表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うさぎ君は口寂しい  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/38

第14話

 立食パーティの余韻がリビングに息遣いを残した。

 テーブルには空になった皿の山が積み上がり、弦楽四重奏のメロディがまだ微かに空気に溶け込み、部屋全体が満足感に包まれていた。

 ラビがメイドたちを引き連れて再び現れた。

「皆様、パーティの締めくくりとして、ゲームをご用意いたしましたわ」

 ラビの指先が天井を指した瞬間、部屋全体が息を呑んだ。

 壁の巨大なスクリーンが自動で降り、照明が一斉に暗転。

 中央の床が低く沈み込み、隠し扉から即席ステージが浮上した──カーボン製の黒光りするプラットフォーム、周囲をリングライトが囲み、霧状のドライアイスが足元から噴き出して幻想的な雲を形成した。

 ステージの背後には、月兎人の伝統を模した巨大な兎耳型のアーチが金箔で装飾され、内部のレーザー投影機が空に星座を描き始めた。

 空気中にバニラの香りが広がり、低く響くエレクトリック・ハープの音色がハリウッドの授賞式のような緊張感を演出した。

「え……ゲーム? 僕、そんな話、聞いて……」

 ゆうは瞳を丸くした。

 メイドたちが一斉にスモークマシンを起動し、部屋全体を霧のヴェールで覆い、隠しスピーカーからパチパチ音が飛び交う。

 ラビの指パッチン一つで、床下から花びら型のコンフェッティが噴射され、天井がピンクと紫のグラデーションで脈打つ。

 ラビはステージ中央に設置されたクリスタル製のマイクスタンドに近づき、淡々と──しかしどこか楽しげに宣言した。

「その名も、『ドキッ! ゆう様トキメキぽんぽんぽん! 着せ替えラブラブトロピカル! ポロリもあるともっといいかも選手権!』でございます!」

 ステージの床が振動し、隠しエレベーターがゆっくり上昇──そこに現れたのは、巨大な回転式のワードローブタワー。

 数百着のコスチュームが照らされた。

 空から紙吹雪が降り注ぎ、スクリーンにハート型のアニメーションが爆発し、音楽がアップテンポのポップロックに変わった。

 メイドたちが一斉にハンドベルを鳴らし、部屋の空気が興奮の渦に変わった。

 あかりはフォークを落としそうになり、立ち上がった。

「……は? 何よ、それ」

 みおは、目を輝かせ、拳を握った。

「なんだか、楽しそうだな!」

 制服のスカートを軽く叩き、興奮を隠さなかった。

 ゆいはグラスを置き、首を傾げた。

「まあまあ……みんなで遊ぶのね」

 少年は慌てて手を振った。

「これは違くて……僕も、知らなくて! ラビ、何してるの……?」

 瞳がラビを訴えかけるように見つめた。

 ラビは優雅に一礼した。

 あかりがキッと睨み、視線を飛ばした。

「ちょっと、ラビさん! 勝手に始めないでよ!」

 だがラビは動じず、マイクに息を吹きかけた。

「このゲームのルールは簡単です。こちらのカーテンの中で姫様候補の皆様にはお着替えをしていただきます。チャンスは一回──、最もゆう様をドキドキさせたものが優勝です!」

