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ビリヤードな日常  作者: 田渕才造
ビリヤードな日常編
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その四十五 自宅で出来る練習

お久しぶりです。早くビリヤード場に行ける様になりたいですね。

『師匠』

『はい。なんでしょう』


 LINEで質問すると、未だにLINEに慣れないらしい師匠が答えてくれる。


 師匠が最近ついにLINEを始めた。同級生に「メールでは面倒だからやれ」と言われてしぶしぶ始めたらしい。

 僕に勧められても頑なにやらなかった癖に同窓会のお誘いの為に始めたそうだ。

 師匠の勤めている会社ってIT系だったはずなのに最近までLINEやらなかったのは不思議だ。そもそも確か息子さんの勤務先がLINEだった気がするが。


 ともあれ師匠と気軽に連絡できる様になったのはありがたい。質問したいことがあったんだ。


『家で出来る練習』

『以前、キューを差し上げた時にお知らせしましたが一番は素振りですね』

『タバコの外箱使ったのは難しい』

『はい。ショートホープの外箱を立ててキュー先が触れない様に素早くストロークするのは難しいですよね』

『ショートホープの外箱の入手が一番難しい』

『あ、ええ。最近は喫煙者が激減してますからね。政府の政策だけでなく喫煙者に対する周囲の反応が喫煙者って犯罪者かと思うばかりですからね』


 師匠に以前自宅で出来る練習方法を教えてもらった時の一つがそれだった。ショートホープどころか大学の同級生やらビリヤード場で知り合った社会人やらでタバコを吸うメンバーは皆無だ。自宅練習の環境を整えるのが難しい。


 タバコを吸う人からしてみても自分の愛飲する銘柄以外のタバコを吸うのは存外ハードルが高いらしい。僕からしたら全部同じタバコやんって思うんだけどそれぞれこだわりがあるらしい。煙の味が違うって言うのが意味不明なんだけど。


『素振り以外』

『そうですね。看取り稽古ってどうでしょう』

『看取り稽古?』

『武道、どうやら主に弓道にある言葉みたいなんですが人の射を見て稽古するって事みたいです』

『看取り稽古』

『ネットの環境があるならYouTubeなんかご覧になるのはいかがですか』


『お勧めの検索キーワード』

『娯楽中心なら、セミ・サエギナール、ですね』

『どんな人?』

『スリークッションって競技のプレイヤーなんですがビリヤード経験があればあるほど見ると手球の動きがありえないです』

『僕でも楽しめる?』

『はい。高橋さんくらい球が分かっていれば彼の撞いた手球の動きで笑えると思います』

『笑える球?』

『はい。笑えます。でも苦笑です』


『他には?』

『ポケットプレイヤーだったら、ロニー・オサリバン、ですね』

『どんな人?』

『スヌーカーって競技のプレイヤーなんですがビリヤード経験があればあるほど見るとシュート力がありえないです』

『なんかさっきと似たような紹介』

『スヌーカーはナインボールで使うポケットの台の倍以上の大きさの台でプレイします。めちゃくちゃ難しいんです』

『それでポンポン入れる?』

『はい。スヌーカーではポットと言うみたいですが、ありえないくらい連続でポットし続けます』

『マスワリとか?』

『はい。ポットした球の色で点数が違うのですが日本人では次に交代するまでに入れ続けて100点を超えたプレイヤーが居ないくらいの難易度で全部取り切りが見れるのがスカッとします』


『話題は看取り稽古』

『はい。まずは紹介したプレイヤーを普通に楽しんで見るのが良いと思います』

『うん』

『動画サイトではビリヤードのプレイがたくさんありますからそれも好みで見るのが良いでしょう』

『それって娯楽で稽古じゃないし』

『稽古にするには観点が必要です』

『観点?』

『同じものを見てても見る側の見方で見えるものが違うって事です』

『また禅問答?』

『違います。高橋さんは相撞きの時に的球が入るか入らないか見てますか?』

『相手の取り方見てる』

『ですよね。その時点で的球の行方を見ている初級者とは違うものが見えてるはずです』

『手球のコントロールを見るのは常識』

『はい。それは初心者では非常識です。手球のコントロールはポケットする前提でしか見えないですから』


『熟練度で見えるものが違う?』

『はい。私はA級でしかないので、それほど見えてる訳ではありませんが、自宅で動画サイトを見ながら学ぶ事は高橋さんよりは多いかも知れません』


 師匠が言うには師匠なりの観点はいくつかあるらしい。まずは基本的な観点が並べられる。


1.今から入れる的球から次の的球への「出し」

2.ブレイク後の配置を見て考えるトラブルやら入れの限定された球に対して考える「組み立て」

3.手球のコントロールで発生する「リスク」に対する「リカバリー」と「我慢」

4.シュートとネクストで考える「アンド」

5.トラブルへの対応としての「出し」と「セーフティー」

6.ひたすら何でも入れ続ける「シュート力」


 まずは球の動きから見える情報を看取り稽古で収集するのが基本らしい。


 そしてその次は動画では見えにくいものを見る稽古。「撞点」と「力加減」特に難しいのが力加減らしい。個人個人で異なる筋肉のつき方を無視して「自分ならどうストロークして同じ手球の動きを得るか」を考えながら見るのが師匠の看取り稽古だそうだ。

 画面のプレイヤーがストロークする瞬間に自分でストロークするイメージで仮想的にショットする。結果的に動画の手球の動きと自分のイメージの違い検証する。そんなことを考えながら動画を見ているらしい。じじいバカじゃないかな。動画見てても楽しめないじゃん。


 とりあえず今日は自宅でセミ・サエギナールとロニー・オサリバンってプレイヤーの動画を検索して見る事にしよう。師匠のおすすめがどんなものだろうか。きっと凄いんだろうな。

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