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第80話 通知が来ない日

 朝。


 目覚ましが鳴る前に、裕翔は目を覚ました。


 カーテンの隙間から光が差している。


 特別な朝ではない。


 いつも通りの平日。



 スマホを手に取る。


 時間を確認するため――


 そこで指が一瞬止まった。


(……あれ)


 無意識に探していた。


 白いアイコン。


 中央に小さな「R」。



 ホーム画面。


 そこにある。


 ちゃんとある。


 なのに。


 なぜか存在感が薄い。


 昨日まで毎日開いていたはずなのに、

 今日初めて見るみたいな感覚だった。


「……気のせいか」


 そのまま時間だけ確認してスマホを置く。


 リアリテは開かなかった。



 登校。


 教室。


 いつもの席。


 いつもの空気。



「おはよ」


 さつきが来る。


「おはよ」


 自然な挨拶。


 少し前なら、

 この瞬間にステータスを確認していた気がする。


 でも今日は――二人とも触れない。



 授業開始。


 ノートを取る。


 理解できる。


 ちゃんと分かる。


 けれど。


 “補助されている感じ”はない。



(……普通だな)


 それが少しだけ寂しい気がした。


 理由は分からない。



 昼休み。


 二人は窓際で弁当を食べていた。


「最近さ」


 裕翔が言う。


「リアリテ、見てる?」


 さつきの手が止まる。


「……昨日、見てないかも」


「俺も」


 少し間。


 変な沈黙ではない。


 ただ確認している時間。



「別に困ってないよね」


「うん」


 即答だった。


 むしろ。


 前より落ち着いている気さえする。



 その時。


 机の中でスマホが震えた。


 裕翔が取り出す。



REALITÉ


活動記録なし



 短い表示。


 それだけ。


 いつもあった増減表示も、

 数値更新もない。



「……珍しいな」


 呟いて画面を閉じる。


 深く考えなかった。



 放課後。


 図書館。


 勉強。


 帰り道。


 笑ったり、

 少し沈黙したり。


 全部、自然だった。



 夜。


 ベッドの上。


 スマホを充電に繋ぐ。


 画面が一瞬光る。



REALITÉ


バックグラウンド同期:待機中



 文字はすぐ消えた。


 裕翔はもう見ていなかった。



 その日。


 リアリテは一度も開かれなかった。

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