表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/45

第43話 気のせい

 図書室に入った瞬間、さつきは小さく足を止めた。


 視線が自然と奥へ向く。


 窓側の席。


 ――まだ空いている。


(……別に)


 心の中で否定しながら、同じ席へ向かう。


 鞄を置き、本を開く。


 ページをめくる。


 いつも通り。


 集中できているはずだった。


 なのに。


 数分おきに、入口の音が気になる。


(うるさいわけじゃないのに)


 自分でも理由が分からない。


 文字を追う速度が、少しだけ遅い。



 扉が開く音。


 足音。


 視線を上げる前に分かった。


「……」


 裕翔だった。


 特に急いだ様子もなく、いつもの席へ座る。


 それだけ。


 ただそれだけなのに。


 さつきは無意識に視線を本へ戻していた。


(……集中)


 ページをめくる。


 今度は、不思議と頭に入る。


 さっきまで引っかかっていた問題も、自然に解けた。



 数分後。


 REALITÉの画面が静かに更新される。


 ※読者には見えない描写(さつき視点のため表示なし)



 さつきはペンを止めた。


(……なんか、今日は調子いい)


 理由は思いつかない。


 体調でもない。


 内容が簡単なわけでもない。


 ただ、集中が続く。



 ふと視線を上げる。


 裕翔が問題に悩んでいる。


 少し眉を寄せて、ノートを見つめていた。


 昨日と同じ顔。


 気づけば口が動いていた。


「……そこ、分数に戻した方が早い」


「あ、ほんとだ」


 裕翔がすぐ書き直す。


 理解した瞬間の表情。


 少しだけ嬉しそうな顔。


 それを見て。


 さつきはなぜか視線を逸らした。


(……別に)


 ただ、効率が悪そうだったから。


 それだけ。


 理由なんてない。



 帰り道。


 校門を出たところで、ふと思う。


(今日……静かだったな)


 騒がしくもない。


 特別なこともない。


 なのに、嫌じゃなかった。


 むしろ。


 少しだけ、落ち着いていた。


 理由は分からない。


 考えるほどでもない。


 ただの気のせいだと、さつきは思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