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第51話 少し違う放課後

 一ノ瀬さつきは、教室の窓際に立っていた。


 放課後。


 教室にはもう数人しか残っていない。


 机の上には開いた問題集。


 けれど、ページはほとんど進んでいなかった。



「また残ってるの?」


 担任の声。


「……少しだけ」


「無理すんなよ。もうすぐテストだろ」


「はい」


 短く答える。


 いつも通りのやり取り。


 それ以上の会話はない。



 先生が去る。


 教室は静かになる。


 さつきは問題集を閉じた。


 鞄に入れる。


 立ち上がる。


 そして――止まった。



(……図書室)


 頭に浮かんだ言葉を、すぐに消す。


 今日は行かない。


 行けない。


 理由は分かっている。



 スマホが震えた。


 画面を見る。


 家族からのメッセージ。


『今日もお願いできる?』


 短い文章。


 さつきは数秒だけ画面を見つめた。


 そして返信する。


『うん』



 校門を出る。


 夕方の風。


 いつもと違う方向へ歩き出す。


 足取りは迷いがない。


 ただ。


 一度だけ振り返った。


 校舎の三階。


 図書室の窓が、小さく見える。



(……別に)


 小さく息を吐く。


 歩き出す。


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