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第84話 最終同期

 夜。


 裕翔は机に向かっていた。


 問題集を閉じ、軽く伸びをする。


 集中していた時間の余韻が、まだ指先に残っている。


 特別な達成感ではない。


 ただ、今日も進んだという感覚。



 スマホが震えた。


 通知音は鳴らない。


 画面だけが静かに点灯する。



REALITÉ



 短い表示。


 アプリが自動で開く。


 操作はしていない。



 黒い画面。


 白い文字。



STATUS


STR:D

AGI:D

INT:B

SOC:C



 変化なし。


 いつもと同じ。


 けれど画面下部に、新しい行が追加されていた。



同期確認中…



 数秒。


 進行バーはない。


 ただ文字だけが存在する。



 裕翔は何も触らず、画面を見ていた。


 不思議と、何かを待っている気はしなかった。



表示が切り替わる。



同期状態:完了



 それだけ。


 説明はない。


 理由もない。



 さらに一行、追加される。



記録固定



「……固定?」


 声に出した瞬間。


 表示がまた変わる。



更新機能:終了



 音は鳴らない。


 演出もない。


 ただ文字が現れただけ。



 数秒後。


 画面が自動で閉じた。



 ホーム画面。


 白い「R」のアイコン。


 そこにある。


 何も変わっていない。



 裕翔はスマホを机に置いた。


 特に考えなかった。


 不安もない。


 喪失感もない。



 ただ。


「……そっか」


 小さく呟いた。


 意味は自分でも分からないまま。



 部屋の明かりを消す。


 窓の外、夜の音。


 いつも通りの一日が終わる。



 その夜。


 REALITÉは、最後の更新を終えた。


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