第35話 結果
翌週。
数学の小テストが返却された。
教室はざわついている。
「やば、今回むずかったよな」
「後半意味分からんかった」
そんな声があちこちから聞こえる。
裕翔は答案を受け取った。
裏返しのまま机に置く。
特別な期待はない。
いつも通り。
そう思っていた。
「はい、平均点かなり低いからなー」
教師の声が続く。
紙をめくる。
数字が目に入った。
88点。
「……え?」
思わず声が漏れそうになる。
見間違いかと思った。
もう一度見る。
同じ数字。
計算ミスがほとんどない。
後半の応用問題まで丸がついている。
こんな点数、今まで取ったことがなかった。
胸の奥が少しざわつく。
偶然?
問題が簡単だった?
いや。
周囲の反応は違う。
「マジかよ赤点回避ギリ…」
「平均低すぎ」
どうやら難しかったらしい。
その時。
前の席から答案が渡される。
さつきが受け取る。
ちらりと見えた点数。
92点。
彼女は特に反応しない。
いつも通り答案をしまうだけ。
裕翔は視線を戻した。
ポケットの中で、小さな振動。
今度は迷わず取り出す。
REALITÉ。
画面が静かに更新される。
LINK同期率:41%
新規ログ追加
共鳴結果反映完了
知力補正:一時固定
裕翔は息を止めた。
結果。
雰囲気じゃない。
数字として現れている。
努力した記憶はある。
けれど。
一人で勉強していた時の感覚とは違う。
図書室。
同じ時間。
同じ速度。
思考が止まらなかった理由。
画面を閉じる。
胸の奥に、不思議な実感が残る。
強くなったわけじゃない。
ただ。
一人じゃなかっただけだ。
「朝倉」
前から声がする。
さつきが振り向いていた。
「……今回、解き方合ってた」
少しだけ間を置いて続ける。
「図書室、効率よかった」
裕翔は小さく笑う。
「だな」
それ以上の言葉はいらなかった。
チャイムが鳴る。
教室のざわめきが戻る。
けれど裕翔の中だけ、少し静かだった。
数字はただの結果。
けれど。
そこに至る時間の方が、少しだけ特別に思えた。




