第14話
立食パーティの余韻がリビングに息遣いを残した。
テーブルには空になった皿の山が積み上がり、弦楽四重奏のメロディがまだ微かに空気に溶け込み、部屋全体が満足感に包まれていた。
ラビがメイドたちを引き連れて再び現れた。
「皆様、パーティの締めくくりとして、ゲームをご用意いたしましたわ」
ラビの指先が天井を指した瞬間、部屋全体が息を呑んだ。
壁の巨大なスクリーンが自動で降り、照明が一斉に暗転。
中央の床が低く沈み込み、隠し扉から即席ステージが浮上した──カーボン製の黒光りするプラットフォーム、周囲をリングライトが囲み、霧状のドライアイスが足元から噴き出して幻想的な雲を形成した。
ステージの背後には、月兎人の伝統を模した巨大な兎耳型のアーチが金箔で装飾され、内部のレーザー投影機が空に星座を描き始めた。
空気中にバニラの香りが広がり、低く響くエレクトリック・ハープの音色がハリウッドの授賞式のような緊張感を演出した。
「え……ゲーム? 僕、そんな話、聞いて……」
ゆうは瞳を丸くした。
メイドたちが一斉にスモークマシンを起動し、部屋全体を霧のヴェールで覆い、隠しスピーカーからパチパチ音が飛び交う。
ラビの指パッチン一つで、床下から花びら型のコンフェッティが噴射され、天井がピンクと紫のグラデーションで脈打つ。
ラビはステージ中央に設置されたクリスタル製のマイクスタンドに近づき、淡々と──しかしどこか楽しげに宣言した。
「その名も、『ドキッ! ゆう様トキメキぽんぽんぽん! 着せ替えラブラブトロピカル! ポロリもあるともっといいかも選手権!』でございます!」
ステージの床が振動し、隠しエレベーターがゆっくり上昇──そこに現れたのは、巨大な回転式のワードローブタワー。
数百着のコスチュームが照らされた。
空から紙吹雪が降り注ぎ、スクリーンにハート型のアニメーションが爆発し、音楽がアップテンポのポップロックに変わった。
メイドたちが一斉にハンドベルを鳴らし、部屋の空気が興奮の渦に変わった。
あかりはフォークを落としそうになり、立ち上がった。
「……は? 何よ、それ」
みおは、目を輝かせ、拳を握った。
「なんだか、楽しそうだな!」
制服のスカートを軽く叩き、興奮を隠さなかった。
ゆいはグラスを置き、首を傾げた。
「まあまあ……みんなで遊ぶのね」
少年は慌てて手を振った。
「これは違くて……僕も、知らなくて! ラビ、何してるの……?」
瞳がラビを訴えかけるように見つめた。
ラビは優雅に一礼した。
あかりがキッと睨み、視線を飛ばした。
「ちょっと、ラビさん! 勝手に始めないでよ!」
だがラビは動じず、マイクに息を吹きかけた。
「このゲームのルールは簡単です。こちらのカーテンの中で姫様候補の皆様にはお着替えをしていただきます。チャンスは一回──、最もゆう様をドキドキさせたものが優勝です!」
メイドたちがカーテンの後ろに衣装の山を運び込み、照明がロマンチックに変わった。
あかりの顔が真っ赤に染まった。
「そんなコスプレショーみたいなの、やらないわよ! 絶対に──」
ラビの唇が動いた。
「……一億円」
彼女は大きく息を吸い、声高らかに宣言した。
「優勝者には一億円を贈呈いたします!」
部屋が爆発した。
みおが拳を天井に突き上げた。
「よっしゃー! また一億円ゲットだー!」
ゆいが手を叩いた。
「あらあら、すごいわね」
あかりは、目を丸くして二人を睨んだ。
「もしかして、あんたたち!?」
みおはへらっと笑った。
「前にゆうとキスした後、ラビさんが持ってきてくれたぞ。迷惑料だってさ」
「私もお断りしたのですが……口座に振り込まれていました」
あかりの視線が少年に飛び、彼は赤面して首を振った。
「僕、関係ないです……!」
みおがあかりの背中を押した。
「まぁ、着替えるだけだろ? いいじゃねーか。一億でコスプレくらい、安いもんだぜ!」
ゆいが頰を緩めた。
「みんなでお着替え、楽しそうね」
空気が一気に乗り気モードになった。
あかりはその輪にほだされ、ため息をついた。
「……災難だわ」
お着替えタイムが始まった。
照明が落とされ、スポットライトがカーテンを照らし、ドラムロールが低く響き渡った。
部屋全体が興奮と期待の渦に包まれ、息を潜めた一同の視線が一斉にカーテンに集中した。
