4-35 育成者
第四章
七賢者編
第三十五話
──ドォォン!!
神殿全体が揺れる。
遠くの壁が崩れ、一人の男が吹き飛ばされた。
「……バルド!」
巨大な盾を抱えたまま、バルドが血を吐いて倒れる。
全身は傷だらけ。
盾には無数の亀裂が走っていた。
それでも。
立ち上がる。
その前には、一人の老人。
白い髪。
穏やかな笑顔。
戦場とは思えないほど優しい目。
老人は静かに拍手を送った。
「素晴らしい。」
「そこまで盾を使いこなせるとは。」
バルドは盾を構え直す。
「……誰だ。」
老人は少しだけ首を傾げる。
「忘れているか。」
寂しそうに笑った。
「当然だな。」
「記憶は消してある。」
セレスの表情も変わる。
「記憶……?」
老人はゆっくりバルドへ歩く。
「七歳。」
「お前は私へ言った。」
『誰も失いたくない。』
『強くなりたい。』
「だから私は。」
そっと盾へ触れる。
「この力を与えた。」
バルドの瞳が揺れる。
「……何を言ってる。」
老人はセレスを見る。
「光。」
次にバルドを見る。
「盾。」
静かに笑う。
「炎も。」
「重力も。」
「幻も。」
「全部。」
少しだけ目を細めた。
「私が授けた能力だ。」
神殿の空気が凍る。
老人は穏やかな笑顔のまま名乗った。
「七賢者。」
「育成者。」
「さて。」
優しく笑う。
「私の英雄達は。」
「どこまで成長したのだろう。」
その笑顔が。
執行者よりも。
認識者よりも。
セレスには恐ろしく見えた。




