第19話
みんながベンチに座り待つ中、みおがトレイに巨大なアイスを抱えて戻った。
あかりが目を丸くした。
「えー、一つしか買ってないのぉ? 五人分じゃなかったの?」
みおはふくれっ面で座り込んだ。
「なんか、一つしか売ってくれなかったんだよ……店員が『お一つでよろしいですね』って、しつこく! 五つだって言ったのに、『お一つになります』って……これ、ドデカラビアイスだってさ」
トレイに鎮座するのは果実たっぷりの巨大アイス──メロンの山、ベリーの滝、クリームの海が兎の形に盛り付けられ、一メートル級のボリュームだった。
みんなが呆然と見つめた。
「みんなで分けよーぜ!」
みおがスプーンを握った。
まずはみおがスプーンでクリームをすくって頰張った。
「うま! 甘酸っぱくて……最高だぞ!」
目を細め、満足げだった。
次にあかりへ渡した。
「デカすぎじゃないの? これ、絶対一人で食べきれないわよ……」
文句を言いながらいちごの粒を掬い口に運んだ。
「……結構おいしいわね。クリームが思ったより軽い……」
頰が少し緩んだ。
あかりは物欲しげにアイスを見つめる少年を見てくすっと笑った。
「ほら、ゆう。あーんして。甘いわよ」
クリームを避けて新鮮ないちごを掬い上げ、少年の口にぽいっと放り込んだ。
少年の瞳が見開かれ、頰がぽっと赤くなった。
「あ、あかりさん……!」
いちごの甘酸っぱさが口に広がった。
みおがにやにやと茶化した。
「あー! あーんした! しかも間接チューだー! あかり、積極的ー!」
あかりの顔が爆発的に赤くなり、立ち上がった。
「あんた、バカ! こんなの普通じゃない! ただのアイスよ、間接キスなんて……!」
少年は恥ずかしさに胸がざわめいた。
果実の味とあかりの視線、みおのからかいがドキドキを加速させた。
「あ、だめ……!」
胸の熱気が爆ぜ、ぽむんっと音がして兎姿になった。
「あっ!」
みんなが声を上げ、視線が一斉にみおに集まった。
みおはへらっと笑った。
「からかってごめんな、ゆう!」
少年をすくい上げ、キスをした。
光が広がり、少年は人間に変わった──体が火照り、テーブルの上で少年が息を弾ませた。
「みおさんの口……甘いです」
みおの顔がぱっと赤くなった。
「お、おう……」
照れ隠しに笑った。
あかりは少年の制服を投げつけた。
「早く服着なさいよ、バカ兎! みんな見てるんだから……」
「ふふ、かわいいわね」
ゆいは微笑んだ。
りんは銀髪を耳にかけ、無言でアイスを掬った。
瞳に楽しげな光が宿った。
みんなで巨大アイスをシェアし、果実の汁が滴り笑い声が交錯した。
少年はみんなの輪の中で甘い味と温かな視線に包まれ、胸の奥が満ちた。
「……みんな、ありがとう」
大団円の余韻に浸りながら、お土産ショップへ向かった。
兎耳のキーホルダー、ラビラビのぬいぐるみ、ポップなTシャツを選び、みんなでわいわいと袋をいっぱいにした。
夜の帳が下り、パークのライトがきらめいた。
帰る時間だ。
少年はみんなに振り向き、瞳を真剣に輝かせた。
「皆さんが嫌じゃなければ……また来ましょう。これからも、いっぱい迷惑かけるかもしれませんが……これからもよろしくお願いします」
あかりはため息をついた。
「改まって、何言ってんのよ……。……楽しかったわよ。また来ましょう?」
呆れた言葉の裏に頰の赤みが残った。
みおはニカッと笑い、拳を突き出した。
「明日でもいいぞ!」
瞳が冒険を予感させた。
ゆいは栗毛のヘアを撫でた。
「今日はエスコートしてくれて、カッコよかったわ、ゆうくん。また、みんなでね」
りんは、銀髪の外はねを軽く揺らした。
「楽しかったよ……また来よう」
少年の心臓は違うドキドキで埋まっていった──兎化の熱さじゃなく、温かな絆の鼓動だった。
リムジンの窓から夜のパークが遠ざかり、みんなの笑い声が星空に溶け込んだ。
この放課後デートがどんな未来を紡ぐのか──少年の胸に甘い余韻が永遠に残った。




