してしまった。


英雄能力。


奇跡。


神話。


全部。


別々じゃない。


同じものだ。


世界の法則から生まれている。


執行者が言う。


「境界とは」


静かな声。


「境目を見る力だ」


世界が揺れる。


「人と人」


「国と国」


「真実と嘘」


「生と死」


そして。


執行者はノアを見つめた。


「法則と法則の境界」


ノアは動けなかった。


今まで見ていたもの。


違和感。


本質。


能力の流れ。


全部繋がる。


これは。


無効化じゃない。


もっと根源的な力だ。


執行者が続ける。


「だからお前は選ばれた」


静寂。


選定者の言葉が蘇る。


境界を見る者。


久しぶりだ。


偶然じゃない。


最初から。


ここへ来ることが決まっていた。


その時だった。


世界模型の一部が黒く染まる。


共和国。


帝国。


神聖国。


その全てに。


黒い染みが広がる。


セレスが息を呑む。


グラムが剣へ手を掛ける。


執行者だけは静かだった。


「始まった」


その声に。


初めて緊張が混じる。


ノアが聞く。


「何がだ」


執行者は世界を見る。


黒く侵食されていく世界を。


そして。


静かに告げた。


「世界の終わりだ」


誰も言葉を発せなかった。

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