空気が甘く張りつめ、まるで劇場の幕開けのように、ゆっくりとカーテンが開いた。
最初は、みおから。
そこに現れたのは、バニーガールの衣装をまとったみおだった。
黒のボディスーツが筋肉質で引き締まったボディにぴったりと張り付き、肩から胸元にかけてのラインを強調し、スポットライトの光を受けて艶やかに輝いていた。
網タイツが長い脚を網目状に包み込み、太ももの微かな筋肉の動きがライトの影でシャープに浮かび上がり、ボーイッシュな魅力にセクシーさを加えていた。
ふわふわの白い兎耳が頭にピンと立ち、短髪の先を軽く揺らし、背中の小さな尻尾が可愛らしく揺れるたび、ボディスーツの生地が腰のくびれを引き立て、全体を活発で誘うようなシルエットに仕上げていた。
みおの肌がライトに照らされ、汗ばんだような微かな光沢を帯び、頰にわずかな赤みが差して、普段のスポーツ少女らしい自信に満ちた笑みが、どこか照れ隠しの輝きを添えていた。
「どうよ、王子! バニーみおだぜ~。お耳、触ってみる?」
彼女は自信たっぷりに腰を軽く振ってポーズを決め、投げキッスを飛ばしながらウインクを決めた──その仕草でボディスーツの上部が微かに揺れ、網タイツの網目が脚の曲線をより強調し、部屋の空気を一気に熱くした。
あかりは口をぽかんと開けた。
「何やってんのよ、アイツ……!」
ゆいは手を叩いてほほ笑んだ。
「かわいいわ、みおちゃん! 似合ってるわよ」
ラビがマイクを少年に寄せた。
「ゆう様、いかがでしょうか?」
彼は札を上げた──九十八ドキドキ。
ラビが声を張った。
「出ました、九十八ドキドキです! 点数の理由は?」
少年は視線を伏せ、ぼそっと言った。
「普段カッコいいみおさんの女性らしい一面が……とても良かったと思います」
顔が真っ赤に染まった。
みおは拳を握り、悔しがった。
「百点じゃなかったかー! あと少しだったぜ!」
ラビが追い打ちをかけた。
「あと二点、何が足りなかったでしょう?」
少年は耳を赤くして答えた。
「うさぎは……見慣れているので」
「あちゃー!」
みおが額を抑えた。
暫定一位の席に誘導された。
メイドたちの拍手が軽やかに響いた。
次はゆいだった。
だがカーテンの後ろからメイドたちが慌ててラビの下に駆け寄り、ラビがマイクを握って状況を伝えた。
「ゆい様なのですが……こちらがご用意した衣装で着られるものが一点しかなく、それもギリギリなご様子だそうです」
声に興奮が混じった。
みおが興奮し、生唾を飲んだ。
「……おー、さすがだぜ、先輩!」
少年はそれを聞いただけで赤面した。
瞳が想像だけで熱くなった。
ラビが続けた。
「それでも参加はしたいとのことですので……是非、大きな拍手でお迎えくださいませ!」
ドラムロールが鳴り、カーテンが開いた。
そこにミニスカナース姿のゆいが現れた。
白衣が体にぴったりと沿い、柔らかな上半身の豊かなシルエットが布地を限界まで押し上げ、全体を優美な曲線で包み込むように強調していた。
スカートは短すぎて、歩くたびに下半身のしなやかな輪郭が微かに浮かび上がり、ゆったりとした動きに合わせて布地が軽く張り、豊満な後ろ姿を際立たせていた──ゆいの体全体が自然で温かな存在感を放ち、照明の光を浴びて深みのある優美さを湛えていた。
栗毛のヘアがナースキャップに可愛らしく収まり、全体のコスチュームが彼女の穏やかな雰囲気に溶け込みながらも、サイズの限界でほのかに不自然な張りを生んでいた。
ゆいがちょっと照れながら少年に近づき、歩くたびに白衣の裾が揺れ、布地の微かなきしみがぎこちない動きを強調した。
「ふふ、ゆうくん……お注射、しちゃうぞ?」
コスチュームが体のサイズに合わず、ゆいの優雅な仕草が少しだけ不器用に、しかし愛らしく映え、少年の視線を自然と引きつけた。
あかりの目が見開かれ、みおが口笛を吹いた。
少年は札を上げ──九十九ドキドキ。
「負けたー!」
みおが頭を抱えた。
「素晴らしい! 九十九ドキドキです! あと一点、何が足りなかったでしょうか?」
ラビが彼にマイクを向けた。
少年はぼそっと言った。
「注射が……嫌いなので」
瞳を伏せ、耳まで赤かった。
ゆいはくすっと笑った。
「あらあら、……ごめんね、ゆうくん」
彼女は暫定一位に並んだ。




