第48話 席替え
ホームルームの終わり。
担任が黒板を叩いた。
「来週から中間テストなー。あと、その前に席替えするぞ」
教室が一気にざわつく。
「マジで!?」
「やった!」
裕翔は机に頬杖をついたまま、特に反応しなかった。
席替え。
ただのイベント。
それ以上でも以下でもない。
⸻
くじ箱が回ってくる。
前の席から順番に引いていく。
紙を受け取り、開く。
「……後ろか」
窓側、最後列。
悪くない位置だ。
黒板も見える。
特に問題はない。
⸻
周囲が移動を始める。
机の音。
椅子の音。
教室の配置が少しずつ変わっていく。
ふと視線が動いた。
一ノ瀬さつき。
自分の紙を見て、ほんの少しだけ眉を寄せている。
珍しい表情だった。
⸻
数分後。
新しい席が決まる。
裕翔は荷物を持って移動した。
椅子を引く。
座る。
教室全体を見渡す。
そして。
少し遅れて気づいた。
(……遠いな)
さつきの席。
教室の反対側。
斜め前。
今までより、かなり距離がある。
⸻
「そこかー」
後ろの男子が笑う。
「当たりじゃん、後ろ」
「まあな」
適当に返す。
別に問題はない。
授業には関係ない。
図書室だってある。
いつも通りだ。
⸻
なのに。
視界に入らないだけで、妙に静かだった。
⸻
放課後。
図書室へ向かう。
扉を開ける。
いつもの席。
……空いている。
(まだ来てないか)
時計を見る。
時間は同じ。
少し待つ。
五分。
十分。
ページは進むが、集中が続かない。
⸻
スマホは震えなかった。
⸻
INT変動なし
⸻
裕翔は小さく息を吐いた。
(……関係ないだろ)
席替えなんて。
ただの偶然。
そう思いながらも。
参考書の文字が、少しだけ遠く感じた。




