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第66話 いつも通りのはず

 朝。


 一ノ瀬さつきは、目覚ましが鳴る前に目を覚ました。


「……?」


 天井を見る。


 眠気がない。


 いつもなら重たい頭が、妙に軽かった。



 制服に着替えながら気づく。


 思考が止まらない。


 今日の予定。

 提出物。

 昨日の授業内容。


 全部が自然に整理されていく。


(……なんか変)



 通学電車。


 参考書を開く。


 ページを読む。


 理解が、引っかからない。


 文章がそのまま頭に入る。


 戻らなくていい。


 読み直さなくていい。



「……え?」


 小さく声が漏れた。



 教室。


 授業開始。


 先生の説明。


 黒板。


 ノート。


 手が迷わない。


 考える前に、理解している。



(なにこれ)


 ペンが止まる。


 胸の奥に、昨日の違和感が蘇る。



 机の中でスマホを開く。


 REALITÉ。



STATUS


STR:D

AGI:D

INT:A

SOC:C



 昨日と同じ数字。


 なのに。


 体感が違う。



 画面下部に、小さな表示。



同期状態:安定


接続対象:1



「……同期?」


 意味は分からない。


 でも。


 今の自分の状態と、無関係とは思えなかった。



 顔を上げる。


 前方。


 朝倉裕翔がノートを開いている。


 その瞬間。


 胸の奥が、少しだけ落ち着いた。



(……関係あるの?)


 答えは出ない。


 けれど。


 否定もできなかった。



 さつきはもう一度ノートを見る。


 文字が、綺麗に理解できる。


 迷いがない。



 昨日までと同じ世界。


 でも。


 自分だけが、少し違っていた。

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