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ビリヤードな日常  作者: 田渕才造
ビリヤードな日常編
46/51

その四十六 自宅で出来る練習からのビリヤード場実践

 師匠に勧められたのでYouTubeを見てみた。思ったよりビリヤード関連の動画が多かったので、あれこれ見てたら「お薦め」がビリヤード動画ばかりになった。まあ、良いんだけど。


 とは言え動画閲覧はスマホの通信量が馬鹿にならないのであまり見すぎると制限が掛かって動画がカクカク動き始めるので選んで見ないとね。


 ちょっと気になるレッスン動画があったので実践するために行きつけのビリヤード場へ。


「いらっしゃい。高橋さん」


 今日はお客としてだから店長が迎えてくれる。僕は店員だから球代が掛からないのが嬉しい。


「店長こんにちは」


 挨拶は大事だね。お店に入るなり水鉄砲みたいな体温計が僕の額を狙ってくる。


「平熱ですね。ご協力感謝します」


 検温されてから店内にいるはずの師匠を探すと案の定いつもの台に居る。今は一人だな。チャンス。


「師匠」

「やあ、高橋さんどうも」


 師匠に昨日見た動画の話をする。


「恐い顔で狙うと球が入る」

「高橋さん、すいません。もう少し補足説明頂けませんか?」


 昨日見たレッスン動画の内容をもう少し丁寧に説明する。僕のつたない説明でも察しの良い師匠はあらかた理解してくれた様だ。


「つまりエフレン・レイズがポケットを狙う時に眉間に皺を寄せて恐い顔するのは、そうした方が球が入るからって事で良かったですか?」

「そう」

「聞いた事ないですね。それで高橋さんは試してみましたか?」

「まだ」

「それじゃ一緒に恐い顔で撞いてみましょうか?」

「はい」


 いつもの様にセットマッチを開始する。当然師匠の撞き番の方が圧倒的に長い。それでも最近は「全く回ってこない」から「意外にそこそこ回ってくる」と思える様になった。マスワリされるのが当然と思っているからラックの途中で回ってくると「ラッキー」と思える様になった。球代が無料なのも大きいけど。しかも師匠は僕と撞く時は基本的にセーフティはしない。遠くて薄い球でも入れがあるなら狙ってくる。だからそこそこ取り出しの良い球で回ってくる事がほとんどだ。


 えっと、師匠?それが師匠の恐い顔?困ってる顔にしか見えないんだけど。僕はどんな恐い顔で狙ってるんだろう。ちょっと心配になってきた。


 セットマッチが終わって師匠から声が掛かる。


「意外でした。やってみると本当にそうなりますね。いつもより狙い込めてる気がします。球もいつもより入ってたと言うか厚みの精度が上がってた気がします」

「はい」

「ちなみに高橋さんは恐い顔は出来てませんでしたね」

「やってた」

「……そうですか」


 僕はどんな顔してたんだよ!


「私もちょっと続けてみます。内面から表情に出てくる様に恐い顔になればもっと精度が上がるかも知れませんね」


 師匠の知らなかった事を僕が教えられて事がちょっぴり嬉しかった。あ、終わった後の台のレールは霧吹きでアルコール消毒。感染症対策大事だよね。

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