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第53話 未分類ログ

 放課後。


 裕翔は自室の机に向かっていた。


 参考書は開いている。


 シャーペンも手に持っている。


 けれど、問題はほとんど進んでいなかった。


 集中できないわけじゃない。


 ただ、図書室ほど頭が回らない。


(やっぱ環境か……)


 小さく息を吐く。


 分かっている結論を、もう一度なぞるだけだった。



 スマホを手に取る。


 REALITÉを開く。


 画面を見た瞬間、指が止まった。



 行動ログ更新


 ▶ 未分類行動 ×5

 解析継続中…



「……増えてる」


 昨日、図書室で見た表示。


 “分類中”。


 それが消えていないどころか、数が増えていた。



 タップする。


 詳細は相変わらず表示されない。


 並んでいるのは時刻だけ。



 16:08

 16:21

 16:34

 16:46

 17:02



(全部、あの時間か)


 図書室にいた時間帯。


 特別な行動はしていない。


 勉強していただけ。


 なのにリアリテは分類できていない。



 スクロールする。


 画面下部。


 小さな文字が追加されていた。



 最適成長条件を再評価中



「再評価……?」


 思わず呟く。


 今までリアリテは迷わなかった。


 走ればAGI。


 勉強すればINT。


 会話すればSOC。


 行動と結果は一直線だった。


 なのに今は違う。


 判断を保留している。



 スマホを机に置く。


 天井を見る。


 静かな部屋。


 時計の秒針だけが聞こえる。



(何が違うんだ)


 勉強量は減っていない。


 方法も変えていない。


 なのに伸びが止まり、代わりに未分類が増える。


 まるで。


 リアリテ自身が答えを探しているみたいだった。



 通知音。


 画面が光る。


 裕翔は再びスマホを手に取る。



 SOC +0.01

 要因:解析中



「……また解析中か」


 苦笑が漏れる。


 数値は増えている。


 理由だけが分からない。



 ふと、昨日の図書室を思い出す。


 空いた席。


 静かな机。


 誰もいない向かい側。


 胸の奥に残った、説明しづらい感覚。



 裕翔は首を振った。


「……考えすぎだろ」


 そう言いながらも、アプリを閉じられなかった。


 画面には未分類ログが残り続けている。


 まるで。


 名前の付かない何かを、記録し続けるように。

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