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第40話 違い

 昼休み。


 図書室は静かだった。


 参考書を開いたまま、裕翔は小さくため息をつく。


 REALITÉの数値は、まだ動かない。


(何が足りないんだよ……)


 考えても答えは出ない。


 問題集の文字が、少しぼやける。


「……そこ、違う」


 向かいから声がした。


 顔を上げる。


 一ノ瀬さつきが、こちらを見ていた。


「式の順番。先に展開しないと解けない」


「あ、……なるほど」


 言われた通りに書き直す。


 さっき止まっていた問題が、あっさり解けた。


「ありがと」


「別に」


 さつきはすぐ視線を本に戻す。


 いつも通りの無表情。


 ただ、手は止まらない。


 迷いがない。


 ページをめくる速度も一定だった。



 ふと、裕翔は思う。


(集中力、すごくないか……?)


 さつきはスマホも触らない。


 周囲も気にしない。


 ただ淡々と解いている。


 その姿は、“頑張っている”というより。


 ――自然だった。



 帰宅後。


 裕翔はREALITÉを開く。


 変化なし。


 INT:E


 少しだけ肩を落とす。


 その時。


 通知が一つ表示された。



 同期対象ユーザーの活動を検出



「……は?」


 初めて見る表示だった。


 すぐに消える。


 履歴にも残らない。


 意味は分からない。


 けれど。


 図書室の光景が頭に浮かぶ。


 迷いなく問題を解いていた姿。


(……関係、あるのか?)


 努力の量じゃない。


 もしかすると。


 やり方でもない。


 もっと別の――。


 裕翔はスマホを握り直した。


 REALITÉの画面は、何も語らない。


 ただ静かに、記録を続けていた。



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