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女神の食堂 ―どうやら神の末裔の私ですが、ここが私の居場所です―  作者: 瀬戸


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第四十話 私はこの時代に降臨した女神

アルヴィンの剣が、唸りを上げる。

迫り来る無数の刃――いや、“刃と化した悪意”を、ただ一人で受け止め続けていた。


火花が散る。衝撃が床を砕く。


その背後で――

儀式は、静かに始まっていた。


リリアの前に、二つの人影が立つ。

父と、母。


三人は、ただ見つめ合った。

言葉が、喉元まで込み上げる。


だが――


「申し訳ないね」

レオニスの声が、それを断ち切った。

「今は、感動の再会に時間を使っている余裕はない」


静かに、しかし確かな強さで。


三人は、無言でうなずいた。

そして――


リリアを中央に、手を取り合う。

父の手。母の手。その温もりが、確かにそこにあった。


その周囲を、レオニス、エリシア、ベネディクトが囲む。


三人の声が重なる。

古の響き。


「――〈神生誕祭〉」


詠唱と同時に――

光が、地を満たした。


リリアたちの足元に、巨大な魔法陣が浮かび上がる。

紋様が、脈打つように輝く。


「さ、させるかあああああ!!!」

メフィスディーテが絶叫した。


次の瞬間、攻撃が“数”となって襲いかかる。

触手、刃、闇。


すべてが暴力となり、空間を埋め尽くす。


リリアの意識が揺らぐ。

(アルヴィンが……危ない!!)


「リリア!集中しろ!!」

レオニスの怒号。


だが、魔法陣がわずかに揺らぐ。


(アルヴィンが……!)

リリアの意識が乱れたそのとき――


「信じろ!!!」

振り向きもせず。

背中を見せたまま。

アルヴィンの声が、空気を切り裂いた。


リリアの目から、涙がこぼれる。

(……わかった)

(私は――私のやるべきことを、やる!!)


意識が、再び収束する。


光が、強くなる。


一方で――

アルヴィンは、なおも戦っていた。


聖剣が閃く。


だが――

限界が近い。


悪魔の暴力は、次第にそれを凌駕していく。


「これで終わりよ」

メフィスディーテが、静かに告げた。


その声には、確信があった。

「――〈絶望の闇〉」


世界が、暗転した。

光が消える。


音が消える。


そして――

無数の闇が、すべてを飲み込んだ。


アルヴィンの身体が吹き飛ぶ。

リリアも、仲間も――


すべてが闇に包まれた。





――やがて。

どこまでも静かな、無意識の世界。


その中で。

リリアの意識だけが、かすかに残っていた。


「リリア……これが世界の歴史、あなたは何を望む?」

どこからともなく知らない穏やかな女性の声が、響く。


次の瞬間――

映像が、流れ込んできた。


遥か昔。

繰り返される戦い。


人と人の争い。

そこに現れる、魔物と悪魔。


人は――すべてと戦うことになった。


だが、やがて。

人は、手を取り合う。

協力し、助け合う。


すると――魔物は減り、悪魔は消えた。


平和。

だが、それは長く続かない。


再び、人は人と争う。

そして――また、魔物と悪魔が現れる。


繰り返し。


繰り返し。


(……これが、世界……?)

リリアは、息を呑む。


そして――気づく。

(人は……試練があるとき、協力する)

(試練がないと……争う)


(じゃあ……魔物や悪魔は……)

(試練……?)


(誰かが……この世界を調整している……?)


答えは、出ない。


だが――

(それでもいい)


リリアは、強く思う。

(私は……守りたい)

(城下町の人たちを)

(あの場所で……みんなの居場所を作りたい)

(ルミナリエ食堂で)

(そして、いまはそれだけじゃない、神の末裔の仲間も……他国の人も……)

(みんなが幸せになる世界を)

(それが……私の願い)


そのとき――

頬に、触れるものがあった。


あたたかい手。

優しいぬくもり。


確かにそう感じた。


――瞬間。

リリアは、目を開いた。


開眼。


そこは、闇の世界。


(私は……悪魔メフィスディーテに負けたの……?)


だが。

違う。


背中に――何かがある。


黄金に輝く、翼。


右からは、父のぬくもり。

左からは、母のぬくもり。


そして光が、溢れる。


リリアを中心に――世界を照らす。


どこからか、声が聞こえる。

レオニス。

エリシア。

ベネディクト。


三人の声が響く。

「「「リリアはもう覚醒している」」」


そして、アルヴィンの声まで…

「信じろ――自分を」


リリアは、深く息を吸った。

そして――信じた。


(私は……どうやら神の末裔……)

(どうやら?違う…どうやらじゃない)

(私は――この時代に降臨した…)

("女神!")


その確信とともに。


光が、爆発した。


闇が――一斉に吹き飛ぶ。


現実世界。


目の前には――メフィスディーテ。


そして足元には、倒れた仲間たち。


だが――


(わかる)

(みんな……生きてる)

(私が……生かせる)

黄金の光が、降り注ぐ。

仲間たちの傷が、急速に癒えていく。


「ばかな……」

メフィスディーテが、呟いた。


「今期も……女神を覚醒させてしまったのか……」


そして、静かに笑う。

「そうか……だが、これが私の役割なのでしょう――女神クロエ」


「……?」

リリアは眉をひそめる。

「私の名前はリリアです。クロエとは誰なのですか?」


「お前が知る必要はない」

メフィスディーテは、穏やかに言った。

「だが安心するがいい。お前の望む結果は得られた」


その身体が、光に溶けていく。

「この世界は――お前の言う、平和な世界になるだろう」


そして。

悪魔は、完全に消滅した。散り散りとなった。


光だけが、残る。


その中で――

リリアの意識も、ゆっくりと遠のいていった。


――静かに。

すべてを、託すように。

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