第15話
そして最後はあかり。
ドラムロールが最高潮に達し、カーテンがゆっくりと開き始めた──その瞬間、トロピカルなビキニ姿のあかりが現れるはずだったが、運命のいたずらでカーテンの縁にビキニの細い紐が無情にも引っ掛かり、開くのと同時に軽く引きずられるようにほどけ始めた。
花柄の鮮やかなトップとボトムが一瞬だけ引き締まった肩と腰に寄り添うように見え、ポニーテールが軽やかに揺れる明るいシルエットがスポットライトに浮かび上がった──が、次の刹那、紐が完全に滑り落ち、上下がカーテンに絡まって離れ、あかりの全身があらわになった。
白い肌がライトに輝き、普段の委員長らしい凛とした輪郭が、意外なほど自然で爽やかな夏の風情を湛え、軽やかな興奮の余韻が部屋の空気を満たした。
部屋が凍りついた。
あかりの悲鳴が遅れて響いた。
「きゃあっ!」
その瞬間、少年の視界が白く霞み、心臓が爆発的に鳴った──あ、あかりさんの……全部……!
体温が急上昇し、ぱふっという音を立てて彼の姿が白い兎に変わった。
長い耳を倒し、尻尾をぴくぴくと動かした。
「やるなぁ、あかり……!」
みおが感嘆の声を上げた。
「あらあら、大胆ね……」
ゆいが頰を染め、手で口を覆った。
メイドたちの拍手がどよめきに変わった。
ラビがマイクを握り、声を張り上げた。
「優勝は、あかり選手ー! 完璧なポロリでゆう様をドキドキの渦に巻き込んだ!」
あかりは慌ててカーテンを引き寄せた。
体を隠しながら少年に叫んだ。
「ゆう! 記憶から消せー! 今すぐ全部忘れなさい!」
睨んだが頰が真っ赤に染まった。
彼は体を横に向け、俯いて何も言わず耳をぺたんと倒し、尻尾をぴくぴくと震わせた。
その無言の抗議が、あかりの苛立ちをさらに煽った。
「聞こえてるんでしょー!? 何よその態度……!」
あかりは叫びながらも、頰が熱く火照るのを感じ、視線を逸らした。
カーテンを引き寄せた手が震え、隠しきれぬ恥ずかしさが体を駆け巡った。
心臓の鼓動が耳元で鳴り響き、部屋の空気が一気に甘く重くなった。
メイドたちが、まるで事前に練られたような完璧なタイミングで動き出した。
数人が、優雅に──しかし有無を言わさぬ速さで──あかりの周りを囲んだ。
「優勝者様、お疲れさまでございました……」
一人のメイドが、鈴のような声で囁きながら、あかりの腕をそっと支えた。
もう一人がカーテンを引き、残りが体を覆うようにタオルや布を差し出し、視線を遮った。
「さあ、こちらへ……特別なフィナーレの準備をいたしましょう。ゆう様も、お待ちくださいませ」
ラビの声がマイクから響き、部屋全体を包むように優しく、しかし威厳を持って告げた。
メイドたちの動きは流れるように美しく、まるで舞台の幕間を繋ぐバレエのように洗練されていた。
あかりは抵抗する間もなく、彼女たちの手に導かれ、カーテンの向こうへ消えた──それは、単なる着替えではなく、王族の儀式のような荘厳さで。
カーテンの内側は、予想外の豪華さに息を飲んだ。
狭い空間とは思えないほど広々とした仮設ドレッシングルームが広がり、天井にはクリスタルのシャンデリアが吊り下げられ、ピンクのライトが肌を照らした。
壁一面に鏡が並び、床は絨毯で覆われ、香水と花の香りが漂っていた。
メイドたちが一斉に動き出し、あかりの周りを囲んだ──まるで王女を装う儀式のようだ。
「まずはお体を清めて……」
一人のメイドが、温かな蒸しタオルをあかりの肩にかけ、拭き取った。
もう一人が、シルクのローブを差し出し、肌を包んだ。
「あっ、待って……自分でできるわよ!」
あかりが慌てて手を伸ばすが、メイドたちは穏やかに制した。
「優勝者様のお手伝いが、私どもの喜びです。ゆう様の瞳に映るお姿を、最も美しく……」
言葉の端に、月兎人の伝統的な忠誠が滲み、あかりの抵抗を溶かした。
次に、メイドの一人が巨大なワードローブを開け、中から純白のドレスを取り出した──それは、ただのドレスではなく、まるで夢の結晶のような一着だった。
