第39話 仮説
条件未達成。
その一文が、頭から離れなかった。
裕翔は机に向かったまま、シャーペンを回す。
(条件って、なんだよ)
REALITÉを開く。
STATUSは変わらない。
INT:E
昨日と同じまま。
活動記録には、確かに表示されている。
学習活動:92分。
やっていないわけじゃない。
むしろ、最近では一番集中していた。
なのに上がらない。
⸻
(量じゃない……?)
最初の仮説が浮かぶ。
同じ勉強でも、内容が違うのかもしれない。
裕翔は問題集を閉じ、新しいページを開いた。
少し難しい応用問題。
今まで避けていた部分だ。
「……やってみるか」
ペンを走らせる。
止まる。
考える。
もう一度書く。
時間がかかる。
けれど、理解した瞬間の感覚ははっきりしていた。
(これ、前より分かるな)
一時間後。
スマホを手に取る。
REALITÉを開く。
⸻
本日の活動を記録しました。
学習活動を検出
⸻
数秒待つ。
画面は変わらない。
INT:E
「……違うのか」
思わず苦笑する。
少し期待していた。
でも、反応はない。
⸻
(じゃあ、集中時間?)
次の日。
裕翔はタイマーを使って勉強した。
二十分ごとに区切る。
姿勢も意識する。
スマホも遠ざける。
かなり真面目に取り組んだ。
終わったあと、すぐREALITÉを開く。
表示。
学習活動:105分
変化なし。
「……マジか」
椅子にもたれる。
努力していないわけじゃない。
むしろ前より考えている。
なのに、数値は動かない。
⸻
ふと、思う。
(もしかして……)
今まで上がっていた時。
何が違った?
体育。
図書室。
放課後。
断片的な記憶が浮かぶ。
けれど共通点が見えない。
REALITÉの画面は静かなままだった。
答えは教えない。
ただ記録するだけ。
⸻
裕翔はスマホを伏せた。
少しだけ、笑う。
「……ゲームっぽくなってきたな」
攻略法がある。
そう思った瞬間、少しだけ楽しくなった。
成長が止まったわけじゃない。
ただ。
次の段階に進んだだけだ。
⸻




