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2-13 本当の試練

第二章


焔帝編


第十三話


階段は長かった。


どこまでも。


どこまでも。


終わりが見えない。


グラムは途中で数えるのをやめた。


「絶対嫌がらせだろ」


愚痴る。


ノアは無視した。


案内人は相変わらず笑っている。


息一つ乱れていない。


それが腹立たしかった。


やがて。


階段が終わる。


巨大な扉。


第一階層より大きい。


塔そのものを塞ぐほど。


グラムが押す。


重い音と共に扉が開いた。


そして。


三人は言葉を失った。


そこは戦場だった。


いや。


正確には違う。


戦場の墓場だった。


無数の武器。


無数の鎧。


無数の骸。


果てが見えない。


地平線の向こうまで。


死者で埋め尽くされている。


静寂。


風だけが吹いていた。


ノアが呟く。


「何だここは」


案内人が答える。


「第二階層です」


「そういう意味じゃない」


グラムが突っ込む。


案内人は少し考えた。


そして。


静かに言った。


「敗者の墓場です」


空気が変わる。


ノアが見る。


案内人は笑っていない。


初めてだった。


「選定に敗れた者達」


「ここで終わった者達」


風が吹く。


骸骨達が揺れる。


その数。


数万では済まない。


数十万。


いや。


もっとだ。


グラムが眉をひそめる。


「冗談だろ」


「冗談なら良かったのですが」


案内人は答えた。


その声に。


少しだけ寂しさが混じっていた。



その時だった。


地面が揺れる。


ノアの目が細くなる。


気配。


強い。


第一階層とは比べ物にならない。


グラムも剣へ手を伸ばす。


骸の海が割れた。


ゆっくりと。


何かが立ち上がる。


巨大だった。


五メートル。


いや。


六メートル近い。


全身を黒い鎧で覆っている。


顔は見えない。


大剣を背負っていた。


異様な圧迫感。


存在しているだけで空気が重い。


グラムが笑う。


久しぶりに。


本当に楽しそうに。


「ようやくか」


巨大な騎士が剣を抜く。


轟音。


地面が割れる。


ノアも構える。


だが。


案内人が首を振った。


「違います」


グラムが振り返る。


「何がだ」


「戦う相手ではありません」


静寂。


騎士が歩き出す。


一歩。


また一歩。


こちらへ向かってくる。


だが。


敵意がない。


殺気もない。


ただ。


歩いている。


やがて。


三人の前で止まった。


そして。


片膝をつく。


グラムが固まる。


ノアも。


案内人だけが平然としていた。


騎士は頭を垂れる。


まるで。


主へ忠誠を誓うように。


その時だった。


上空から声が響く。


執行者だった。


「第二階層」


静かな声。


感情はない。


「突破条件は一つ」


騎士が立ち上がる。


巨大な剣を構える。


そして。


執行者が告げる。


「守れ」


静寂。


グラムが眉をひそめる。


「何をだ」


返事はない。


代わりに。


空が割れた。


黒い裂け目。


空間そのものが裂ける。


そこから。


何かが落ちてくる。


人だった。


白銀の髪。


白い法衣。


見覚えがある。


グラムの顔色が変わる。


ノアも目を見開く。


落ちてきた人物は。


ゆっくりと地面へ着地した。


そして。


こちらを見た。


「……セレス?」


聖女セレスだった。


生きていた。


確かに。


だが。


どこかおかしい。


表情がない。


感情がない。


瞳から光が消えている。


グラムが一歩前へ出る。


「セレス!」


返事はない。


セレスは三人を見る。


そして。


静かに口を開いた。


「排除します」


その瞬間。


神聖な光が爆発した。


グラムの笑みが消える。


ノアが短剣を抜く。


そして。


執行者の声だけが響く。


「守れ」


第二階層の本当の試練が。


始まった。

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