第14話 条件の意味
夜の部屋は静かだった。
机の上のスタンドライトだけが、ノートを白く照らしている。
裕翔はペンを置き、深く息を吐いた。
問題集は予定より進んでいる。
理解もできている。
なのに今日は、勉強より気になることがあった。
ポケットの中のスマホ。
REALITÉ。
昼からずっと考えていた。
紹介可能人数:1。
(……誰かに渡せる)
その事実の重さが、じわじわ残っている。
裕翔はスマホを取り出した。
REALITÉを開く。
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STATUS画面。
変化なし。
少し安心する。
画面下の「LINK」をタップした。
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暗転。
白い文字が浮かぶ。
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紹介条件を確認しています。
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数秒後、表示が切り替わる。
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紹介実行には以下の条件を満たす必要があります。
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裕翔は無意識に背筋を伸ばした。
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・対象が自発的改善行動を継続していること
・外的強制による共有は禁止されています
・対象の同意意思が観測される必要があります
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「……同意?」
思わず呟く。
さらに表示が続く。
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REALITÉは救済システムではありません。
最適化は本人の選択によってのみ成立します。
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裕翔はしばらく画面を見つめた。
押し付けられない。
勝手に渡せない。
努力する気のない人には機能しない。
つまり――。
(誰でもいいわけじゃないんだ)
胸の奥の緊張が、少しだけほどけた。
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もしこれが無条件だったら。
強制的に渡せたら。
たぶん怖かった。
でも違う。
REALITÉは、選ぶ前に確認している。
その人自身を。
裕翔は小さく息を吐いた。
「……ちゃんとしてるんだな」
思わず口に出る。
誰に向けた言葉でもない。
でも確かに安心した。
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画面下に新しい一文が追加される。
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共有は責任を伴います。
対象の変化は不可逆的です。
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安心しかけた心が、少しだけ引っかかった。
不可逆的。
戻れない。
その意味を考えかけて、やめた。
まだ決める段階じゃない。
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画面が静かに通常表示へ戻る。
紹介可能人数:1
数字は変わらない。
たった一つ。
けれど今は、重さよりも納得の方が強かった。
REALITÉは無差別じゃない。
だから。
(急がなくていい)
そう思えた。
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スマホを閉じる。
机の上に置く。
裕翔はもう一度問題集を開いた。
さっきより少しだけ集中できる。
理由は分かっていた。
選ばなければいけないわけじゃない。
まだ。
時間がある。
その安心が、静かに胸に残っていた。
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