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2-11 第一階層

第二章


焔帝編


第十一話


巨大な扉が閉じた。


轟音が塔全体へ響く。


静寂。


誰も動かない。


グラムが最初に口を開いた。


「感じるか」


ノアは頷く。


感じる。


嫌というほど。


塔の中から。


無数の気配を。


強者。


弱者。


人間。


人間ではない何か。


全部混ざっている。


異常だった。


まるで世界中の怪物を一箇所へ閉じ込めたような空気。


「帰るか?」


グラムが聞く。


ノアは即答した。


「帰らん」


「だろうな」


グラムは笑う。


そして。


扉へ手を掛けた。


押す。


重い。


だが開く。


ゆっくりと。


暗闇が広がる。


塔の内部だった。


外から見た巨大さとは違う。


中は広かった。


広すぎた。


一つの都市が丸ごと入るほどに。


天井は見えない。


壁も見えない。


果てがない。


異様な空間だった。


「塔というより世界だな」


グラムが呟く。


ノアも同意だった。


これは建物じゃない。


別世界だ。


その時。


声が響いた。


どこからともなく。


男でも女でもない。


感情のない声。


「第一階層」


静寂。


「試練を開始します」


グラムが眉をひそめる。


「嫌いだなこういうの」


誰も返事をしない。


声は続く。


「階層突破条件」


「自らの敵を越えること」


ノアの目が細くなる。


意味が分からない。


だが。


直後。


世界が揺れた。


空間が歪む。


視界が白く染まる。


そして。


目の前に人影が現れた。


グラムが固まる。


ノアも。


人影は一人。


巨大な剣。


黒髪。


無精髭。


二メートル近い体格。


焔帝グラム。


そこに立っていた。


もう一人の。


「は?」


グラムが声を漏らす。


偽物のグラムは何も言わない。


ただ剣を構える。


圧力。


殺気。


存在感。


全部本物だった。


ノアは理解する。


試練。


そういうことか。


敵を越える。


つまり。


自分自身を。


その時。


ノアの背後にも気配が現れた。


振り返る。


そこにいたのは。


自分だった。


黒い外套。


無表情。


全く同じ顔。


全く同じ目。


そして。


全く同じ気配。


「面白い」


グラムが笑った。


久しぶりだった。


本気の笑み。


敗北の後。


初めて。


「ようやく殴れる相手が出てきた」


偽物のグラムが剣を構える。


本物も構える。


風が吹く。


空間が軋む。


二人の圧力だけで。


地面に亀裂が走る。


ノアも短剣を抜く。


偽物のノアも同じ動作をした。


鏡みたいに。


完全に。


その時。


上空から執行者の声が響く。


「見せてみろ」


静かな声。


感情はない。


だが。


どこか期待しているようにも聞こえた。


「何故選ばれたのかを」


グラムが笑う。


ノアは目を細める。


そして。


次の瞬間。


四人同時に地面を蹴った。

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