生地はイタリア製の最高級シルクで、月光のように輝く白があかりの肌に溶け込むよう設計され、胸元には繊細なレースの刺繍が施され、花弁のように広がるスカートは、歩くたびに波を打つよう計算されていた。
背中は大胆に開き、肩から流れるように落ちる袖が、優雅なシルエットを強調。
「こちらを……お召しくださいませ。ゆう様の好みを反映して、特注でございます」
メイドが丁寧にドレスを広げ、あかりの体に合わせた。
着替えの過程は、まるで魔法のようにスムーズ──メイドたちがあかりの体を支え、ドレスを滑らせるように纏わせ、背中のファスナーを閉め、裾を整えた。
鏡に映る自分を見て、あかりは思わず息を飲んだ。
ポニーテールがドレスの白に映え、引き締まった腰から広がるスカートが、まるで花嫁のような気品を湛えていた。
胸元のレースが肌を飾り、全体が光を放つ──これまでの自分とは別人のように、美しく、強く、甘く。
「いかがですか?」
メイドの一人がハチミツのような声で尋ね、あかりは頰を染めながら呟いた。
「……悪くない、かも……」
内心では、心臓が激しく鳴っていた。
外側では、部屋の雰囲気が一変していた。
ラビの合図で、メイドたちが素早く動き、ステージの周りに花びらのカーペットを敷き詰め、照明をロマンチックなピンクとゴールドのグラデーションに変え、背景に小さなオーケストラが現れ、弦楽器のメロディを奏で始めた。
空気中にバラの香りが散布され、まるで王族の舞踏会のような舞台が整った。
「それでは……優勝者のご登場です!」
ラビの声がマイクから響き、部屋全体が息を潜めた。
カーテンがゆっくりと開き、あかりが現れた──純白のドレスがライトに照らされ、まるで天使のように輝いた。
ポニーテールが優雅に揺れ、ドレスの裾が軽く広がり、歩くたびにレースの刺繍がきらめき、シルクが体を包み込む。
スカートは風に舞う花びらのように広がり、背中の開いたデザインがしなやかな背筋を強調し、全体があかりの曲線を完璧に引き立て、純白の生地が黒髪と瞳をより鮮やかに際立たせていた。
まるで絵画から飛び出してきたような、気高くも甘い存在感だった。
部屋が一瞬静まり、次の瞬間、拍手が爆発した。
「わあ……綺麗!」
みおが口笛を吹き、ゆいが手を叩いた。
少年の瞳は、あかりだけを捉え、赤く染まりながらも輝いた──その視線に、あかりの心臓が震えた。
ラビがマイクで宣言した。
「それでは、優勝者にゆう様からの口づけのプレゼントです!」
メイドたちがあかりの体をがっちりとホールドし──しかし優しく──円を描くように固定した。
まるで王女を護衛する衛兵のように、逃げられないが、威圧感のない完璧な配置。
ラビは少年を両手で持ち上げ、あかりの顔の近くに置いた──その瞬間、オーケストラのメロディが優しく高まり、花びらが天井から雪のように舞い落ち、部屋全体をロマンチックな霧に変えた。
「どうぞ、お二人様……このフィナーレを、永遠の記憶に」
あかりは睨みつつ顔が火照り、ドレスのレースが胸の鼓動を抑えた。
「……良いわよ、やるわよ!」
メイドたちが手を離した──その瞬間、ライトが集中し、二人のシルエットを幻想的に浮かび上がらせた。
あかりは意を決して顔を寄せ、少年に口づけをした。
温かな唇が触れた瞬間、光が彼を包み、人間に戻った──恥ずかしげに手を握りしめ、ドレスの袖が指に絡まった。
少年の瞳があかりを映し、ニッコリと笑った。
「これで……おあいこですね、あかりさん」
あかりは目を細め、叫んだ。
「全然負け越してるわ!」
ドレスの裾を翻し、苛立ちを隠しきれなかった──が、瞳の奥に喜びが光り、頰の赤みが純白のドレスに溶け込んだ。
みんなの拍手が部屋に響き渡り、みおの豪快な手拍子、ゆいのくすくす笑い、ラビの満足げな微笑があった。
メイドたちの合唱のような歓声が豪邸を温かく満たし、オーケストラのメロディがクライマックスを迎え、花びらの雨が二人の周りを包んだ。
夕陽が窓から差し込み、このゲームが四人の絆を深めていった。
ポロリの余韻が笑い声に溶け、月兎人の邸宅に地球の青春を刻んだ。




