第21話 観測値の変化
昼休みの教室は、いつも通り騒がしかった。
裕翔は弁当を開きながら、ぼんやりとスマホを見ていた。
REALITÉの画面。
変わったところは、特にない。
ステータスも、昨日とほぼ同じ。
それなのに――妙な違和感だけが残っていた。
昨夜、さつきと別れたあと。
画面が一瞬だけ暗転したのだ。
エラーかと思った。
だが違った。
通知履歴には、確かに表示が残っている。
観測対象間相互影響を確認
記録更新
意味は分からない。
けれど、以前にはなかった表示だった。
「……相互影響ってなんだよ」
小さく呟く。
その時、教室のドアが開いた。
一ノ瀬さつきが入ってくる。
ざわ、と空気が揺れた。
相変わらず背筋はまっすぐで、誰とも視線を合わせない。
けれど――
一瞬だけ。
彼女の視線が裕翔に止まった。
ほんの一秒。
すぐ逸れる。
それだけなのに、妙に意識してしまう。
裕翔は慌てて弁当に目を落とした。
その瞬間、ポケットのスマホが震える。
取り出す。
REALITÉ。
新しいログが追加されていた。
接触回避行動を確認
変化率:微減
「は?」
思わず声が漏れた。
今の、カウントされるのか?
ただ目を逸らしただけだ。
ただの、いつもの反応だ。
なのに。
胸の奥が少しだけざわつく。
まるで。
選ばなかった何かを、記録されたみたいで。
裕翔は無意識に顔を上げた。
教室の向こう。
さつきはもう席について、静かにノートを開いていた。
何も起きていない。
いつも通りの昼休み。
なのに。
REALITÉの画面だけが、静かに更新されていた。
観測継続中
裕翔はスマホを伏せた。
理由は分からない。
けれど。
――次は、逃げない方がいい気がした。
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