↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
68/87

第68話 なんか違くない?

 昼休み。


 教室は弁当の匂いと雑談で満ちていた。


「なあ」


 窓際でパンを食べていた男子が、小声で言った。


「一ノ瀬ってさ」


「ん?」


「なんか今日、雰囲気違くない?」



 視線の先。


 一ノ瀬さつきはいつも通り席でノートを見ている。


 姿勢も同じ。

 表情も同じ。


 変わったようには見えない。



「別に?」


 隣の女子が肩をすくめる。


「いつもあんな感じじゃん」


「いや、なんつーか…」


 言葉を探す。


「怖くない?」


「は?」


「前って話しかけづらかったじゃん」



 女子がちらっと見る。


 さつきは隣の席の子と短く会話していた。


「それ取って」


「あ、うん」


 自然なやり取り。


 すぐ終わる。


 でも。



「あー……」


 女子が小さく頷く。


「なんか普通」


「それ」



 普通。


 その言葉が妙にしっくりくる。



「前さ、近寄ると緊張したんだよな」


「分かる。怒ってなくても怒られそうっていうか」


「今日それないよな」



 本人は気づいていない。


 ノートに視線を落としたまま。



 少し離れた席。


 裕翔はその会話を偶然聞いていた。


 パンを持つ手が止まる。


(……やっぱり)


 視線を向ける。


 さつき。


 昨日と同じ姿。


 でも確かに違う。



 机の中のスマホが静かに光る。



REALITÉ


同期状態:安定


接続対象:1



 裕翔は画面を閉じた。


 理由は分かっている。


 たぶん。


 でも。


 少しだけ不思議だった。



(こんな変わり方、するんだな)



 さつきがふと顔を上げる。


 目が合う。


 今度は逸らさなかった。


 ほんの一瞬。


 自然に。



 昼休みのざわめきは続く。


 世界はいつも通り。


 ただ。


 誰にも説明できない変化だけが、

 静かに広がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。