第23話
手芸部室の夕陽は針箱の銀を照らし、机の上に散らばった文化祭用の小物を彩っていた。
あかりは集中した表情でリボンを丁寧に結んだ──文化祭の飾り付け、完璧に仕上げなきゃ……。
だが、その目の前で繰り広げられる光景に、徐々に苛立ちが募った。
ゆいがゆうを膝に乗せ、指先で背中から肩を撫で撫でしていた。
「ふふ、ゆうくん……今日もお疲れ様。こんなにがんばってるんだから、もっと甘えていいのよ? ほら、肩、凝ってるんじゃない? ほぐしてあげるから……リラックスして、ね?」
声が部屋を包み、ゆいの指が彼の肩を揉みほぐした。
指先の温もりが布地越しにじんわりと染み込み、ゆっくりと円を描く。
その感触は、春の陽だまりに包まれるような安心感を与え、ゆうの背中を微かに弓なりに反らせるほど心地よかった。
彼は目を伏せ、頰を少し赤らめ、幸せげに身を委ねた。
ゆいの膝の柔らかな感触が少年の腰に伝わり、体温が背中を温かく包み込んだ──月兎人の敏感な肌が反応し、耳の先がピリピリと熱くなった。
「ゆい先輩……ありがとうございます。こんなに優しくしてもらったら……僕、溶けちゃいそうです……」
ゆうの声が少し上ずり、恥ずかしげに笑うと、ゆいはくすっと笑って彼の髪を梳き、耳元で囁くように言葉を重ねた。
「溶けちゃったら、私が受け止めてあげるわよ……ゆうくんはいつも頑張りすぎなんだから。もっと、甘えていいんだからね……。」
ゆいの息が少年の耳にかかり、吐息が首筋を撫でるように流れ、ゆうの体がさらに熱く震えた。
一方、みおはテーブルに人参スティックを並べ、彼の口元に運びながら笑った。
「ほら、ゆう。おいしいぞー。ビタミン満点のにんじんだぞー。いっぱい食べて大きくなろうなー! 俺みたいにガタイ良くなって、もっと女の子にモテモテになれよ! あーん」
短髪を揺らし、みおの笑顔が輝き、人参スティックを少年の唇に押し当てるように近づけた。
人参の新鮮な土の香りとみおの汗の匂いが混じり、ゆうの鼻をくすぐった。
彼はぱくりと人参を噛み、満面の笑みを浮かべた。
シャキシャキとした食感が口に広がり、甘みが舌に染み込んだ──みおの指が少年の唇に少し触れ、温もりが残った。
「みおさん……おいしいです! 甘くてシャキシャキで……、もっと食べたいです!」
ゆうの瞳が輝き、みおは満足げに次のスティックを差し出しながら、彼の頭を軽く撫でた。
「よしよし、いい子だな! これ食ったら、俺が一緒に鍛えてやるからさ、へへ」
みおの指が少年の頭をくしゃくしゃと撫で、人参の汁が少しゆうの唇に残り、みおが親指で拭う仕草──その親密さが彼の頰をさらに赤く染め、少年は照れくさそうに目を伏せた。
「みおさん……ありがとう……でも、僕、月兎人だから、そんなに大きくならないかも……」
みおは大笑いし、ゆうの肩をポンと叩いた。
「それならそれでいいさ! 小さいゆうも可愛いぜ。俺が守ってやるからよ!」
ゆいの膝の上で彼が身を委ね、みおの人参アーンで笑い合う──そんな光景が、あかりの目の前で繰り広げられ、部屋の空気を蜜のように満たした。
あかりの針を握る手が、徐々に力み、苛立ちが頂点に達した。
「いったい、これはどういうことよぉー!!!」
立ち上がり、机の飾りリボンを握りしめ、顔を真っ赤に染めて叫んだ。
ゆうはびくりと体を震わせ、みおとゆいのイチャイチャの輪から慌てて飛び降りた。
「あ、あかりさん……ごめんなさい! あの、実はあの後ですね……」




