どうしようもなく世話焼きで、 4-19
「それがどれだけ危険なことだったかわかっているんですか? 下手をすればあなたも雨桐さんも無事では済まなかったかもしれないんですよ」
それはごもっともだ。
俺は雨桐を囮にした。彼女が一人であれば絶対に行かないような路地裏にアメフト部の連中を誘き寄せ、あえて彼女が危機に陥るような状況さえ作り出した。
もし雨桐がコンビニに買出しに行くと言ったあの時、俺が一緒についていかなければ、雨桐はどうなっていただろうか。
俺という護衛がいないことで、危ない目に遭っていた可能性はある。だが、その逆の可能性だってある。
あんな危険な状況を作り出さなければ、そもそも今回の事件は起きていなかったかもしれない。
俺と雨桐がコンビニに向かう途中、アメフト部以外の一般市民の視線は常に俺達に向いていた。それは俺達が鳳城学園の制服を着ていたからだが、それだけ目立っていたということは、ヤツらも手を出し辛かったはずだ。
もちろんこれは可能性の話だ。俺がいなければ雨桐は何事もなく買出しを終えて補助委員室に帰って来ていたかもしれない。雨桐に付いていった俺が妙な行動を起こさなければ、アメフト部のヤツらは手を出して来なかったかもしれない。
だが、それがどうした。
結果として俺と雨桐は無事だったし、そもそも俺はほぼ確実に安全だと判断して今回の計画を実行に移した。
そして今回のこの事件が起こったおかげで、周囲からの運動部に対する信用はガタ落ちだし、ヤツらも迂闊に動くわけにはいかなくなった。
これだけのリターンを得ることができたのだ。全体としてはプラスで、九が怒りを抱くほどではないとは思うが。
「いかにあなたが魔法使いとはいえ、今回のような危険な真似をするのはもうやめてください」
ほう、ここにきてそんなことを言うのかこいつは。
ならば補助委員の一人として、俺はそれなりの対応を取らせてもらうだけだ。
「お前さ、補助委員が何のために作られた組織だか憶えてるのか?」
「・・・・・・生徒会の補助をするためです」
「いーや違うな、それは表向きの建前だ。補助委員はこの便利な『魔法』って力を使って、普通じゃ解決できないような要件を解決するために存在する。俺はそれに則ったに過ぎない」
普通じゃできない、普通じゃリスクが高すぎて実行を踏みとどまる。そういった案件に、魔法を使って強引に対応するのが補助委員。結月がこの組織を作った本当の理由はそれだ。
だから今回の件に対して、結月から口を出してくることはなかった。補助委員としては、今回の一件は大成功と呼ぶべきものだからだ。
だが、それでも九はどこか納得できない様子だ。
それも無理はない。単純に考えれば雨桐を囮に使うなど、いかに安全が保障されていようと許されざる行為だ。九の真っ直ぐすぎる性格は、それを許容できないのだろう。
それに、俺の方でも一つ誤算と呼ぶべきものがあって、現在進行形でそれについて悩まされている。
多分それのせいもあるだろう。俺は今すこしだけイラついている。先程の言葉も、言い過ぎたという自覚がある。
ぽりぽりと頬を掻くと、俺は食欲が失せて用のなくなった弁当箱を閉じ、立ち上がる。
「・・・・・・悪い、俺は俺のやり方を変える気はない。今後も無断でこういうことをするつもりだ」
そのまますたすたと歩いて扉を開くと、出て行く寸前で一度立ち止まる。
「だが、今後はもうちょい慎重に行動することにする。それで手打ちってことにしてくれ」
ガラリと扉を閉め、胸糞悪い気分を振り払うように歩き出す。
途中ですれ違った結月がなにやら物言いたげな顔をしていたような気もしたが、俺は無視して早足に教務棟を後にした。




