2-14 お前達は何だ
第二章
焔帝編
第十四話
神聖な光が爆発した。
轟音。
地面が吹き飛ぶ。
グラムが即座に前へ出る。
焔圧。
圧縮。
増幅。
解放。
全身を強化。
衝撃波を正面から受け止める。
だが。
押される。
グラムの足が数メートル滑った。
ノアの目が細くなる。
あり得ない。
世界最強が。
正面から押されている。
「セレス!」
グラムが叫ぶ。
返事はない。
聖女セレスは無表情だった。
瞳も動かない。
ただ。
こちらを見ている。
まるで人形だった。
そして。
右手を上げる。
光が集まる。
空間全体が震え始める。
ノアが直感する。
危険だ。
今まで見たどんな攻撃よりも。
「避けろ!」
叫ぶ。
次の瞬間。
光が降った。
空から。
数百。
数千。
光の槍。
大地を埋め尽くす。
轟音。
爆発。
墓場が吹き飛ぶ。
骸が砕ける。
大地が裂ける。
まるで天罰だった。
グラムが笑う。
「相変わらず加減を知らんな!」
そう言いながら突っ込む。
一直線。
最短距離。
光の雨を強引に突破する。
一発。
二発。
三発。
光槍が身体を貫く。
だが止まらない。
焔圧で再生を加速。
無理やり前へ進む。
セレスへ。
ただ一直線に。
ノアはその背中を見る。
馬鹿だ。
本当に。
だが。
だからグラムなんだろう。
その時だった。
巨大な騎士が動く。
黒鎧の巨人。
六メートルの怪物。
セレスの前へ立つ。
剣を振るう。
轟音。
グラムが弾き飛ばされる。
数十メートル。
地面を転がる。
初めてだった。
純粋な力でグラムが吹き飛ばされたのは。
「何だお前」
グラムが立ち上がる。
笑っていた。
本当に楽しそうに。
黒騎士は答えない。
剣を構える。
その姿に。
ノアは違和感を覚える。
どこかで見た。
この構え。
この立ち方。
この剣筋。
どこかで。
その時だった。
執行者の声が響く。
「第二階層」
静かな声。
「守る者」
「救う者」
「壊す者」
風が吹く。
執行者は続ける。
「お前達は何だ」
静寂。
意味が分からない。
だが。
ノアは思う。
第一階層は自分自身。
なら。
第二階層は違う。
何を選ぶか。
何のために戦うか。
それを見ている。
その時。
セレスが動いた。
初めて。
感情のない瞳で。
真っ直ぐグラムを見る。
そして。
小さく呟いた。
「守れない」
グラムが固まる。
「何?」
セレスの表情は変わらない。
だが。
もう一度言った。
「誰も」
静寂。
グラムの顔から笑みが消える。
ノアも気付く。
これは。
洗脳じゃない。
もっと違う。
もっと根深い何か。
セレス自身が揺らいでいる。
その瞬間。
セレスの周囲に光が集まる。
今までとは比べ物にならない。
塔全体が震える。
黒騎士が一歩前へ出る。
案内人ですら表情を変えた。
「まずいですね」
初めてだった。
こいつが焦ったのは。
グラムが叫ぶ。
「何だ!」
案内人が答える。
「聖女様が壊れます」
静寂。
光が暴走する。
天井。
大地。
空間。
全てが白く染まり始める。
ノアの背筋が凍る。
もし解放されれば。
第二階層そのものが消し飛ぶ。
そして。
セレスも。
グラムは剣を握る。
迷いなく。
真っ直ぐ。
聖女へ向かって。
走り出した。




