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第47話 適切な距離

 図書室。


 裕翔は席の前で立ち止まっていた。


 いつもの場所。


 窓側の長机。


 そして向かいには――まだ誰もいない。


(……考えすぎだ)


 昨日の仮説。


 環境適応補正。


 条件としては合理的だ。


 だが。


 毎日同じ席に座るのは、不自然じゃないか。



(依存してるみたいだろ)


 誰に言われたわけでもないのに、そう思った。


 だから今日は少し離れる。


 同じ図書室。


 同じ時間。


 でも席を一つずらす。


 それで十分検証になる。



 裕翔は隣の机に座った。


 参考書を開く。


 問題を解き始める。


 集中はできる。


 できているはずだ。


 なのに。


 落ち着かない。


 視界の端が妙に広い。



 椅子が引かれる音。


 顔を上げないまま分かった。


 さつきだ。


 いつもの席に座る気配。


(……見るな)


 意識すると余計気になる。


 ノートに視線を落とす。



 数分後。


 スマホが震える。



 INT +0.01



(低いな)


 予想通り。


 条件はやはり距離にある。


 仮説は強まる。


 それなのに。


 なぜか納得できない。



「今日、そっちなんだ」


 声がした。


 顔を上げる。


 さつきがこちらを見ている。


「ああ、まあ……気分」


「ふーん」


 それだけ言って視線を戻す。


 興味なさそうな反応。


 いつも通り。


 なのに。


 なぜか少しだけ、空気が遠い気がした。



 裕翔はペンを止める。


(……効率優先だろ)


 REALITÉのため。


 成長のため。


 合理的な選択。


 分かっている。


 なのに。


 ページが進まない。



 数分後。


 裕翔は静かに立ち上がった。


 参考書を持ち、机を移動する。


 いつもの席。


 向かい。


 さつきは何も言わない。


 ただ少しだけ、ペンの動きが滑らかになった。



 スマホが震える。



 INT +0.02



 裕翔は小さく息を吐いた。


(……これが最適、か)


 理屈では説明できる。


 そう思うことにした。


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