表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

第19話 予定外

 放課後。


 教室にはまばらに人が残っていた。


 一ノ瀬さつきは席に座ったまま、ノートを開いている。


 今日の復習。


 いつも通りの習慣。


 問題を解き、答えを確認し、次へ進む。


 手は止まらない。


 思考も乱れていない。


 ――はずだった。



 同じ行を、三回読んでいることに気づく。


 ペンが止まる。


(……集中できていない)


 原因を探す。


 体調は問題ない。


 眠気もない。


 環境も静か。


 条件は整っている。


 なのに。



 昼の授業が思い出される。


「一ノ瀬さん、まだ?」


 何気ない声。


 特別な意味はなかったはず。


 事実確認。


 それだけ。



(気にする必要はない)


 結論づける。


 合理的に考えれば、ただのグループ分けだ。


 誰が声をかけても同じ。


 偶然。


 それ以上の意味はない。



 ページをめくる。


 問題を解く。


 答えを書く。


 合っている。


 いつも通り。


 なのに、胸の奥が落ち着かない。



 教室の後ろから笑い声が聞こえる。


 朝倉裕翔が友人と話している。


 楽しそうというほどでもない。


 ただ自然な会話。


 言葉が途切れない。


 無理をしている様子もない。



(どうして)


 思考が止まりかける。


 すぐに修正する。


(関係ない)


 自分の課題ではない。


 考える必要もない。



 それでも視線が向く。


 朝倉が笑う。


 相手も笑う。


 何が面白いのか分からない。


 分からないのに。


 少しだけ、安心する感覚があった。



 さつきは視線を落とす。


 ノートの文字がぼやける。


(……意味が分からない)


 理解できない感覚。


 今まで必要なかった種類の思考。



 胸の奥に残っているのは。


 嬉しさでもない。


 不安でもない。


 ただ――気になる。


 それだけ。



(予定にない)


 そう判断する。


 自分の一日は計画通り進むはずだった。


 授業を受け、復習をし、帰宅する。


 それで十分。


 問題はない。



 なのに。


 今日という日だけ、少しだけ形が違う。



 さつきはペンを置いた。


 窓の外を見る。


 夕焼けが教室を赤く染めている。


 理由は分からない。


 名前もつけられない。


 それでも確かに――


 何かが変わり始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