 メイドたちがカーテンの後ろに衣装の山を運び込み、照明がロマンチックに変わった。

 あかりの顔が真っ赤に染まった。

「そんなコスプレショーみたいなの、やらないわよ! 絶対に──」

 ラビの唇が動いた。

「……一億円」

 彼女は大きく息を吸い、声高らかに宣言した。

「優勝者には一億円を贈呈いたします!」

 部屋が爆発した。

 みおが拳を天井に突き上げた。

「よっしゃー! また一億円ゲットだー!」

 ゆいが手を叩いた。

「あらあら、すごいわね」

 あかりは、目を丸くして二人を睨んだ。

「もしかして、あんたたち!?」

 みおはへらっと笑った。

「前にゆうとキスした後、ラビさんが持ってきてくれたぞ。迷惑料だってさ」

「私もお断りしたのですが……口座に振り込まれていました」

 あかりの視線が少年に飛び、彼は赤面して首を振った。

「僕、関係ないです……!」

 みおがあかりの背中を押した。

「まぁ、着替えるだけだろ? いいじゃねーか。一億でコスプレくらい、安いもんだぜ!」

 ゆいが頰を緩めた。

「みんなでお着替え、楽しそうね」

 空気が一気に乗り気モードになった。

 あかりはその輪にほだされ、ため息をついた。

「……災難だわ」

 お着替えタイムが始まった。

 照明が落とされ、スポットライトがカーテンを照らし、ドラムロールが低く響き渡った。

 部屋全体が興奮と期待の渦に包まれ、息を潜めた一同の視線が一斉にカーテンに集中した。

 空気が甘く張りつめ、まるで劇場の幕開けのように、ゆっくりとカーテンが開いた。

 最初は、みおから。

 そこに現れたのは、バニーガールの衣装をまとったみおだった。

 黒のボディスーツが筋肉質で引き締まったボディにぴったりと張り付き、肩から胸元にかけてのラインを強調し、スポットライトの光を受けて艶やかに輝いていた。

 網タイツが長い脚を網目状に包み込み、太ももの微かな筋肉の動きがライトの影でシャープに浮かび上がり、ボーイッシュな魅力にセクシーさを加えていた。

 ふわふわの白い兎耳が頭にピンと立ち、短髪の先を軽く揺らし、背中の小さな尻尾が可愛らしく揺れるたび、ボディスーツの生地が腰のくびれを引き立て、全体を活発で誘うようなシルエットに仕上げていた。

 みおの肌がライトに照らされ、汗ばんだような微かな光沢を帯び、頰にわずかな赤みが差して、普段のスポーツ少女らしい自信に満ちた笑みが、どこか照れ隠しの輝きを添えていた。

「どうよ、王子! バニーみおだぜ~。お耳、触ってみる?」

 彼女は自信たっぷりに腰を軽く振ってポーズを決め、投げキッスを飛ばしながらウインクを決めた──その仕草でボディスーツの上部が微かに揺れ、網タイツの網目が脚の曲線をより強調し、部屋の空気を一気に熱くした。

 あかりは口をぽかんと開けた。

「何やってんのよ、アイツ……!」

 ゆいは手を叩いてほほ笑んだ。

「かわいいわ、みおちゃん! 似合ってるわよ」

 ラビがマイクを少年に寄せた。

「ゆう様、いかがでしょうか?」

 彼は札を上げた──九十八ドキドキ。

 ラビが声を張った。

「出ました、九十八ドキドキです! 点数の理由は?」

 少年は視線を伏せ、ぼそっと言った。

「普段カッコいいみおさんの女性らしい一面が……とても良かったと思います」

 顔が真っ赤に染まった。

 みおは拳を握り、悔しがった。

「百点じゃなかったかー! あと少しだったぜ!」

 ラビが追い打ちをかけた。

「あと二点、何が足りなかったでしょう?」

 少年は耳を赤くして答えた。

「うさぎは……見慣れているので」

「あちゃー!」

 みおが額を抑えた。

 暫定一位の席に誘導された。

 メイドたちの拍手が軽やかに響いた。

 次はゆいだった。

 だがカーテンの後ろからメイドたちが慌ててラビの下に駆け寄り、ラビがマイクを握って状況を伝えた。

「ゆい様なのですが……こちらがご用意した衣装で着られるものが一点しかなく、それもギリギリなご様子だそうです」

 声に興奮が混じった。

 みおが興奮し、生唾を飲んだ。

「……おー、さすがだぜ、先輩!」

 少年はそれを聞いただけで赤面した。

 瞳が想像だけで熱くなった。

 ラビが続けた。

「それでも参加はしたいとのことですので……是非、大きな拍手でお迎えくださいませ!」

 ドラムロールが鳴り、カーテンが開いた。

 そこにミニスカナース姿のゆいが現れた。

 白衣が体にぴったりと沿い、柔らかな上半身の豊かなシルエットが布地を限界まで押し上げ、全体を優美な曲線で包み込むように強調していた。

 スカートは短すぎて、歩くたびに下半身のしなやかな輪郭が微かに浮かび上がり、ゆったりとした動きに合わせて布地が軽く張り、豊満な後ろ姿を際立たせていた──ゆいの体全体が自然で温かな存在感を放ち、照明の光を浴びて深みのある優美さを湛えていた。

 栗毛のヘアがナースキャップに可愛らしく収まり、全体のコスチュームが彼女の穏やかな雰囲気に溶け込みながらも、サイズの限界でほのかに不自然な張りを生んでいた。

 ゆいがちょっと照れながら少年に近づき、歩くたびに白衣の裾が揺れ、布地の微かなきしみがぎこちない動きを強調した。

「ふふ、ゆうくん……お注射、しちゃうぞ?」

 コスチュームが体のサイズに合わず、ゆいの優雅な仕草が少しだけ不器用に、しかし愛らしく映え、少年の視線を自然と引きつけた。

 あかりの目が見開かれ、みおが口笛を吹いた。

 少年は札を上げ──九十九ドキドキ。

「負けたー!」

 みおが頭を抱えた。

「素晴らしい! 九十九ドキドキです! あと一点、何が足りなかったでしょうか?」

 ラビが彼にマイクを向けた。

 少年はぼそっと言った。

「注射が……嫌いなので」

 瞳を伏せ、耳まで赤かった。

 ゆいはくすっと笑った。

「あらあら、……ごめんね、ゆうくん」

 彼女は暫定一位に並んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